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スライムは金属を製錬する

 メグミの剣の訓練ができる空き地に、心当たりがあるというスラ子。


 スラ子に連れられて向かったのは宿の裏側の、巨大な岩で陰になっている場所だった。

 岩と隣の建物の間に、狭いがギリギリ通れるスキマがあり、(かに)歩きで何とか通れる。メグミは胸がつっかえると(つぶや)いているが。


 狭い通路を抜けると10メートル四方くらいの空き地があった。周りを岩と建物に囲まれているので薄暗いし、少しジメジメしている。

「すごい。こんな場所があったんだね。スラ子ちゃん、ありがとう。」

「お安い御用です。」

「カヒトはどうする?」

「俺もちょっと試したい事があるからここにいるよ。」

「えへへ、よかった。でもあんまり私に近づかないでね。危ないから。」

「分かった。」


 メグミは空き地の一角へ行き、目を閉じる。

 精神を集中しているようだ。先ほどまでのホンワカとした雰囲気が嘘のように空気が張り詰めるのを感じる。


 俺は何故か目を離せずにいた。緊張がここまで伝わってくる。

 身動きする事さえためらわれるような静けさの中、メグミの目が開き、剣の柄に手を掛ける。

 ………………

 シャッ!!


 抜刀術だ。

 直立の姿勢から、瞬きする間もなく腰の剣を抜き、横なぎに振りぬいている。

 予備動作が全くない。恐ろしい技の切れ。


 次にメグミは剣を大上段に構える。

 次の瞬間、大きく踏み込み、から竹割に剣を振る。

 ……踏み込みの距離が5メートル位あるんだが……

 まるで瞬間移動だ。メグミの相手は距離をとっても全く安心できない。


 その後もメグミの訓練は続く。

 それが剣の型なのか、仮想の敵を想定した戦闘なのは分からないが、訓練風景を見ているだけでもメグミの実力がうかがえる。


 俺が思わず見とれていると、

「そ、そんなにじっと見ていられると恥ずかしいよ。」

 とメグミが言った。

「あ、そうだな。ゴメン。」

 メグミの集中を妨げないように俺は後ろを向いておくことにした。


 俺にもやっておく事がある。

「スラ子、鉱石スライムだが、鉄や銅の鉱石を食べていたスライムという事だよな。」

「はい、マスター。おっしゃる通りです。」

「その金属だけを集める事はできるか?」

「もちろんです。」


 鉱石から高純度の金属を取り出すには相当ややこしい処理が必要なはずだ。

 高熱の炉で溶かすのはもちろん、溶けた金属に酸素を吹き込むだとか硫酸と反応させるだとか、挙句は電気分解だとか……。

 とても理解できないし、仮に理解できていたにしても、すごい設備が必要になるはずだ。

 しかし、スラ子にかかれば特に何も必要とせずに金属を取り出せるというのだ。「吸収・分解」のスキルのおかげらしい。


「ただし、とても時間がかかります。全ての鉄と銅を取り出すのに数日はいただきたいと思います。」

「分かった。金属に限らず、石スライムの方も似たモノで集まっておいてくれ。」

「かしこまりました。あ、金属を取り出すといいましても、正確に言うと金属の性質になったスライム、鉄スライムや銅スライムをまとめるという事です。元の私が『動く水』だとするなら、それらは『動く金属』という事になりますね。」

「『動く金属』は普通の金属より間違いなく便利だろう。楽しみだな。ところで、ほんの(わず)かな量でいいから、今、銅スライムを取り出せないか?」

「マスターの手のひらに乗る量位でしたらできます。」

「では、それをな……こうして……。」


 必要なのは銅を少々、透明で硬さのあるもの(これは石スライムの中から石英のようなもの達を集めた)、さらに木炭を少し。

 バクバクは鍛冶が盛んなので炭は大量に消費される。

 街はずれには灰を捨てる場所があり、小さな炭ならそこでいくらでも集められる。スラ子に頼んで拾ってきてもらった。


 石英スライムをボールのような球体にし、その中に細長くなった銅スライムが小さな木炭を(つな)げて入り込む。

 石英スライムと銅スライムの動きは鈍い。ボールになったり、細長くなるのにも恐ろしく時間がかかる。スラ子は素早く動ける部分で周りから押し、何とかして形作ってくれた。


 とりあえず形になったものは……そう、電球だ。

 見覚えのある形とは全然違うが、必要な要素は網羅(もうら)しているはず。……多分。


「よし、スラ子。この銅でできた線に電気を流してみてくれ。」

「かしこまりました。」

 電撃ボールになったスラ子がつきだしている銅線を(つか)む。

「行きます。」


 ……バッ!

 電球は一瞬、まばゆく(かがや)き、すぐに真っ黒になった。

「す、すごいです!マスター!今のは……?」

「……えーと、喜んでるところ悪いが……失敗だ。」

「これで、失敗ですか?」

「うん。本来は、もう少し弱い光がずっと(とも)り続けるはずだ。……もちろん最初からうまくいくとは思ってないけど。」

「何が悪かったのでしょうか?」

「そうだな。石英の球を開いて中を見せてみてくれ。」

「はい……。少々お待ちください……。」

 電球がパカッと二つに割れた。

 石英の球の内側は(すす)がついて真っ黒になっている。そして木炭はほとんどなくなり、二つに割れている。

「ああ、そうか。中に酸素があるから木炭が燃えてしまった。」


挿絵(By みてみん)

「金属製錬」のスキルを獲得しました!

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