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ザンギエフの冒険 その1

 俺の名はザンギエフ。人間の魔法使いだ。


 習得に長い時間のかかる魔法を扱う魔法使い。

 寿命の短い人間がそれを目指すことは少なく、才能ある者はさらに限られる。

 俺はそんな数少ない人間の魔法使いだ。

 あるものは俺を羨望(せんぼう)のまなざしで見つめ、またある者は(あわれ)みの視線を向ける。

 どちらも俺には興味が無い。

 俺の興味はいい女とうまい酒。そしてマナの起こす不可思議な現象にのみ向けられる。


 そう、俺は別に魔法使いになろうと思ったわけでは無い。

 マナの魅力に取りつかれ、その研究に没頭(ぼっとう)しているうちに、気づいたら魔法使いになっていた。

 自慢(じまん)でも、自虐(じぎゃく)でもない。

 魔法使いなど、変人ばかり。俺もそんな変人の一人だという話だ。


 自分語りはこれくらいにしておこう。

 話は、俺がブロートコーブ南の街道を外れた時点から始めさせてもらう。


 クレイ達には悪いと思ったが、大気に広がる違和感が俺にはどうしても見過ごせなかった。

 研究者としてのサガだな。

 (やぶ)だらけの森を抜け、ようやくたどり着いたマナ溜まりの中心には古い遺跡のような建物があった。

 それだけではない。

 道中で見かけたグラマーな女性との再会を果たしたのだ。……まあ、男連れだったのは少しがっかりしたが。

 ほとんど気にしていなかったが、確かに道中見かけたときも男と子供を連れていた。

 子供はサイクロプスの血を引いているようで、単眼だ。別に夫婦と子供という事ではないと思うが……。


 妙な事に、3人は建物を前にしてのんきに飯を食っていた。

 周囲の警戒もせずピクニック気分とは……。よっぽどのバカか、そうでなければよほどの大物(おおもの)に違いないと思ったものだ。まあ、後者だったと認めざるを得ないがな。


 3人の話を聞くと、建物はダンジョンに間違いないようだ。俺は居ても立っても居られなくなり、なんの準備もしていないにも(かか)わらず、ダンジョンの入り口に立っていた。


 入り口は開かなかった。結果的にはよかったのだが。

 俺はほどほどのモンスターであれば倒せる魔法がある。それ以上の相手には近づかない処世術(しょせいじゅつ)も持ち合わせているつもりだ。

 しかし、その時は勢いに任せてダンジョンに突入する所だった。

 もしかしたら、メグミの手前、いい所を見せようとしていたのかもしれん。

 まだまだ俺も若い。と言うべきか、年甲斐もないと言うべきか。


 ダンジョンの入り口を開ける術がない事に気づいた時、ようやく俺は冷静さを取り戻せていた。

 まずは当初の目的地のブロートコーブへ行く。そこでダンジョン攻略の準備を整えるのが、俺の為すべきことだ。


 ブロートコーブまでの道中については……(はぶ)かせてもらうか。

 カヒトのヤツは本当に魔法使いなのか。気にはなったが、あまり追及するとツムギがうるさいからな。


 ブロートコーブで冒険者を(つの)りダンジョン攻略へ行くつもりだった。

 が、時期が悪くクエスト目的の冒険者がいない。そもそも腕に覚えのある冒険者は、あえてこの街を訪れようとしない。

 しかし、ダンジョンの話がギルドマスターや町長の奥方に伝わると、調査隊を出すことにはなった。俺は詳細な場所を知る者という事で、そのチームに参加する。

 チーム構成は俺、ギルドマスターのマリー殿、町長の奥方ルイ殿、彼女は凄腕の魔法使いだという。そして、町長自身もダンジョンへ行くという話になる。

 よそ者である俺が言うのもなんだが、いいんだろうか。町長は領主でもある。そんな重要人物を、どんな危険があるか分からないダンジョンへ行かせて。


 俺の心配をよそにマリー殿とルイ殿はのんきなものだ。そして、一番のんきなのは町長。どう見てもただの若い人間だ。

 事前に知らされていなければ、むしろ町人だと思うくらい普通の青年。危険なだけでなく、戦力になるとも思えないが。


 一応、指摘はした。万一の事があったらどうするのか、と。

 返答は爆笑だった。

 まるで、俺がいかにも面白い冗談でも言ったかのような……。

 まあいい。心配ないというのなら、心配しない。

 別に、不貞腐(ふてくさ)れてなんかいないさ。

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