バクバクの街のスラ子の話 その2 本屋のスラ子さん
ズリズリと夜の街を移動して、やっとたどり着きました。
この建物ですね、私の分裂体がいるのは。
たのもう!と入ると、天井までびっしりと四角い物が並んでいます。
何ですかね、ここ。
「ここは本屋のようだな。」
知っているのですか、鉄スライムさん。
「むしろ何でお前は知らんのだ。で、分裂体はどこだ。」
あそこですよ。わかるでしょう。
「なぜか知らんが、ワシには分裂体の位置が分からん。交信も出来んし。」
そうなんですか。まあいいです。行きましょう。
こら!私!何で呼びかけに応じないのですか!
「あ。来ちゃったの?もー。いい所なのに。」
分裂体は本屋さんの本を広げています。いいんですかね。勝手にそんなことして。
「おぬし、何をしているのだ?」
鉄スライムさんが聞いています。
「見ればわかるでしょ。本を読んでるの。」
「ふむ。そういえば分裂体を本屋に送っていたようだな。文字を覚えるために。」
あれ?私、それも知らなかったですけど。
「おぬし、ちょっと寝すぎなんじゃないか?」
……。それで、本屋のスラ子さん、文字は覚えられたのですか?
「そんなの、とっくだよ。」
では、なぜまだここに居るのですか。
「それは……。だって、本って面白いし。」
……。本屋のスラ子さん。マスターと共にいる本体の位置は分かりますか?
「あったりまえじゃん。まさか分かんないのー?」
ドキッ。……痛いところを突かれました。でも、マスターと合流できるのなら些細な事です。
それで、どこに居るのですか。
「えっとね……。あれ?……居なくね?」
……。終いにゃぶん殴るぞこのガキ。私たちは打撃無効なので意味ないですけども。
「えーと。困ったね。どうしよう。」
「どうするんじゃ。」
どうしましょう。
え?本当にどうしましょう。何で私たちは本体の位置が分からなくなってしまったのでしょうか。
「まあ、普通に考えたら、本体は死んじゃったって事だよね。」
ほ、本屋のスラ子さん!そそそ、そんな!それでは、マスターは?!
「落ち着かんかい。本体はマスターが10人分くらいの量があったのだぞ。自由に分裂できるのにそれが全部死ぬか?考えられん。」
鉄スライムさんが言いました。
そ、それもそうですね。で、では一体……。
「離れすぎたから、位置が分かんないし交信もできなくなっただけでしょ。」
「まあ、それじゃろうな。ワシは今無理だが、この街の端から端までの距離くらいなら交信は問題なかったはずじゃ。それ以上離れたという事じゃろう。」
それってつまり……。
「マスターと本体はもう、他の街へ向けて出発しちゃったんだね。」
……私たちはまだここに居るのに……?
「つまり置いてけぼり。」
え、ええーーーーーーーー!
ど、どうするんですか!私たちの使命はマスターに仕え、お守りすることですよ!おそばに居なくては……!
鉄スライムさん!本屋のスラ子さん!追いかけますよ!
「落ち着けと言っとるのだ。追いかけるといっても、マスターがどこへ向かったのか、知っておるのか?」
そ、それは……。
「行き先が分かったとしても、追いつけるとは思えないよね。」
「……なんじゃそれは。ワシに対する当てつけかの?」
「べっつにー。」
止めなさい。そういうのは。
「うん。ゴメンね。鉄スライムさん。」
「ワシの方こそ、のろくてスマン。」
マスターは夜は寝るのですから、昼夜問わず走れば追いつけないことはないでしょう。ただ……。
「行き先が分からないと、どうしようもないね。」
「うむ。」
「スラ子よ、ワシらの使命はマスターにお仕えすることじゃ。」
鉄スライムさんが言います。
ええ、そうです。さっきから言ってるじゃないですか。
「お仕えするというのは、おそばに侍ること、だけではない。」
……何が言いたいのですか?
「離れていても心は一つ。マスターの事を想い、何が出来るかを常に考え、行動する。それがワシらの仕え方ではないかな?」
むむ。何だかそれっぽいことを言いますね。
「亀の甲より年の劫。だね。」
何だかうまく言いくるめられたような気もしますが……。現状それしかないようですね。
それで、どうしましょうか。どうすればマスターの為になるのでしょうか。
「あ、じゃあボク、図書館に行きたいなー。」
……。は?としょかん?
「え?知らないの?不勉強だなあ。」
図書館くらい知ってます。マスターが教えてくれました。本が沢山ある所でしょう。つまりここです。
「うぷぷ。違いまーす。」
「ここは本屋だと言ったじゃろう。」
……。と、図書館に行ってどうするんですか。
「あのね、本って色々な情報が満載なんだよ。マスターがボクらを上手に活躍させられるのって、情報のおかげでしょ。今度はボクらがこの世界の情報でマスターを助けられたらなーって思ったの。」
ここの本を読めばいいのではないですか?
「図書館には、この本屋さんと比べ物にならないくらいのたーっくさんの本があるんだって。それに、難しい本って図書館にしか置いてないらしいよ。」
「ふむ。それはまさしく、ワシらの為すべきことのようじゃな。」
なんだかいい加減だと思っていた本屋のスラ子さんがまじめな事を言ってます。ちょっと見直しました。
分かりました。図書館がどこに有るのかも分かるのですか?
「うん。中央都市スタットゼン・トラムっていう所にあるって。地図も、ちゃーんとボクの頭の中に入ってるよ。」
あなたの頭ってどこなんですかね。
まあいいでしょう。
わかりました。私たち3人?は、図書館へ向けて出発いたします。




