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スライムによるきわめて健全な医療的行為

 ……。

 ツムギがピクッと体を震わせた。

 スラ子がツムギの鼻に入ったのだろう。外見からは全く分からない。


「まずは空気の通り道を確保しましょう。なるほど、塞がっていますね。」

「少し……怖いです……。初めてなので……優しくしてください。」

「ここの壁の所が膨らんで(ふさ)がっています。ちょっと押し広げますよ……グイっと……。ツムギさん、痛くありませんか?」

「んっ!圧迫感が……でも、我慢できます。止めないで……。」

「では、このまま喉まで広げていきます……。」

「あっ……。ダメ……優しく……して。」

「少し我慢してください。」

「あ、あ……ん、……痛いけど……キモチ……いい……。」


「どうしよう、カヒト。何だかドキドキする。」

「う、うん……。」


「あ、すごいです。鼻が通ります。」

 ツムギが言った。

「次は副鼻腔(ふくびくう)ですね……。やはりマスターと同じ位置には無いみたいです。……ここに、細い通路があるようです。完全に塞がってますけど……。では、失礼して……。」

「あ、また……私の……中に……無理やり……」

 メグミは両手で顔を覆い、真っ赤なっている。


「空洞に出ました。奥には、何かどろどろの物がタプタプしてますよ。ちょっと匂います。」

 今度はツムギが赤くなる。

「す、スラ子。あんまり詳しく言わなくていいから。」

「失礼しました。では、早速きれいにしてしまいましょう。」


 外見は何も変わりないが、ツムギには劇的な変化だったようだ。

「……何だか頭が軽くなってきたような……。これは……スゴイです。」

「ツムギさんの鼻の穴の中も把握できました。通路の位置は違いますが、ツムギさんも(ひたい)に副鼻腔がありますね。」

「そうなのか、スラ子。」

「はい、通路は、(まぶた)を両側から回り込むようになっています。」

 スラ子が、ツムギの顔に副鼻腔の位置を色を付けて示してくれた。頬と、目の上に二つ並んであるらしい。

「額の副鼻腔への通路は、マスターのよりも細く長いので、詰まりやすいのかもしれませんね。」


「スラ子、お疲れ様。」

「これくらい、何でもありません、マスター。ですが、私が外に出てしまうと、空気の通り道と副鼻腔の通路はまた塞がってしまうようですが。」

「じゃあ、しばらく、そこに居て広げておいてもらえるか。完全に治れば大丈夫だろうから。」

「了解しました。」


「カヒトさん、スゴイです!すっごくスッキリしました!」

「それは良かった。」

「スラ子さん、ありがとうございます。何とお礼を言っていいか。」

「私はマスターのご命令通りにしただけです。お礼ならマスターに。」

「カヒトさん、ありがとうございます。」

「どういたしまして。スラ子、ありがとう。」

「マスターのお役に立てて、何よりです。」


 ツムギは両手を広げ、スーッと鼻から息を吸った。

「空気がおいしい……。匂いが分かるって、素晴らしいです。」

 よほどうれしいのだろう。ツムギは軽やかにスキップしながら先を行く。

 俺はメグミと並んで歩き、そんなツムギの様子を二人で喜んだ。



 そうこうしているうちに俺たちは小屋の近くまで来ていた。

「マスター。あの小屋には誰もいないようです。」

「留守かな?」

「人が暮らしているような形跡はありません。」

「多分、休憩小屋だよ。昨日の商隊の人たちが使うんじゃないかな。」

 メグミが言った。

「ああ、そうなのか。あそこで休憩しようっていうのはそういう事か。」


 近づいてみると、小屋の隣に厩舎(きゅうしゃ)があり、(わだち)も残っている。

 あの商隊が昨日の夜、寝泊まりしたのだろう。


 そして丸太で出来たテーブルとベンチ。小屋も丸太小屋だ。

「別に中に入る必要はなさそうだ。ツムギの言ったようにテーブルだけ借りよう。」


「マスター。昼食にしますか?」

「ああ、もういい時間だしな。」

「カヒトさん。お昼は私が作ります。ずっとお世話になりっぱなしなので。」

 ツムギが言った。

「私もやるよ。最近、カヒトに任せっきりになっちゃってたからね。」

 メグミもそう言った。

「ありがとう、二人に頼もう。」

「作り方は私がお教えします。マスターは座ってお待ちください。」


 俺は皆の言葉に甘えて休むことにした。

 こちらの世界に来てかなり体力がついたとは思うが、やっぱり歩く旅は大変だ。足がパンパンになっている。


挿絵(By みてみん)

「鼻洗浄」のスキルを獲得しました!

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