スライム電球完成!
スラ子に電球を作ってもらっている。
最初のチャレンジは失敗。しかし、ここからが本番だ。
電球の大まかな仕組みは次のようなものだ。
炭素やタングステンに電気を流すと赤熱して発光する。
タングステンは金属のはずだ。スラ子と融合しつつある鉱石スライムの中にはタングステンもいるかもしれない。が、とりあえずは炭素でいいだろう。炭のかけらに電気を流す。
しかし、当然炭は熱せられれば燃えて灰になる。それを防ぐには周りに酸素がなければいい。
酸素を排除するには……真空にするか、窒素などのガスで満たすか。
「スラ子、石英の球をまた閉じて、その球の中の空気をなくすことはできないかな?」
「はい、マスター。やってみます。」
「あ、炭を新しいものに代えて、内側の煤も取り除いてくれるか。注文が多くてすまない。」
「こうしてマスターと一緒に試行錯誤するのは私の楽しみでもあります。どうぞお気になさらず。」
5分ほどかけ、電球は元の姿を取り戻した。やっぱりかなり動きがゆっくりだ。
「マスター。できるだけ空気を抜いてみました。」
「ありがとう。では、電気を流してみよう。さっきよりも少ない電気で始めてくれ。」
「はい!行きます!」
………………
変化なし……。
「流す電気を少しずつ大きくして。」
「はい。」
………………
電球の中の炭がぼんやりと赤くなってきた。
「いいぞ。もう少し電流を大きく。」
「はい、マスター。」
光が徐々に大きくなっていく。と、同時に石英の球の内側に少しずつ煤がついてきた。
明るくなり始めてから1分ほど経った頃、フッと明かりが消えた。
「すみません、マスター。また失敗ですね。」
空気を抜いてはいたが、酸素が少し残っていたのだろう。
元の世界にあった空気を抜く機械(真空ポンプ)でも完全な真空にする事はできない。スラ子のせいではない。
「うん……。スラ子、球の中に空気を入れずに炭を新しいものに代えることはできるか?」
「はい。可能です。煤も取り除いておきます。」
石英の球はガラス同様の硬さがある。しかしこれはどんな形にも自在に変化できるスラ子の一部でもある生きたガラスだ。
生きたガラスなのだから、開封せずに中身を入れ替えることはできるはずだ。
何処かから取り出された新しい炭のかけらが石英の球に取り込まれ、その中に入っていく。そして、燃えて二つに折れた炭は外へ排出される。
中の銅線が生き物のように動き(事実、生きているわけだが)取り込んだ炭の両端に巻き付いた。
「よし。再チャレンジだ。」
「はい、マスター。行きます。」
今度はすぐに炭が赤熱してくる。電流量の加減が良くなってきたのだろう。
光はどんどん強くなっていく。とても直視していられない。
見る限り煤はついていないようだ。
「電流の大きさはそれくらいで。そのまま続けてくれ。」
「はい。」
明るい。そして熱い!
光が当たっている顔が火照ってくる。まぶしくてかざした手の平も焙られているかのようだ。
「ス、ストップだ!スラ子!」
すぐに光が消える。
目の前のまぶしい光で瞳孔が閉じ切っている。この空き地ってこんなに暗かったか?
そして目がシパシパする。
しばらくしてやっと目が慣れてきた。
電球の見た目に変化はない。炭は灰になっていないし石英の球に煤はついていない。
成功だ。
「やったな!スライム電球の完成だ。」
「はい!すごい明るさでした!さすがはマスターです!」
さすがなのはスラ子だ。
これまでもスラ子は万能だと思っていたが、石スライムや鉱石スライムを取り込んだ事で出来る事が一気に増える。今までの課題がほとんど解決するんじゃないか?
「すごい熱が発生していたが、スラ子は大丈夫だったか?」
「はい。元々の私は水が主成分ですので熱に少し弱いです。しかし、石や鉱石の部分には水が含まれていませんから問題ありません。」
「それは良かった。」
「しかし、なぜ3回目は成功したのでしょうか。2回目と同じようにしたつもりだったのですが。」
「違いは中の空気に酸素が含まれていたかどうかだ。2回目の失敗で球の中の酸素はすべて燃え尽きてしまった。3回目は燃える酸素がなかったから成功したんだ。」
「酸素、ですか。」
「酸素は火が燃えるのに必要な他に、俺たち人間や動物が生きていく上で欠かせない。酸素を口から取り込めなくなると、俺たちはすぐに窒息してしまうんだ。」
「動物にとっては大切な、しかし電球にとっては邪魔者だという事ですね。」
「そうだな。」
ふと後ろを振り返るとメグミがぽかんとした顔をして立っている。
「メグミさん。私は光を手に入れました。」
スライム電球がぴかっと一瞬光る。
メグミはワッと叫んだまま口を開けて呆けている。言葉にならないらしい。
いつの間にか辺りは暗くなってきた。
「メグミ、訓練はもういいのか?物足りなければ、スラ子が周りを照らしてくれるから続けられるぞ。」
「はい!このように!」
空き地を囲む岩や建物の壁の至る所にスラ子がスライム電球を作り出した。
それらを一斉に点灯させると空き地は昼間のように明るくなる。
いや、ここは日差しが入らない場所なのだから、昼間より明るくなったと言うべきだろう。
まぶしい!と両手で顔を覆おうとした瞬間、明かりが消えた。
「……申し訳ありません。調子に乗りました……。」
「いや、いいんだ。」
かなりテンションが上がったのだろう。スラ子がこんなにはしゃいだ様子を見せるのは珍しい。
俺もそんなスラ子の様子を見て嬉しかった。
「鉱物・金属加工」のスキル、「スライム電球」のスキルを獲得しました!




