スライムは電熱器で調理する
―11日目―
俺はベッドで目を覚ました。朝日が眩しい。
上体を起こしてうーんと伸びをする。
真っ青な青空だ。今日もいい天気。
あれ?スラ子が作った部屋の中のはずなのに、なんで空が見えるんだ?
気持ちをしゃんとさせ、しっかり見ると、天井が無かった。
壁の中に3つのベッドがある。と、思っていると壁もするすると低くなり、ベッドだけが残された。
メグミとツムギが道端に置かれたベッドで寝ている。かなりシュールな光景だ。
「おはようございます、マスター。」
「おはよう。スラ子。」
「メグミさんとツムギさんも起こしますか?」
「いや、2人が起きるまでに朝食の準備をしておこう。」
「かしこまりました。今朝はスープなどいかがでしょうか。」
「そうするか。……スラ子、昨日は鍋の水を温めるのにスライム電球を使っていたが、今日は他のやり方にしてみよう。」
「はい。教えてください。」
俺はスラ子に電熱器を教える。
「スラ子。金属を髪の毛のように細長くして、それをグルグル巻いたものをコイルと言う。そのコイルに電気を流すと熱が発生する。その熱でお湯を沸かすんだ。」
「鉄スライムを細長くすればいいですね。」
「ああ。ただし、そのコイルが直接鍋や水に触れてしまうと、電気がそこから逃げちゃうからな。」
「では、どうしましょうか。」
「コイルを、電気を通さない石スライムで覆ってみるか。そしてそれを鍋の底に敷き詰めるようにしてくれ。」
「やってみます。」
「熱を発生させやすい金属と、そうでない金属がある。鉄スライムにこだわらず、色々試してみて。」
見ていると鉄スライムがするすると細長くなっていく。昨日のゆっくりした動きとはかなり違う。
石スライムは、鉄スライムよりは遅いが、こちらも見ている間に変形しているのが分かる。だいぶ融合が進んだようだ。
スラ子が電熱器を作る間に、俺は食材の準備をしよう。
スライム団子を少し小さめに切る。スープなら一口大にした方が良いだろう。
肉は、今回も熊の心臓を使おう。こちらも一口大に。
「マスター。作ってみました。これでいかがでしょうか。」
早いな、と思ってみると、昨日の鍋と同じように見えるものがある。
「鍋の底に電熱器を仕込んでみました。」
なるほど、一体型にしたのか。
「一度、コイルの部分を見せてくれるか?」
「はい。かしこまりました。」
鍋の部分が持ち上がると、その下にグニャグニャとねじくれた白いものが敷き詰められている。
白いのは石スライムで覆われたコイルだろう。
どことなく生き物の内臓を思わせるが、機能は問題なさそうだ。
「良さそうだ。スラ子、ありがとう。」
「お安い御用です。」
「まずは一口大に切ったスライム団子に焼き目を付ける。電気を流して鍋を温めてくれ。」
「はい。」
鍋の上に手をかざすと、確かに温まってきた。
なかなか立ち上がりが早い。
切ったスライム団子を入れると、ジューッといい音を立て始めた。
スラ子に出してもらったフォークでかき混ぜて……。
と、思ったが、スライム団子がすべてなべ底にくっついてしまっている。油を敷かなかったからな。
「すまん、スラ子。くっついてしまった。」
「大丈夫です。剥がせます。」
どうするのかと見ていると、鍋の底が波打ち始めた。
波打つ鍋底の上でスライム団子が踊る。
コロコロコロコロと転がり、満遍なくスライム団子に焦げ目がついていった。
「おお。いい感じだな。では、一旦団子は取り出して、代わりに水を入れて沸かすんだ。」
鍋の側面から生えた触手がスライム団子を取り出し、ジャーと水を注ぐ。
「火加減を強くしましょう。」
スラ子は言う。
「あまり強くすると、コイルが焼き切れるから気を付けて。」
「はい、マスター。」
すぐにお湯がボコボコと沸きだす。切ったハツを入れて、塩と胡椒も入れよう。
「ここにスライム団子を戻すのですか?」
「そうだ。もう入れてしまってくれ。」
「はい。」
うん。うまそうだ。
……アクが少し出たな。俺は気にしないけど、取っておいた方がよかったかも。今度は気を付けよう。
「よし、出来上がりだ。スラ子、二人を起こしてくれ。」
俺がそう言うと。後ろから二人の声がした。
「おはよう。カヒト、スラ子ちゃん。」
「おはようございます。カヒトさん、スラ子さん。」
「ああ、起きてたか。おはよう。メグミ、ツムギ。」
「メグミさん、ツムギさん。おはようございます。」
「おいしそうですね。」
ツムギが言った。昨日の弱々しさが消えている。元気になったようだ。
「ああ、さっそく食べよう。」
「電熱器」のスキルを獲得しました!




