ハーピー
俺たちはザンギエフの言葉を信じ、南を目指しながらもやや左へ向かって歩いた。
スラ子に足場になってもらい『水上歩行』しているが、この足場は少しだけ揺れる。筏の上を歩いている感じだろうか。
だんだん日が昇ってきた。霧が晴れ、見通しが利くようになる。
しかし湿原はどこも枯れた草が生え、道がどこにあるのかは分からなかった。
「道が無いな。もしかして逆方向だったか?」
ザンギエフが言う。
「今さらですか?もー……。へっぽこ魔法使いですね。」
「フンッ!へっぽこではない。見習いではあるがな。」
「見習いなんですか?」
メグミが言った。
「ああ、まだまだ修行中の身だ。見習いの見習いと言ってもいい。」
「修業を始めてどれくらい経つんだ?」
俺はザンギエフに聞く。
「……30年ほどか。思えば遠くに来たものだ。」
「30年ですか!……見習いのまま人生が終わっちゃうんじゃないですか?」
ツムギのザンギエフへの当たりが強い。
「人間の魔法使いなど、そんなものだ。」
そんなものか。
「見習いレベルと言ってもなかなかのものだぞ。上を見ればきりがないというだけでな。」
「ふーん。なるほど。」
と、俺。
「こう見えて女にもモテる。」
「……ふーん。……なるほど。」
「まったく!男の人は!」
と、ツムギ。
そのあとは歩けど、道に出ることはなかった。
仕方がないので水上歩行のまま進む。
方角はあっているはずだ。いつかは街へたどり着くだろう。
前方にこんもりとした森が見えてきた。
「あの森へ入るか。見通しは悪いが、足場がしっかりした場所のほうがいいだろう。」
俺は誰ともなく言って歩いていく。
「カヒトさん。なんだか……あの森はちょっと嫌な感じ。」
ツムギが言った。
「嫌な感じ……って?」
「よくわかんないけど……。あ、何か飛んできたよ!」
ツムギの言葉の通り、正面の森から何かが飛び立ってきた。
鳥だ。10羽くらいかな。こちらへ向かってきている。
鳥が近づいてきた。かなり大きいのが分かる。白鳥よりもでかいだろう。
「あれは鳥じゃない。ハーピーだ。」
ザンギエフが言った。
「ハーピー?モンスターか?」
「そうだ。まあ、あの程度の群なら大したことはない。」
「魔法使いのお手並み拝見かな。」
ハーピーは姿が分かるほど近くに来た。上半身は人間の女に似ている。
しかし腕ではなく翼があり、頭に生えているのは髪の毛ではなく羽毛らしい。
足は完全に鳥のものだ。鋭いかぎ爪が見える。
「あのかぎ爪には注意だ。急降下してきてあれで獲物をつかむ。そのまま飛び上がり、高いところから落とすのが奴らの攻撃手段だな。」
「本当に大したことないのか?」
「ああ。掴まればヤバいが、奴らは狙うのが下手だからな。落ち着いてかぎ爪をかわし、飛び上がる前に攻撃してやればいい。」
俺たち4人は武器を取り、攻撃に備える。
ハーピーは上空を旋回しこちらのスキをうかがっているようだ。
「ハーピーは何か言っていますね。」
スラ子が俺にだけ聞こえるようにささやいた。
「俺には何も聞こえないが。」
俺も小声で答える。
「とても高い声です。聞こえませんか?」
「なんにせよ、倒してしまえばいいだろう。」
ハーピーもこちらの様子をうかがうのをやめ、攻撃してくるようだ。1羽がツムギめがけて急降下を始めた。
それに対し、メグミがツムギを庇い、前に出て剣を構える。




