ドワーフ3人組
元祖バクバク亭で食事を楽しんでいると、少しずつ店は混み始めてきた。
俺たちはぬるい水を飲みながらギルドで貰った街の地図を広げ、明日の話をする。
「鉱山は3か所か。どこに行ってもいいけど。」
「無難なのは一番人気のここかな?グ・エルド。大きいし。それだけ実入りが多いって事だよね。」
「ああ。こっちのは危険らしいしな。だから人気が無いんだろう。初心者の俺としては避けたいな。」
3か所とも昼間に覗いてきたので場所はわかる。一番人気はグ・エルド鉱山。人がごった返していた。
それとは対照的なカプフェル鉱山は入口にテントが一つきりだった。近づきがたいほどの人気のなさ。
グ・エルドは人が多すぎな気もしたがその方が安全ではあるだろう。
「グ・エルドはお勧めしねーぜ、お二人さん!」
突然、隣のテーブルから声を掛けられた。そっちを見るとがっしりした体格の3人組がこちらを見ている。
チョッキのような服からごつい肩が出ている。腕も太い。
どうやらドワーフらしい。皆立派な髭面だ。そのうち一人は女性のようだが。
3人共、その腕に巨大なジョッキを持って、ごくごくとあおっている。酒の匂いだ。
「そこはアコギな商売をする連中の縄張りさ。まあ、人が多いからそれでやっていけるんだろうが。」
「冒険者を見下してるのさ。あたしゃ、ああいうのは好かないね。」
こっちのテーブルに近い赤ら顔の男と女がそう言うと、残りの一人が大きくうなずいた。
「その分、安全なんじゃないか?」
俺が尋ねた。偏見はあるようだが、話を聞いて損はないだろう。
「お前ら、冒険者だろう!危険に飛び込んでナンボの商売!」
「リスクを冒すだけのリターンがあるならいいがね……。」
「リターン!あるさ!どこにある?!」
赤ら顔の声が一段と大きくなる。
「「カプフェル!!」」
残りの二人が声をそろえた。……練習してたのか?
「カプフェルって、あそこだよね。あの……」
メグミがつぶやく。「誰もいなかった所」とは言わなかったが。
「昼間見てみたが、あそこには誰もいなかったぞ。」
しかし俺は言った。
「いたさ!入口にな!」
「……ひょっとしてテントにいたのって。」
「俺たちだ!」
……。
昼間見たときは、正直置物かと思った。まったく生気のない顔をしていたので。
そのせいもあって近づけなかったのだ。
俺とメグミは思わず顔を見合わせた。
「えーと……リターンはなんだ?」
「聞きたいか!よっしゃ!言ってやれっ!」
赤ら顔が吠える。
お前が言うんじゃないのか。心の中でツッコんだ。
「人が少ないからね。鉱石取り放題よ!」
女が言う。
「見つかれば。」
奥の男が言葉少なに言う。無口な男だ。
「クリスタルバットの宝石を手に入れられれば当分は遊んで暮らせるよ!」
女が言う。
「宝石を持ったコウモリは殆どいないけど。」
無口な男が言う。
「もし鉱石が見つからなかったら道具のレンタル代は取らないよ!」
女が言う。
「損はしないけど、得もしない。」
無口な男が言う。
「どうだっ!」
と赤ら顔が締めた。
俺とメグミはまた顔を見合わせた。
どうだと言われても……
「よし!わかったっ!そんなに言うなら仕方ねえっ!」
「酒の呑み比べで決めようじゃないかっ!」
と、赤ら顔と女が言い出した。
いやいや。俺は何にも言ってないし……何を決めるつもりなんだ。
と困っていると。
「お前らが負けたら明日はカプフェルで採掘しなっ!こっちが負けたら道具のレンタル代はずっとタダだっ!」
赤ら顔がやっと説明らしいことを言ってくれた。
……要するにどっちにしろカプフェルに行けって事じゃないか。
「マスター。メグミさんは、カプフェル鉱山でいいと言ってます。」
スラ子がささやいた。メグミはスラちゃんにだけ聞こえるように言ったのだろう。他の人がいても内緒の話ができるのは便利だ。
ドワーフ3人組は愉快な連中だ。俺も同意見だったので別に勝負する必要はなかったのだが。
「いいだろう!その勝負、受けたっ!」
俺はドワーフたちに負けない声で吠えた。
「ええ?!カヒト!大丈夫なの?」
「ああ。俺は酒に強いんだ!」
嘘だ。俺は酒に弱い。
しかも呑むと必ず頭が痛くなるので普段は控えている。しかし俺には考えがあった。
「よっしゃ!心配するな!酒代は俺が持ってやる!早速始めるぞ!おーい!酒だ!酒もってこい!」
「待った!やるなら一番強い酒で勝負だ!量はあんたらほど呑めないからな!それにその方が手っ取り早いだろ?」
「ひ、火酒か……いいだろう!おーい!火酒だ!2本!」
「はーい!ただいま!」
ウェイトレスがすぐにお盆を運んできた。徳利くらいの壺と水差しが二つずつ。
ドワーフは椅子を一脚、俺たちのテーブルへ移しドスンと座った。
座ったのは無口な男。




