スライムは液体窒素を作れる
俺の目の前で鉄スライムが集まってきた。
見ているうちに様々な突起が現れたり消えたり。大きな球体が作られたりしている。どんな形や仕組みがいいのか、試行錯誤しているらしい。
外から見ても金属の塊があるだけにしか見えないが、中では空気を圧縮し始めているのだろう。金属が段々熱くなってくる。そばに立っているだけでもすごい熱を感じる。
「マスター。熱が発生してきました。この熱を干し肉作りに活用してはどうでしょうか。」
「なるほど良いな。直接肉を置くと、焼肉になっちゃうほど熱いから、風を当てて熱風を肉に吹き付けるといいかもな。」
「はい、マスター。」
ついでだ。モーターに羽根を付けた、扇風機も教えておこう。
液体窒素か。ほんとにできるのかな。よっぽど強力な空気圧縮機じゃないとそこまでいかないわけだが。
「マスター。空気の一部が液体になりました。」
「おお!もうできたのか。……一部って、どのくらい?」
「ごくわずかです。1%も無いくらいですね。」
「それは多分、二酸化炭素だな。空気中にほんの少しだけある。そのまま続けていると、次に20%くらいある酸素が液体になる。最後に液体になるのが、残りの80%の窒素だ。その窒素の液体を作ってほしいから、二酸化炭素と酸素の液体は分けてほしい。そういう事は出来るか?」
「はい、マスター。可能です。」
冷蔵庫自体を作る。こっちはただの箱で大丈夫だ。
ただ、断熱性能が必要だが、それはスラ子は最初から得意だ。ずっと俺たちの体温を逃がさないようにしてくれている。
出来れば真空断熱も教えたいが、今はそこまで手が回らない。
液体窒素で冷蔵庫内の温度を下げ、その際気化した窒素は、また圧縮して液体にする予定だ。まあ、窒素は空気中にいくらでもあるので、使い捨てでもいいんだけど。
「マスター。液体窒素が出来ました。まだ、ほんのわずかな量ですが。」
「出来たか。やっぱりスラ子はすごい。」
「ありがとうございます。ちなみに、あらかじめ窒素だけより分けてから圧縮した方がよいかと思いまして、そうしましたが、良かったでしょうか?」
「それはそうだろうけど……どうやってより分けるんだ?」
「私には窒素と酸素、二酸化炭素の違いが分かりますし、分離させることができます。」
「おお……すごいな。わかった。スラ子の考えたようにやってくれ。」
「はい、マスター。」
「作った液体窒素を、液体のまま保存しておけるかな。」
「それが少し問題です……。すごい勢いで膨張しようとしていますので。」
「ああ、しっかり断熱して、冷たさを保つようにしてくれ。……後は、ボンベがよっぽど頑丈なら抑え込んでおけるだろうけど。」
「現状ですと、ボンベが相当分厚くなってしまいます。ただ、現在マスターが以前に教えてくださった、合金を色々と試しています。より強い金属が出来るかもしれません。」
「すごいな。それが成功すれば、より小さいボンベが出来る。」
「はい。あと、提案なのですが、今後は料理などで加熱が必要な時は、液体窒素を作るときの熱を利用することにしませんか?」
「……なるほど。電熱器はただ熱を発生してるだけだが、空気圧縮機なら液体窒素を作りつつ、熱も発生させる。一石二鳥というわけだ。」
「はい、マスター。」
「うん。そうしよう。液体窒素は、当面は肉を冷やす分があればいい。料理のタイミングで、また追加生産する形にしてくれるか。」
「了解しました。」
冷蔵庫は問題なくできた。当然、冷凍も出来る。
オオニワトリの肉は、胸肉はすべて燻製にするようだ。
生の肉を少し冷蔵庫に入れておく。数日以内に食べる用。
残りは液体窒素で急速冷凍しよう。オオニワトリの肉の細胞を壊さず。鮮度抜群のまま長期保存が可能になる。
俺がスラ子とそんな話をしている間に、メグミとツムギはオオニワトリの肉を焼いてくれている。
焚火を起こし、串焼きにしている。
塩胡椒で味付けをすると、かなりうまい食事になった。ブロートコーブのお店や宿で出た食事のように手間のかかったものではないが、シンプルに素材の良さを味わえる。
食事の後、スラ子が窒素を分離できるという話を聞いて、もう一つ試したい事が出来たので相談をする。
「スラ子。水と言うのは、水素と酸素がくっついて出来ている。この二つを分けることは出来ないかな?」
「水を分離するのですか……。出来るでしょうか。しかし、片方は酸素なんですね。それは違いが判るかもしれません。」
「難しいとは思う。もしできればありがたい。」
電気分解すれば分離は出来るだろう。しかしスラ子なら、何か裏技的な方法でやってくれるのではないだろうか。
「マスターのお望みであれば何でも致します。ですが、少し時間が掛かってもいいでしょうか?」
「ああ、もちろん。……スラ子には岩に偽装した部屋になって貰い、周囲の警戒もしてくれてるのに、更に頼みごとをしてしまって申し訳ない。」
「気にしないでください。私としては、更にマスターのお役に立てることがうれしいのです。」
「うん。いつも助かるよ。」
「スラ子ちゃんの出来る事、もっと増やすの?」
と、メグミが言う。
「そうだな。うまくいけば、新しい攻撃方法が出来るはずだ。」
「電撃とかものすごいのに、もっと別な事も出来るようになるんだ。すごい。」
と、ツムギも言った。
「さすが、『なんでもできるスライム』だね。」
「空気圧縮機・扇風機」のスキルを獲得しました!




