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スライムはハーピーの言葉が分かる

 ハーピーがメグミまであと10メートルに迫る!

 その時、またスラ子が俺にささやいた。

 !!!


「メグミ!待てっ!!」

 俺は叫んだ。


 そのせいでもないだろうが、急降下していたハーピーは寸前でブレーキをかけ、上昇していく。

 メグミの剣が、ギリギリで届いたかもしれない距離だった。


「カヒト、あのくらいなら大丈夫。ザンギエフさんの言った通り、かわして倒せるよ。」

 メグミが少し不満そうに言う。

「そうじゃない!とにかく下がろう!」

 俺は後ろを向いて駆け出した。

「カヒト!モンスターに背を向けるな!背中をやられるぞ!」

 ザンギエフが言う。

「大丈夫!あの森から離れるんだ。!」


 俺は100メートルほど戻り、ハーピーたちの様子をうかがう。

 メグミたち3人も走ってこちらへ向かってきているが、ハーピーはそれを狙おうとはしていない。


 走ってきたザンギエフは憤然(ふんぜん)としている。

「カヒト!あの程度のモンスターに恐れをなしたか!情けないぞ、まったく!」

「ああ、恐ろしいね。何百羽ものハーピーに一度に襲われることを考えると足が(すく)むよ。」

「何百羽……。だと?」

「あの森、あそこはハーピーの営巣地(えいそうち)だ。あるいは何千羽かもな。」

 俺の言葉にザンギエフは振り向いて森を見た。

 森の木には葉はついていないが、茶色のこんもりとした塊がいくつもあるらしい。それがすべてハーピーの巣なのだろう。


「ハーピーがどんな習性なのかは知らないが、一羽を倒せば群のすべてが一斉に襲い掛かってくる可能性もある。それともご立派な魔法ですべて倒すか?」

 俺は襲われる様子を想像しただけで恐ろしく、つい言葉が荒くなる。ザンギエフにあたってもしょうがないのだが。


 上空を旋回するハーピーは5羽ほどに減っていた。しかしまだこちらを警戒しているようだ。

「あいつらは偵察兼警告だな。『我々の巣に近づくな』『卵を狙うのか?』と言っている。」

「言っている……?」

 と、ザンギエフ。

「カヒト、ハーピーの言葉が分かるの?」

「さすがは、……カヒトさん。」

 メグミとツムギは、ハーピーの言葉が分かるのは俺ではなくスラ子だとわかっているだろう。


「刺激しなければ大丈夫だ。遠回りになるが、あの森は避けていこう。ザンギエフ、いいな?」

「……ふむ。確かに森から少し離れただけで、ハーピーの警戒が弱まったな。もちろん文句はない。……それで、右へ行くか左か。どっちへ迂回するかね。」


 俺は上空を旋回するハーピーのほうを向いて少し黙る。

「……左だ。街道に案内してくれると言っている。」

 偵察隊のハーピーの中の一羽が左へ、ゆっくりと飛んでいく。ほかのハーピーは森へ帰って行った。


「ハーピーと、話もできるの?……すごい。けど、今、カヒトさんから嫌な感じが。頭が痛くなるような……。」

 ツムギが言った。

「ハーピーの言葉は超音波なんだ。人によっては嫌な感じになるかもな。」

「チョーオンパ?」

「うーん。……聞こえないほど高い音……という事だ。」

「聞こえないほど高い音が、なぜおまえには聞こえ、話せるのだ?」

 ザンギエフが当然の疑問を口にした。

「それはまあ……、何でもいいじゃないか。おかげで危機を脱した。」

「……それも魔法なのか?……本当にお前は魔法使いか?」

「コラ!へっぽこ!余計な詮索(せんさく)はしない!」

 ツムギが助け舟を出す。

「余計な詮索はしない……つもりだったが、したほうがいいような気がしてきた。」

「まあ、とにかく行こう。」

 俺がそう促すと、ザンギエフはそれ以上は何も言わずに歩き出した。


 道中、俺はスラ子に小声で言った。

「スラ子。助かったよ。」

「はい。今回は危なかったかもしれませんね。」

「ハーピーの言葉が分かるという事は、スラ子は以前にハーピーに会った事があるのか?」

「いいえ。初めて遭遇しました。ハーピーの言葉は単純な単語だけですし、文法もほぼ無いので簡単でした。少し聞けばわかります。」

「さすがだな。」

「私たちを森へ近づけたくないようでしたので、急いで索敵に行ってきました。すごい数が居てびっくりです。」

「助かった。それと、水上歩行はまだ続けられるか?」

「大丈夫です。しかし、索敵範囲は少し狭まってしまいますが。」

「そのくらいは仕方ないな。見通しが良いから問題ないだろう。」


挿絵(By みてみん)

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