激戦!そして敗走
湿原にてゴーレムと遭遇。戦闘に入った俺たち。
ツムギの渾身の一撃も、ゴーレムにダメージを与える事は出来なかった。
メグミに狙いを定め、ゴーレムは襲い掛かる。
そこへ、今度はハーピーが上空から攻撃を仕掛けた。
ゴーレムの頭をつかむ。鋭いかぎ爪をがっちりと食い込ませ、そのまますごい勢いで羽ばたいた。
羽ばたきで吹き下ろす風がここまで届く。が、さすがにゴーレムは持ち上がらない。
それどころか、ゴーレムはハーピーを意に介すことなく、そのままメグミへ巨大な腕を振り下ろした。
メグミはゴーレムの攻撃をしっかりと見据えてかわす。
余裕があるな。あれなら何度攻撃されたところでメグミには当たらないだろう。
「カヒト、ハーピーを退避させろ!魔法を使う。」
ザンギエフが杖を構え、言った。
「分かった。」
ハーピーはすぐに上空へ飛び上がる。メグミも素早く後退し、ゴーレムから距離を取った。
「炎よ!敵を焼き尽くせっ!!」
ザンギエフは叫び、杖を高々と振り上げる。
ゴーレムの足元に炎が現れ、すぐに全体が炎に包まれた。
燃えた枯れ草が上昇気流に巻き上げられ、周囲に灰がパラパラと降る。
「よし!こっちも火炎放射だ!」
俺は両手を突き出し、スラ子の触手から炎を噴き出した。
ゴーレムが燃える。
その熱は、周りにいる俺たちの皮膚をちりちりと焙った。
燃えるゴーレムは、そのまま今度は俺の方へ距離を詰め、アッパーカットを放つ。
「カヒト!避けて!!」
あ……。
完全に油断していた。回避できない。
ゴーレムの燃えるこぶしが俺の眼前に迫る。
その時、俺の体が勝手に跳ねた。
ゴーレムの攻撃を足の裏で受け止め、振り上げたこぶしに乗って上空へ。
空中で華麗に一回転して着地……の前にハーピーが俺の両肩を掴む。
ハーピーはゆっくりと降下し、地面すれすれで俺を放り出した。
あーびっくりした。
「カヒト!大丈夫?」
メグミが俺に駆け寄る。
「ああ、ハーピーのおかげで助かった。」
実際にはハーピーに受け止めてもらわなくても、スラ子が俺を操って着地してくれたとは思う。いや、難しいかな。10メートル以上の高さから落下したら、さすがにダメージは避けられない。
俺は前を向く。ゴーレムはまだ燃えていた。
どう考えても魔法を使うことで状況は悪くなったようだ。ゴーレムは炎を全く気にしていない。
「ザンギエフ!あの火はまだ消えないのか?」
俺は言った。
「俺の炎の魔法ならもうとっくに消えてるはずだ!カヒト、お前が何かしたんじゃないのか!」
俺の(スラ子の)火炎放射は噴射した火酒に火をつけるものだ。ゴーレムに火酒が染み込んでしまったのだろうか。
「カヒトさん!デンキを使って!銀の背熊を倒したヤツ!」
ツムギが言う。
「それが、ダメなんだ!こんな水場で電撃を使うと、俺たちも一緒に感電する!」
そもそもゴーレムに電撃は通用するのだろうか。通じたとしても、足元の水を通して俺たちにもダメージがあるだろう。
実際には俺たちは感電しないかもしれないが、今この状況で試してみるわけにはいかなかった。
「カヒト。もう逃げよう。」
メグミが言った。
「そうだな。しかし、逃げ切れるだろうか。」
ゴーレムは巨体のわりに動きが素早い。一歩ごとに湿地の泥に足を取られているというのに。
スラ子の水上歩行で作った足場の上を、全力で走れば俺たちのほうが速いとは思うが、どこまでも追いかけてくるかもしれない。
「みんな!私がゴーレムを引き付ける!そのスキに逃げて!」
メグミが言う。
「メグミ!」
「私は大丈夫!あの攻撃ならかわせるから!」
確かに、ゴーレムの攻撃はメグミに当たらないだろう。しかし……。
「その必要はない!俺に任せろ!」
ザンギエフが杖をゴーレムに向け新たな魔法を放った。
「風よ!敵を切り刻め!」
ゴウッ……!!!
大きなつむじ風がゴーレムを中心に巻き起こる。
ゴーレムが纏っていた炎が風に吹き上げられて渦を巻く。
さすがにゴーレムの体を切り刻むことは出来そうにないが、その足は止まった。
ザンギエフの風の魔法は完全にゴーレムを足止めしている。
吹き上げられた炎があたりに降り注ぐ。
「あちちっ!だが……よし!このスキに逃げるぞ!」
ハーピーは既に東へ向かって飛んでいる。
俺たちはそのあとを追い全力で走った。
すぐにザンギエフが遅れ始めた。
「ザンギエフ!もう少しだけがんばれっ!」
「はあっはあっ……むり……!」
ザンギエフはローブが足に絡みつき走りにくらしい。今さらだが、なんでそんなに動き辛そうな格好をしているんだ。




