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バクバクの街を出発

 スラ子のスライム電球は大成功。今後、灯りには困らないだろう。


「万が一、人に見られてもまずいし、今日はこれまでにしよう。夕食の時間だ。」

 俺が手を取ると、やっとメグミは我を取り戻した。

 来た時と同じように狭い通路を抜け、いつものバクバク亭へ。

 食事の質は金の盃亭の方がいいが、あっちは少し遠いからな。


 食事と一緒に火酒を何本か注文した。

 もちろん今飲むためではない。スラ子に保存しておいてもらうのだ。恐らく必要になる。


 ふと見ると、すぐ隣にドワーフ3人組がいた。テーブルの上が酒のジョッキだらけだ。

「がっはっはっは!おう!お前らか!酒ならおごってやる!祝い酒だ!」

 赤ら顔がでかい声で言った。

「笑いが止まらないようだな。」

「お前らのおかげでな!呑め呑め!」

「ほどほどにな……。ところで聞きたいんだが、なぜサイクロプスは古い住民に嫌われているんだ?」

「がっはっは!……サイクロプス?……知らんなぁ……。知っているか?」

 赤ら顔はドワーフの女性と無口な男に聞いた。

「アタシも、嫌われてるってのは聞いてるけど、理由は知らないね……。まあ、いいじゃないの!なんだって!」

「そうだそうだ!呑め呑め!がっはっは!」

 ……まともに話が聞ける状態じゃないな。最も、理由を知ってどうしようという気も無いのだが。


 俺たちは食事を済ませ店を出た。

 一応世話になったドワーフ達に別れの挨拶をしたが、話を理解していたようには見えなかった。


 宿の部屋に戻ると、ちょっと口数が少なくなっていたメグミが言った。

「カヒトとスラ子ちゃんは、本当にすごいね。あの光っていたのって、魔法じゃないの?」

「いや、魔法ではないよ。理屈としては、焚火が明るいのとあまり変わりはない。」

「そうなんだ……。」

「すごいといえば、メグミの剣の訓練はすごかったな。俺は剣の知識は無いけど、相当な実力だってことは分かるよ。」

「えへへ……。そうかな……。」

「その通りです。マスターがメグミさんとパーティーを組んでいて、心強いです。」

「ありがと。私も、二人とパーティーを組めてよかったよ。……ちょっとね、私、役立たずかなーって落ち込んでたの。」

 メグミが役立たずだったら、俺なんかどうなるんだ。と思ったが、言ってもしょうがないことは言わない。

 俺は黙ってメグミの隣に座り、頭を撫でた。メグミは俺にもたれ、安心した様子だ。

 今日も少し夜更かししてしまいそうだ。


 ―10日目―


 朝。

 外はまだ暗いが、起きる。予定通り出発しよう。

 いつもより早い時間だったが宿の食堂は(ひら)いていた。むしろこの時間のほうが混んでいるくらいだ。

 冒険者は早起きなんだろう。


 受付に街を出ることを伝え、礼を言う。

「今日で街を離れるんです。お世話になりました。」

「そうか、こちらこそありがとう。道中気を付けてな。」

「はい。ありがとうございます。」

「またバクバクに来た時はよろしく!」

 なんだかずいぶん長いこと世話になっていた気がする。



 街の門につくと、妙に人が多い。

 ガタイの良い戦士風の男や身軽な装備の女性など、冒険者達が街の外へ向かっている。

 俺たちと同じように街を離れるパーティーかと思ったが、皆、荷物が少ない。

「門番さん。今日は何かあるんですか?」

 メグミが門番に聞いた。

「ん?冒険者ギルドでクエストを見て来たんじゃないのか?」

「いえ、街を出ようと思って。」

「今から街を出るのか?……あまりお勧めしないが……。『銀の背熊』が街道に出たって話だ。」

「銀の背熊?」

「狂暴なヤツだ。この間、でかい右手熊を狩ったって得意顔の冒険者がいたがな、それよりもヤバイ。」

「いや、どっこいどっこいって所だろう。まあ、どっちにしろ俺たち街の門番程度に勝てる相手じゃないけどな。」

 もう一人の門番が言った。


 俺はメグミと顔を見合わせる。どうしようか……。

「行くのなら止めはせんが、気をつけろよ。」


 門を出たところで俺は言った。

「危険な様なら、出発は延期にするか?」

「うーん……でも、誰かも言っていたけど、冒険者に危険は付き物だよ。」

 赤ら顔のドワーフの言葉か。あれもたいがい無責任な発言だと思うけど。

「それに、困っている人を助けるのが、私たち冒険者の本分だよ。街道が通れなかったら、みんな困るもの。」

「なるほど……。スラ子はどう思う?」

「マスターは私がお守りいたします。もちろんメグミさんも。」

「……わかった。ただし、その熊が街道に出るなら街道を避けて通らないか。出来れば会いたくない。」

「えー。……まあ、これだけ冒険者がいるんだもんね。私たちが遭遇する可能性は低いかもね。」


「よし。出発しよう。スラ子、索敵(さくてき)を頼む。できるだけ範囲を広くしてくれるか。」

「はい、マスター。」

「移動速度はどうだ?ゆっくり進むか。」

「そうですね。石スライムや鉱石スライムと完全に融合してしまえば以前の速度になれると思うのですが、もうしばらく速度を落としていただいてもよろしいでしょうか。」

「わかった。遅れそうになったら言ってくれ。」


 街の門から100メートルほど進むと道が二股に分かれている。一方はこの街に来た時に通ってきた道。もう一方がブロートコーブへ通じる道だ。

 銀の背熊を狙っているであろう冒険者たちは両方に分かれている。

 街道に出たという情報があるだけで、詳細な場所までは不明なんだろうか。


 俺たちは分かれ道を直進して森へ入る。

 他のいくつかのパーティーも森へ入るようなので、別に目立った行動でもない。

 街道から見えない程度に離れ、道と平行に歩く。この辺りは少し藪が多い。あまり早くは歩けないが、スラ子のスピードも遅くなっているので結果オーライだろう。


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