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復讐のスライム

 昼食を終え、金を払って金の盃亭を出る。


 メグミをチラッと見ると何やら考え事か、難しい顔をしている。

 どちらからとも無くまたグ・エルド鉱山の入り口に来た。やはり誰もいない。

 採掘道具もないし、あったとしてもおばちゃんの言う通り採掘したその後が面倒だ。

 入ってもしょうがないな。と俺は考えていた。


 しかし、スラ子が

「マスター。ちょっと入ってみませんか?」

 と言い出した。スラ子がこんなことを言い出すのは珍しい。

「ん?しかし、採掘道具もないんだぞ?」

「はい。鉱石採掘ではなく、少し気になる事がありまして。」

「気になる事?……俺はいいけど、メグミはどう思う?」

「私も、様子を見に行きたいなって思ってたの。ただ、ランタンがないでしょ?それだと難しいよね。」

「確かにな。」

「奥までは行けませんが、少し入った所まででいいのです。」

「少し入った所が気になるのか?」

「はい、マスター。」

「それなら行ってみるか。メグミ、モンスターは出ないと思うが一応気を付けて行こう。」

「うん。大丈夫だよ。」


 グ・エルド鉱山の入り口は巨大だ。高さは20メートルはあるだろうか。大きな岩の大きな割れ目が入り口になっている。

 あたりは割と汚い。岩がゴロゴロしているだけならまだしも、明らかなゴミがそこらに散らばっている。冒険者たちが捨てて行ったんだろうか。誰も管理していないのならこんなものか。

 壁面にはボコボコとへこみがある。鉱石を採掘した跡だろう。驚くほど高い場所にも採掘した跡があり、人間の欲深さが表れているかのようだ。カプフェル鉱山の縦穴が見つかるのも時間の問題だな。


 入り口から大して入っていない所でスラ子が言った。

「やはり、居ました。」

「?……居たって、何が……?」

「スライムです。」

「……?……スライムは、どこにでも居るって言ってなかったか?」

「はい。どこにでも居ますが、やはり石しかないような所に居るのはごくわずかです。カプフェル鉱山で見かけたのは、全部合わせてもマスターの小指の先くらいでした。しかし、ここには森と同じくらい沢山いますね。」

「外から沢山入ってきたってことか?スラ子みたいな普通のスライムが。」

「いえ、……どうやら鉱山の奥からやってきたようです。石や鉱石を食べていたスライムです。」

 改めてあたりを見回してみた。何もない。と言うか石しかない。

 その石が、スライムなのだろうか。


「それらしいのは、俺には見えないんだが。」

「マスター、足元の砂を手に取っていただけますか?」

 俺はスラ子の言う通り、足元の砂を手で(すく)った。ネズミ色の、ただの砂だ。

「今マスターの手の平にあるのは全てスライムです。」

「え?これが、全部?」

「はい。カプフェル鉱山では同じように手で掬ったとして、そこに含まれるスライムは1粒あるか無いかでしょう。ここは異常です。」

「うーん……なぜ、ここには沢山のスライムが集まっているのか、スラ子には分かるか?」

「それが……先ほどから聞いてはいるのですが……。どうも反応がゆっくりでして。」

 スラ子は石や鉱石を食べるスライムたちに話を聞いているらしい。

 スライムの話とは何だろうか?スラ子は人の言葉を覚えたので会話ができるわけだが、スライムにはスライムの言語があるのだろうか。

「メグミ、スラ子はここのスライムと話すので忙しそうだ。俺たちで周りの警戒をしておこう。」

「うん。分かった。」


 鉱山の入り口とはいえ街中だし、危険はないと思っていたがそれは間違いだった。

 洞窟の奥からバサバサという羽音が聞こえて来ると、黒いコウモリが4匹現れた。

 もっとも襲い掛かってくるというより、俺たちの周りを挑発(ちょうはつ)するように飛び回るだけだ。


 俺はナイフを構え、ただただビビッていただけだが、メグミは1匹のコウモリを切り落としていた。

 コウモリ達は明らかにこちらの間合いには近づかないように飛び回っていたのに、それを落とすとは……。メグミの剣の腕は相当なものだ。


 残ったコウモリは洞窟へ、ではなく外へ逃げていった。

 もともと俺たちを襲いに来たのではなく、通り道にいた人間にちょっと手を出してみただけだったようだ。

 その間もスラ子は特に動きはない。かなり集中しているようだ。


 それから5分ほどして、やっとスラ子が話を始めた。

 最初に、スライム同士はどのように情報をやり取りするのかというと、接触するだけだそうだ。

 そもそも、本来スライムには自己と他者を分ける概念は無いとのこと。

 普通のスライムは「自分はスライム。隣の奴もスライム。つまり自分と隣の奴は同じ。」という認識らしい。

 しかし、スラ子はかなり特殊で、たくさんの個体が集まったことで知性が生まれ、「自分はスラ子であり、他のスライムと区別できる」という自意識になったようだ。

 ただし、もちろんスラ子もスライムであることは変わりなく、この場にいる石や鉱石を食べるスライムと接触すれば情報交換ができる。


「石スライムや鉱石スライムがここに集まった理由は、一言で言えば『復讐(ふくしゅう)』です。」

「……復讐?」

「はい。彼らの仲間が……つまり、スライムが集められ、溶かされるという非道(ひどう)の行いがあり、それに対する復讐だと。」

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