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戦いの後と二人組と

 バシッッッッ!!!!!!


 直径2メートルにはなろうかというスラ子の電撃ボールが、銀の背熊に命中。

 一瞬の炸裂(さくれつ)音と共に、熊の命はその体から離れた。


 落下速度のまま、電撃ボールは地面に吸い込まれて姿を消した。

 ゆっくりと崩れ落ちる熊。その所々から薄っすらと湯気とも煙ともつかないものが立ち昇っている。



 ふう……。

 終わった。

 緊張の糸が切れた。俺もその場に崩れ落ちそうだ。


「カヒト……!大丈夫?」

 背後からメグミが俺に声をかける。

 少し怯えているような、怒っているような声だ。

「メグミ……。あ、メグミがやる気だった所に、横やりを入れちゃったな。」

「……まったく。ちょっと本気出そうと思ってたのにな。」

「すまん。メグミを信用してないわけじゃないんだけど。」

「分かってる。ジョーダンだよ。」


 ざくざくと足音が近づいてきた。

 熊に襲われていた二人組だ。

「いやー。助かりました。」

 俺と似たような背格好の男が言った。

 金髪に人懐っこいような笑顔が似合う。眼の横に大きな傷跡があるのを差し引いても、なかなかのイケメンだ。

「銀の背熊が街道に出るっていうんで、避けようとわざわざ森の中を進んだんですが、運悪く出くわしちゃいましてね。もう命は無いものと覚悟してましたよ。」

「無事で何よりだ。」

 俺は男が差し出した手を握り返して言った。


「僕はトマスと言います。よろしく。ツムギ、お前も礼を言いなさい。」

 男は小柄なもう一人にそう言った。

 ツムギと呼ばれた女の子は目深にかぶっていたフードを上げる。

 その顔を見て、俺はアッと叫んでしまった。


 眼が一つなのだ。

 リンゴほどの大きさの目が、顔の中心、小さな鼻の上にある。

 深い藍色(あいいろ)の瞳が美しい。その目がまっすぐに俺たちを見ている。吸い込まれそうな瞳だ。


「……サイクロプス……。」

 メグミがつぶやく。

「はい。私にはサイクロプスの血が流れているようです。ご挨拶(あいさつ)が遅れました。私たちの命を助けて頂き、誠にありがとうございました。」

「う、うん。私は何もできなかったけど……。」

 と、メグミ。

「あなたが殺気を飛ばし熊の注意を引いてくれなかったら、私は頭を飛ばされていたでしょう。本当にありがとうございます。」

 ツムギはそういって、メグミに対し深々と頭を下げる。

「そして、そのスキをついて、そちらの方が素晴らしい魔法で敵を倒したわけですね。理想的なパーティーアタックでした。」

 俺にも深く頭を下げる。


 俺の(本当はスラ子の)攻撃はもちろん魔法ではない。

 炎は火酒のアルコールに火をつけただけだ。電球の応用で、むき出しのフィラメントで点火した。

 電撃は牙ウルフを倒した攻撃と基本は同じだ。ただし相手を水で濡らし、電気の通りを良くする事でより効果的な攻撃になった。

 もっとも直径2メートルの電撃ボールなら、水がなくても結果は同じだろうけど。


 それにしても、メグミが殺気を飛ばしたというのは何だろうか。ただならぬ気迫(きはく)だったのは間違いないが……。


 ツムギはこちらをじっと見つめてくる。

 彼女の身長は140センチくらいか。とても華奢(きゃしゃ)に見える。

 黒い髪をおかっぱにしているので、サイクロプスというよりも一つ目小僧みたいだ。

 可愛らしい女の子だが着ているものはボロボロだ。

 至る所がほつれ、穴が開き、シミだらけ。フード付きの短いマントを羽織っていて、それだけは、少しましだ。

 そのせいか、風邪でもひいているのだろう。しきりに鼻をすすっている。


「しかし、すさまじい魔法ですね。」

 トマスと名乗る男が熊を眺めながらそう(つぶや)いた。

 熊はうつぶせに倒れ、ピクリとも動かない。

 所々焦げてはいるが、その背中の毛は美しい銀色だ。

 これが『銀の背熊』で間違いないだろう。


「君たちはこれでクエスト達成ですね!お見事でした!」

「そうか。……クエスト達成ってことは、冒険者ギルドに報告に行かなきゃならないんだな。」

「ええ、証拠に背中の毛を少し持っていけばいいですよ。もちろん丸ごと持っていけるのなら、それに越したことは無いですけどね。」

 トマスがそう教えてくれた。なるほどな。

「……あー。俺たちはこれからブロートコーブへ行こうとしてただけなんだ。別に熊が目的だったわけじゃない。」

「そうなんですか。クエスト目的じゃなかったんですね。……確かに出発してすぐに戻るのは気が進みませんよね。」

「仕方ないよ。放っておくわけにいかないし。」

 メグミが言う。

 まあ、その通りだ。

 銀の背熊が討伐されたのなら速やかに報告するべきだ。この熊を警戒して街から出ない人もいるだろうから。

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