中央都市スタットゼン・トラム
「じゃーん!」
メグミが、街を代表して俺を歓迎するように両手をひろげた。
「すごいでしょ!」
確かに凄い賑わいだ。これまで訪れた街の中でも一番だろう。
真っ直ぐ続く道のその先に目を向けると、小高い丘に続いているようだ。
その丘の中心辺りには、ひときわ大きな建物が建っているのが見える。浮遊城の様式とはまた違うが、立派な城壁と尖塔をいくつも備えた石造りの建物。どうやらお城らしい。
お城は夕焼けを背負い、くっきりとしたシルエットを浮かび上がらせている。
丘の上のお城と、裾野の街。それも、どこまで続いているのか見通せないほどの規模だ。
「これで、ここがどこか分ったでしょう。」
ルイの問いかけ。が、分かるわけがない。
困惑したままだ。
「私たちはね、なんと!中央都市スタットゼン・トラムにいるの!」
俺の返事も待たず、メグミは興奮して言う。
でも、
おおっ!スタットゼン・トラム……!
……とは、ならないかな。申し訳ないけど。
「それは……すごいな。」
「…………。」
メグミの興奮が冷めてゆくのが分かる。
「……カヒト、良く分かってないでしょ。」
「いや、それは……そうなんだけど。」
『中央都市』とか言われても……。
「相変わらずズレてるわね。」
「こらこら、ルイ。そんな事を言うもんじゃないよ。」
町長夫婦に言われてしまうのも納得だ。
外の空気はひんやりとしていた。
砂漠では真夏と言っていいほどの暑さだったが、まるで冬に逆戻りしたようだ。
だが、冷たい空気の中に、確かに春の気配はある。
「ここが中央都市なのはわかりましたけど、なぜ町長とルイさんがここに?」
「私が送ったメッセージは読んでもらえたのよね。」
「直接読んだわけではないんです。『スライム』を呼んでいる。と聞きました。それって、俺たちの事かな、と。」
「ええ。もちろんよ。」
やっぱり。
「それで、返事をくれたでしょう。スタッドゼン・トラムへ行くって。ちょうど良かったわ。私たちも、しばらく前から滞在していたのよ。」
「そうでしたか。」
返事は、グルカが出したのだろう。
察するに、マドセンからの転移は、行き先が予め決まっているのだろう。グルカとニケが来た時も、スタッドゼン・トラムへ転移したと考えるのが自然だ。そこからブロートコーブへの移動中に迷子になったと。
「ええと。それで、なぜ俺たちを?急ぎだと聞いてますけど。」
「ええ、手を貸してほしいことがあるのよ。でも、一秒を争う程ではないから、今日はゆっくり休んでちょうだい。体調が良くないのでしょう。」
気遣いはありがたい。でも、気絶から復帰したら、別に体に問題はないんだよな。
「まあ、焦っても仕方ないわ。もしかしたら、大勢のヒトが……いえ、場合によってはすべてのヒトが死んじゃうかもしれないけど、ね。」
何でもないような口調で、ルイが呟く。だがそれは、聞き捨てならないものだった。
不穏すぎる言葉に、どう返事をすればいいのかも分からない。
「まあまあ。ここで話し込んでもしょうがない。積もる話もあるけど、そろそろ夕食の時間だよ。」
町長が強引にまとめ、俺たちは宿屋の建物の中に戻っていった。




