スライムは茹でられる
熊やツムギの事で時間を取られたが、やっと次の街へ向けて出発だ。
「メグミ、準備はいいか?」
「うん。大丈夫。」
「ツムギも大丈夫だな。」
「はい。」
「じゃあ、出発しよう。」
とりあえずは街道へ出る。もう銀の背熊を警戒して森の中を歩く必要はない。
街道は川のそばを通っていた。
このあたりは、木はまばらに生えている程度だが岩がごろごろしている。
道は岩を避け、多少曲がりくねりながら緩やかな上り坂になって続いている。
メグミとツムギは話をしながら並んで歩き、俺は少し後ろに続く。
二人とも足取りは確かだ。
特にツムギは不釣り合いに大きなバックパックを特に苦もせず背負っている。
「ツムギ、寒くはないか?」
「はい。スラ子さんに私の全身を覆っていただいていますので、とてもポカポカしています。お二人にも同じようにされているそうですが。」
「ああ、その通りだ。」
「ありがとうございます、スラ子さん。冬なのに、こんなに暖かいのは初めての事です。」
「宿とかはどうしていたんだ?」
「大体、野宿でした。孤児だった頃は、比較的安全な場所でうずくまっていただけです。旅に出てからは雑魚寝宿に宿泊させていただいていましたけど、隙間風がひどかったです。」
「そうだったのか……。」
「私は寒さに強い方なので大丈夫でしたけどね。」
ツムギはかなり厳しい暮らしをしてきたようだ。
「それなら今もお腹が空いているんじゃない?ね、カヒト、ちょっと早いけどお昼にしようよ。ツムギちゃんにスライム団子をごちそうしてあげよう。」
「ブレないな、メグミは。でも、それもそうだな。あの岩陰で休憩にするか。」
道端の大きな岩を回り込む。
これまで道ですれ違った人もいないので誰も来ないかもしれないが、往来の真ん中で食事というのも気が引ける。
岩陰に行くと、そこには小ぶりな鍋が置かれていた。鍋からはもうもうと湯気が立っている。
一瞬、先客がいるのかと思ったが、スラ子だ。
「スラ子。これは?」
「はい。茹でる事に、再挑戦です。」
バクバクの街に来る前の晩にやったあれだ。
あの時は火に弱いスラ子が鍋になっていたので、一部が蒸発して死んでしまったと言っていた。
「スラ子。頑張るのはいいが、無理はするなよ。」
「大丈夫です、マスター。鉄スライムでできた鍋ですから。」
鍋の中を覗き込むとピカピカと輝いている。スライム電球だ。
スライム電球が3つ、鍋の中に入っている。
「茹でるって、スライム電球を茹でてる……訳じゃないよな。」
「電球でお湯を沸かしています。よくご覧ください。」
スライム電球はかなりの高温になるからな。丁度いいと思ったのだろう。
湯気と眩しいのに我慢しながらよく見てみると、白く透明感のある丸い物がいくつもお湯の中に浮かんでいるのが分かった。
「そろそろ良いようです。どうぞお召し上がりください。」
鍋の底が盛り上がってきたと思うと、茹でられ、半透明になったスライム団子が3つ入ったお椀が俺たちの手元まで運ばれてきた。
いつの間には右手には金属でできたフォークが握られている。これも鉄スライムが変形してくれたものだろう。
「メグミ、ツムギ。いただこうか。」
俺たちは適当な石に腰掛け、食べ始めた。
「スラ子、いただきます。」
「スラ子ちゃん、ありがとう。いただきまーす。」
「ええっと……。スラ子さん、いただきます。」
スライム団子をフォークで突き刺す。かなり柔らかい。それになんだか大きくなっているような気がする。水を吸って膨らんだようだ。
持ち上げるとどろんと伸びる。お雑煮のお餅みたいだ。
口に運ぶと……味がない。元々味がしないなと思っていたスライム団子だが、茹でる事でその特徴がさらに際立った。
食感はと言えば、ただただ柔らかい。噛んでも噛まなくても何も変わらない。
片栗粉のトロミか甘味のないわらび餅か。自分が何を食べてるのかわからなくなってくる。
ツムギは夢中で食べていた。メグミの言うように、やっぱりお腹が空いていたのだろう。
スラ子も追加の団子をどんどん茹で、ツムギのお椀によそっている。
メグミもしっかり食べてはいるが、夢中という程でもない。思っていたやつじゃなかったのだろうか。
「スラ子、熊の内臓も茹でてみよう。」
俺の言葉にメグミとツムギが顔を上げた。
「カ、カヒト。内臓……食べるの?……何のために持ってきたのかと思ってたけど。」
「……私は、このスライム団子をいただけるだけで満足ですので。内臓はお二人で召し上がってください。」
「あっ、ツムギちゃん、ずるい!」
「鍋」のスキルを獲得しました!
連載50回を記念しまして、現在のスラ子のスキルツリー全体を掲載します!




