スライムとその一行は鉱石採掘をする
カプフェル鉱山の、未踏らしき横穴に入った俺たち。
「よし。メグミ、行こうか。」
「うん!って、あれ?これ、鉱石じゃない?」
メグミがすぐ横を指さした。スラ子がすぐにランタンを近づける。メグミの言う場所は少し壁が出っ張っている。
「うーん……そうか?」
「ここだけ、周りと色が違うと思うんだけど。」
そう言ってメグミは直径30センチほどのいびつな丸い範囲を指でなぞる。
言われてみればそんな気もする。がよくわからない。
「とにかく掘ってみるか。」
「違ったらゴメンね。」
「初めてだし、失敗するくらいが丁度いいよな。」
俺とメグミは鉱石の周りをコツコツと掘ってみた。力加減が分からないのでかなり弱めに。それでも岩がぼろぼろと落ちてくる。結構脆いらしい。
「ちょっと私にやらせてくれる?もうちょっと強めにやってみるから、離れてて。」
「分かった。」
メグミはつるはしを大きく頭上に振り上げ、鉱石の上の岩を叩いた。細かい破片がバシッと飛び散る。
さらにもう一振り!とつるはしを叩きつける。なかなか様になっている。剣の扱いと通ずる所があるのだろうか。
「岩にヒビが入りましたね。メグミさん、もう少しだと思います。」
スラ子が言った。俺にはその岩のヒビが分からない。
次にメグミが振り上げたつるはしは岩に深々と刺さり、鉱石らしき塊がごろっと地面に落ちた。
「おおっ!さすが!」
「えへへ。……でも、これ本当に鉱石かな?」
転がっている鉱石は縦横30センチくらい。ただの岩と言われればそのように見える。
「持ち帰ればいいさ、表のドワーフ達に見せればいい。」
俺はその鉱石を袋に入れた。メグミが掘り当てた物なので、メグミが借りた袋に。
その場に置いていても良かったかもしれない。どうせ帰りにはここに戻ってくるのだ。
さらに少し進んだ所で、今度は俺が怪しい個所を見つけた。
周りよりも黒っぽいような……気がする。こぶし大で周りには少しヒビが入っている。
つかんで引っ張ってみたが、さすがに動かない。
「今度は俺にやらせてくれ。」
そう言ってつるはしを振るった。何度か岩壁を叩くと鉱石がグラッと揺れた。つかむと今度は抜ける。
ちょっと細長い石が取れた。手に取って見ても、やっぱり鉱石だという確証はない。
「やったね!カヒト」
メグミがほめてくれる。
「ああ、小さいけどな。」
「マスター、私も鉱石らしき物を発見しました。確認していただけますでしょうか。」
「お、さすがだな。」
スラ子の言う鉱石らしき物は俺のすぐ横にあった。
俺がつるはしを振るっている間、メグミがもたれ掛かっていた出っ張りだ。
下から突き出ており、高さは1メートル強。上を斜めに切り落とした円錐型をしている。
俺もその出っ張りには気が付いていたが、邪魔だなと思っていただけで鉱石とは気が付かなかった。
「マスター、いかがでしょう。」
「うーん……メグミはどう思う?」
「私は、鉱石だと思うな。気付かず腰かけてたけど。」
「じゃあ掘ってみるか。しかし……掘り出せたとしても床に大穴が開くな。それに重すぎて運べないだろう。」
「出っ張ってる部分だけ砕いて、切り取れるかな。」
「なるほど。鉱石自体を砕くなって言ってたけど、この場合は仕方ないな。」
やってみた。
下からの出っ張りなのでつるはしをしっかり振り下ろせる。壁を掘るよりはやり易そうだ。
しかし簡単なわけではなかった。壁の岩とは比較にならない硬さ。適当につるはしを当てるとはじき返されてしまった。
「なるほど、他の岩と硬さがまったく違う。やり方を考えないと何ともならんな。」
先ずは縦に真っ二つに割ってみる事にした。
つるはしの先で鉱石にガリガリと線を引き、線に沿ってつるはしを打ち込み溝を作る。
上手くいけばその溝に沿って鉱石は割れるだろう。
昔見たテレビでは10センチ位の間隔で穴を開け、クサビを打ち込んで岩を割っていた。しかしクサビもハンマーも無いからしょうがない。言えば貸してくれたのだろうか。
これは非常に時間がかかった。途中で休憩をはさみ、スライム団子と水で昼食にした。
「考えたら、食べ物も水も買ってくるべきだったよね。スラ子ちゃんのおかげで苦労しないけど。」
「俺も、スラ子にスライム団子をもらうのが当たり前になってた。頼りすぎは良くないよな。」
「私はもっと頼って頂きたいくらいです。つるはしも振ることができるならお役に立てますのに。」
「スラ子は本当によくやってくれている。いつもありがとう。」
スラ子は引っ張る力は強いが、重いものを支えられない。それに、つるはしまで自在に扱われると俺の立場が無い。
「ランタンの油はどのくらい残ってるかな?」
「残りはおよそ3割といった所でしょうか。」
「じゃあ、急がないとね。」
休憩はあまり長く取れなかったが、食事が終わるとすぐに作業を開始した。
最も、急がなくてもスラ子の助けが無いと、この横穴には入れない。他人に横取りされる心配はないだろう。
なんとか縦に割るための溝ができた。次はこの溝に力いっぱい打ち込みひび割れを起こさせる。
俺とメグミは鉱石の両側に立ち交互につるはしを振るった。俺は5回に1回は溝から外れた所に打ち込んでしまうが、メグミは正確に一点に集中している。
何度か打ち込む場所をずらしながらつるはしをたたきつける。
「マスター、メグミさん。ランタンの油が切れたようです。予備のコックを開きます。」
「くそっ!もう少しだと思うんだが!」
「カヒト、あと5回……10回だけ!打とう!」
「よしっ!」
ガツンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガッ!ガンッ!……
不意に、つるはしが深くめり込んだ。同時に鉱石の塊が俺の方へ転がってくる。
「マスター!危ない!」
俺の足を押しつぶそうとしていた鉱石の塊が横に軌道を変えた。スラ子が引っ張ってくれたようだ。
「おおっ、ビビった。……ナイス、スラ子。」
「やったね!カヒト!」
「ああ。お疲れ様、メグミ、スラ子。」
鉱石の塊は思ったより小さかった。出っ張り全体から見ると5分の1位だろう。ひび割れが真っすぐ下に走らずかなり斜めになったのが原因だ。
それでも持ち上げるのがやっとだ。これ以上でかい塊が取れても扱いに困っただろう。
結果オーライ。
「さて、急いで帰らないと」
「うん。」
最後に取れた物も含め、鉱石は登ってきた縦穴に落とす事にした。
下に人がいないか声をかけて確認。スラ子も誰もいないと言ってくれる。
つるはしも落っことそうかと思ったが、借り物だし乱暴な扱いはやめた。




