スライムは発電を試みる
スラ子の大きめの分裂体が視覚を得るために専念している。俺は何をしようか。
もう日が暮れそうだ。
そうだ、もしモンスターが襲ってきた場合、俺は戦わなければならない。はったり用のナイフはあるが。ちゃんとした武器が欲しい。
俺はテントの支柱用に拾っておいた1.5メートル程の木の枝を何とか木刀のようにできないかと考えた。
木の枝はなかなか硬い。これで殴られれば相当痛そうだ。
しかし木刀にするのは無理があるな。刃物がない。
拾った石で余分な所を折り取るくらいしか出来ることがない。
やってみると、ぎりぎり「ヒノキの棒」と言えそうなものができた。無いよりはましだ。
後は、焚火を焚いておいた方がいいだろうか。
昨日はいらないと思ったが、スラ子が視覚を鍛えているで助けになるだろう。
そう思ってスラ子に聞いてみた。俺の体を覆っている分や服になっている部分は普通にしている。
「マスターが良いと思うなら、そうしましょう。火の番が必要なら、私がいたします。」
というわけで焚火をした。スラ子に巨大な虫眼鏡になってもらい落ち葉に火をつける。集めた木の枝に燃え移るのに何度か失敗したが、焚火ができた。
スラ子は街で火に接していたので、特に驚きはないようだ。
火が周りの落ち葉に燃え移らないようにしてくれという、俺の頼みもちゃんと理解している。
日が暮れてきた。モンスターは火を恐れるのだろうか。
野生動物はむしろ火に興味を持って寄って来てしまうという話も聞くが。
モンスターの接近はスラ子に警戒してもらおう。
今回は日が暮れる前だったので虫眼鏡が使えたが、夜や曇りの日は無理だ。他に火をつける方法が必要だろう。街へ行けば火打石だとか、もしかしたらマッチが売ってるかもしれない。しかし、せっかくなのでスラ子の能力として開発してみたい。
スラ子は人の言葉が分かるようになり、話せるようになり、さらに今視覚も得ようとしている。スラ子自身も成長を感じているし、俺もスラ子を育てたいという気持ちが強くなってきている。
別に今やる必要もないかもしれないが、今日は疲れていないのでまだ眠くない。出来ることはやっておきたい。
火打石以外で着火……思いつくのは摩擦熱で火をおこすやり方。スラ子が木を持って擦る?それなら俺がやればいい。スラ子にやらせる意味がない。
そうではなく、スラ子の特性を生かした方法が無いだろうか。
断熱圧縮で着火する方法もあったな。空気を圧縮するとその分圧力、温度が上がるという原理だ。そういう着火器具があるという話は聞いたことがある。
やってみた。スラ子に筒状になってもらい、さらにその内径と同じ棒状になった部分を差し込み空気を圧縮する。がうまくいかなかった。
棒はぐにゃっと曲がってしまうし筒は膨らんでしまう。
硬さが足りない。やはりこれも今後の課題だ。
摩擦で火をおこす方法も試しておこうと思い、適当な木の枝でやってみる。スラ子にだけやらせるのではなく俺も試した。しかし俺も多少の知識はあるが実践してみたことはない。ナイフでくぼみを作るとか、棒の先端を削るとか出来ないのもあり、頑張れば何とかなる感じではないのでやめた。
一応、スラ子に理屈だけ教える。何とかしてくれるかもしれない。
次に考えたのは電気を使う事だ。高電圧を作り放電を起こせば、点火プラグになる。
まあ高電圧は無理として、とりあえず電気を起こせるか試してみよう。
動物は体内に電気が流れているのだ。スライムなら、それを操れるかもしれない。
「スラ子は体全部を動かせるから、全部筋肉と言っていいだろう。筋肉は電気を発生させているはずだから、スラ子は全体で電気を作れる筈だ。」
「はい!ですが、そうであれば今も電気を発生させているんですよね。電気というのはビリビリしびれるそうですが、マスターは大丈夫なのですか?」
「今はビリビリしていない。それは発生している電気が互いに打ち消しあっているからだ。電気には向きがある。その向きを揃えてやるのがポイントだ。」
自分で言っていて、どの程度正しいのか分からない。しかしスラ子には出来ると信じ込んでもらおう。
「電気が発生したら、それこそ俺が感電してしまうからな。俺の体を覆っているもの以外で電気を作ってくれ。」
「はい。……確かに何かの力が流れているのを感じます。ですが、直ぐに拡散してしまいますし、地面の方に流れてしまいます。」
……もう出来たらしい。いや、それが本当に電気なのか、確かめようもないが。
「うん。流したくない方には、電気が流れない絶縁体で絶縁するんだ。一番身近な絶縁体は空気だな。」
「空気で囲むということですね。……やってみます。」
スラ子は今、大まかに3体に分裂している。
ひとつは俺を覆っているものや、服やテントになっているもの。
もうひとつは視覚を鍛えているもの。視覚担当だ。
それらの余りが今、電気を起こそうとしてる。
大きさは大体全体の4分の1くらい。電気担当。
焚き火を囲んで向こう側に視覚担当、俺の隣に電気担当がいる。
電気担当がどんどん細長く、高くなっていく。5メートルほど垂直に立ち上がり、まるで鎌首をもたげた大蛇のようになった。
「いい感じです。でも、電気がどんどん地面に流れてしまいますね。」
「電気は、最後は地面に流れるんだ。それはそれでいい。つまり、電気担当のスラ子と地面との間に電気を流したい対象を置けばいい。」
「電気を流したい対象……何に電気を流せばいいのでしょうか?」
「とりあえず。……敵かな……モンスターに電気を流せば、つまり感電させれば倒せるかもしれない。」
自分で試してみるのが一番だろう。
「一度、俺を感電させてみてくれ。効くかどうか、試してみよう。」
「でも、マスターに効いてしまったら困ります。」
「そうだな。だから、すごく弱くしてやってみよう。あと、電気が俺の胴体を通らなければ大ごとにはならないから。」
「すごく弱く……これくらいでしょうか?」
電気担当が人の頭くらいの大きさにするすると縮んだ。そのサイズで電気を起こすということだろう。
おそらくスラ子の電気の作り方というのは電気ウナギに近い。電池を直列に並べているようなものだ。サイズが大きいということはその分沢山の電池を並べることになり、電圧が高くなる。
加減が分からないが、最初は小さすぎる位でいいだろう。
「もっと小さく、小指の先くらいの大きさから試そう。」
俺は自分の太ももを指で示し、そこに電気を流すようにスラ子に言った。
※『気配察知』はすでに取得済みでしたが、忘れてたので追加しました!
2021/12/26 改行と一部表現を修正
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