表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/320

スライムはクロレラ培養を試みる

 ベンチに座ってメグミとツムギを見守る。


 気が付くのはツムギの変化だ。明らかに表情が豊かになっている。

 昨日のツムギは緊張からか表情が(とぼ)しかった。

 良く言えば大人っぽいとも言えるが、無理をしている感じだった。


 今のツムギは自然体に見える。口数も多くなっているようだ。

 心配していたつり橋を無事に渡り、鼻炎も良くなった事で抑圧されていたものから解放されたのだろう。

 ツムギを仲間に加えたことは正解だった。


「カヒト、お待たせ!朝と同じスープにしたよ。」

「うん、うまそうにできたな。メグミ、ツムギ。ありがとう」

「私がやったのは、お団子を切る事くらいだったですけど。頑張りました!」

 ツムギが言って、にこにこして俺を見上げる。

 俺はごく自然にその頭をなでた。

「あー!いいなー、ツムギちゃん。カヒト、私も!」

 メグミがそう言って俺の隣に来た。今度はメグミの頭をなでる。

「マスター。私もいい子いい子してください。」

 スラ子も?もちろんいいけど……。

 左手でツムギ、右手でメグミの頭をなで、肩に居るマスコットスラ子に頬ずりをする。


 ……なんだこれ?


「とりあえず、食べよう。」

 スープは同じようにうまかった。


「マスター。これで熊の心臓は使い切りました。」

「分かった。内臓って色々あるけど、俺が分かるのは後、肝臓くらいだな。」


 スラ子が保存してある熊の内臓を見せてくれる。

 心臓は食べてしまって、小腸は少し消費しただけ。

 肝臓は三角形をしていて心臓と同じくらいでかい。あ、胃も、一応食べられるだろう。

「胃の下にある何だか分からない塊とかは食べられそうにないな。」

「中には何か黒い液体が入っているようです。」

 もしかしたら、これが「熊胆(くまのい)」かもしれない。だとしてもどうすればいいのか分からないが。


「腸と胃、肝臓を残してほかは捨ててしまうか。その辺に穴でも掘って埋めよう。」

 小屋の近くでは良くないだろうと思い、100メートルほど進んでから穴を掘った。

 スラ子が鉄スライムをシャベルの形にしてくれる。

 掘るのは簡単だった。

 この辺りは湿地になっていて、地面が柔らかい。しかし少し掘ればすぐに水が出てきてしまう。


「こういう湿地に生ごみを埋めるのは良くないかも。」

 俺がそう言うと、

「マスター。不要であれば私が吸収分解いたしますが。」

 スラ子が言った。

 言われてみれば確かにそうだ。スラ子に食べてもらうのが良いだろう。

 なぜ気が付かなかったのか。


 掘った穴を埋め、先へ進む。

 坂の上から見えていた草原はほとんどが湿地だったらしく、枯れた草の間に見える土は湿っている。

 湿地に入ってみると、足がずぶずぶと沈み込む。水田みたいだ。

 水は冷たく、日当たりの悪い所は薄く凍っている。スラ子の防寒性をもってしても冷たさが伝わってきた。


 草原の中を進む道は地面より50センチほど高くなっている。

 人が盛り土したのか、偶然少し高くなったのかは分からないが、歩くのは支障ない。


 てくてくと歩いていく。

 湿地の所々に大小の池がある。透明度は無く、濁った池だ。

 道のすぐそばにも一つ、小さな池。いや、沼だな。

 枯れた草に囲まれた水面は、濃い緑色をたたえている。

「マスター。緑色ですね。」

「そうだな。春になると、この湿地の草はみんな緑色になるだろう。」

「それは楽しみです。」


 俺はその沼を見ながら、ふと思いついた。

「スラ子。この沼の、緑色の水を取っておいてくれないか。」

「水は十分な量確保してありますが。」

「水と言うより、この緑を取っておきたい。」

「これをですか。分かりました。では、火酒の時のように吸収分解せずに保存しましょう。でも、マスターはこの緑の物が何かご存じなのですか?」

「ああ、これはクロレラと言う。」

 もちろんクロレラそのものではないだろう。何せここは俺にとって異世界だ。だが便宜(べんぎ)上クロレラと呼ぶことにする。


 クロレラは水の中にいるごく小さな粒状の植物だ。

 この緑がそれに似たモノなら、増やしておけば後で食べられるかもしれない。

 増やすための実験をしたい、とスラ子に伝えた。


「マスターの食事が豊かになるのであれば、もちろん喜んで協力します。」

「ありがとう。クロレラに必要なのは水、空気、肥料……。そして日の光を浴びて増えると思う。なるべく日当たりが良くなるようにしておいてくれ。」

「肥料と言うのは何でしょうか。」

「植物に必要な栄養の事だ。……落ち葉を微生物が分解したもの……とかで良いのかな……。」

「色々試してみましょう。」

「頼む。クロレラが増えればいいから。」


「メグミさん、カヒトさんがまた変なもの食べようとしていますよ。」

「うん……。熊の内臓は思ったよりおいしかったけど……。」

「あれはおかしいでしょう。沼ですよ。」

「……ぬま……」


 不評だ。まだ食べようともしてないのに。

 と言っても、あまり受け入れられないのは元の世界でも似たようなものだろうか。


 ……よく考えれば俺は元の世界でクロレラを買ったことはない。サプリメントなどとして売っていたのは知っているが、手に取ろうとはしなかった。

 それなのに、なぜ異世界で変なチャレンジをする気になったのか……。

 まあいいか。


「成功すれば、冬でも野菜を食べられるようになるぞ。まあ、野菜っていうか……野菜みたいなものだと思うけど……。」

「いいえ。私は遠慮しておきます。」

 ツムギが言う。

「冬はビタミンが不足しがちになるからな。」

「ビタミン?って何?」

 メグミが聞いてくる。

「えーと……。必要な栄養素だ。」

 ビタミンって何だろう?


挿絵(By みてみん)

「クロレラ培養」のスキルを獲得しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓↓↓クリックしていただくと外部のランキングサイトにて投票されます↓↓↓
ただし、外部サイトへジャンプしてしまうのでご注意ください

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ