ゴーレム出現
ハーピーに街道への道案内をしてもらい湿原を進む。
営巣地から、1時間は歩いただろうか。ハーピーに導かれ、森を迂回して南へ……ではなく、ほぼ東に向かって進んだ。
「おい、カヒト。本当にこっちでいいのか?」
と、ザンギエフ。
「うーん……。ハーピーがそう言ってるからな。」
「騙されてるんじゃないよね。」
ツムギも怪しんでいる。
「多分な。騙して俺たちを取って食うつもりなら、営巣地からは離れないんじゃないかな。」
「今は1羽しかいないしね。大丈夫だよ。きっと。」
メグミはハーピーを信用するようだ。
すでにお昼は過ぎている。ハーピーに案内を頼んでおいて休憩するのもはばかられるので、俺たちは休まずに歩いている。が、さすがに疲れてきた。
そして、俺たちの疲労など全くお構いなしに、新たな脅威がスラ子から報告される。
俺は立ち止まり、言った。
「みんな。止まれ。」
「どうしたの?カヒト。」
メグミたちはそう言いながらも素直に止まった。
と、目の前の湿地がボコッと盛り上がってきた。枯草も泥も一緒に俺たちの身長より高く持ち上がっていく。
「わっ……。イタタ……。」
ツムギが耳を抑えて言う。
「ハーピーが警告してるんだ!」
「またモンスター?!」
メグミはすでに剣を抜いている。
湿地の中にいた何かが、俺たちの前に立ちふさがる。
その何かの体に纏わりついていた泥がぼたぼたと落ち、そいつが正体を現した。
2本足に2本の腕。太い胴回り。頭らしきものもある。
シルエットは大きな人間、あるいは2本足で立ち上がった熊。
しかし、比較にならないほどでかい。膝まで泥に埋まっているのに、見えている部分だけで高さは5メートルほど。
しかもその体は岩でできている。いくつもの岩が人の形をとっている感じだ。
「ゴーレム……ってやつか?」
俺はつぶやいた。
「初めて見るが、そうだろう。」
ザンギエフが答える。
「どういうモンスターなのかわかるか?」
ザンギエフも初見なのか。それでも、何か知っているかと聞いてみる。
「よくは知らんが、見る限り堅そうだ。メグミ、刃こぼれするだけだ。切り付けるのはやめておけ」
そのくらいの事は俺にも分かる。
「打撃なら効果的かも。」
ツムギがこん棒を両手に構え、言った。
「ツムギちゃん。私が注意を引くから、そのスキに攻撃してみて。」
「うん!」
「無理はしないでね。」
メグミはそう言ってゴーレムに意識を集中させた。
鋭い視線がゴーレムに刺さる。
その視線に応え、ゴーレムはメグミの方を向き直った。
湿地に深く沈んだ足を引き抜き、メグミへ近づこうと一歩踏み込む。
ツムギは、自分への注意が途切れたのを確認すると、素早くゴーレムの足元に走る。
振り上げたこん棒をゴーレムの左の膝の辺りに叩き込んだ。
ゴンッッッ!
なかなかいい音だ。ダメージがあるのかは不明だが。
ゴーレムはツムギを振り払おうと左腕をふるう。
ツムギはそれを、ゴーレムの背後に回り込んで易々と回避した。
メグミが殺気を飛ばしてゴーレムを挑発する。
スキをついてツムギが攻撃。
いい連携だ。ゴーレムはメグミを無視できず、ツムギに集中できていない。
3度目のツムギの打撃がゴーレムの腰の辺りに入った。会心の一撃と言っていいだろう。
しかしゴーレムは倒れず、代わりにツムギのこん棒は粉々に砕け散った。
唖然とするツムギ。その隙を逃さず、ツムギを叩き潰そうとするゴーレム。
突如、ゴーレムの片足が持ち上がる。バランスを崩したゴーレムは頭から湿地の泥に突っ込み転倒した。
スラ子が、片足だけを水上歩行の要領で持ち上げたのだ。ゴーレムは重く、片足が精いっぱいだったらしい。
「ツムギ!戻れ!」
俺が叫ぶと、ツムギは俺たちの後ろに下がった。
「よくやった!いい攻撃だったぞ。」
「うん!でも、全然効いてないみたい。」
ゴーレムはすぐに起き上がり、今度はメグミへと狙いを変えた。
確かにダメージは見られない。動きにも変化はない。
足場の悪さを大して気にしていないようだ。泥をはね上げメグミへ詰め寄る。




