表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
118/320

治療と馬の離脱

「っぐうぅっ……。」

 男は腕を押さえてうずくまった。額には大粒の汗が浮いている。

「痛むのね?……カヒト!麻酔薬も!」

「分かった!」


 俺が馬車の方へ駆け出そうとしたとき、スラ子が魔法薬の瓶を渡してくれる。

 すかさずメグミにパス。

 麻酔薬はメグミの歯の治療の時にほんの少し使っただけなので、ほとんど残っている。

 メグミはダメージ回復薬の時と同様に、麻酔薬を男の腕に振りまいた。


 真っ赤だった男の顔から、スッと赤みが引いた。とりあえずは落ち着いたらしい。

 しかし今度はどんどん青ざめてくる。

「……う、うう……。助かった……。」

 弱々しい声で、男が言う。

「……大丈夫なのか?」

 俺は男の顔を(のぞ)き込んで、(つぶや)く。

 男は目が(うつ)ろだ。目の前にいる俺に焦点(しょうてん)が合っていない。


「出血しすぎたんです。一命(いちめい)はとりとめましたけど……。」

 男を抱えている女性が言う。彼女は男の恋人らしい。

「一刻も早く、街でちゃんとした治療を受けないと。」

 と、メグミ。

「馬車に乗せて、ブロートコーブへ戻るか。」

 俺が言う。

「それでも時間がかかりすぎるよ。馬だけならともかく。」

「じゃあ、馬車の車体から馬を離して、馬に乗って戻る?」

 と、ツムギが提案(ていあん)した。

「それが一番速そうだ。でも、俺は馬に乗ったことが無い。メグミとツムギは?」

 二人とも首を振る。

「あ、あの。私は子供の頃から馬に乗っていました。」

 と、女性が言った。

「彼と一緒に馬に乗って走れるか?しかし、(くら)とか、馬具がないんだ。」

裸馬(はだかうま)でも大丈夫です。……でも、一頭しかいない馬をお借りするわけには……。」

「人命優先だ!」


 俺とメグミ、ツムギは急いで馬車に駆け寄り、馬を車体から外して男の元に連れてきた。

 男は、辛うじて意識はあるようだが、身体に全く力が入っていない。

 意外なほど重い男を、何とか馬に(またが)らせる。

 女性も軽い身のこなしで男の後ろに跨った。


「この先を道なりに行けばブロートコーブだ。走れば日が暮れる前には着くはずだ。」

 俺は北を指差して言った。

「あ、ありがとうございます。何とお礼を言ってよいか……。」

「礼はいい!急げ!」

 女性の言葉を(さえぎ)り、俺が言う。

 女性はこくんと(うなず)き、馬の手綱を操って前進させた。

 すぐに駆け足になった馬はすごい勢いで遠ざかる。あんな風に操ることが出来るのか。


 馬と二人が去った後、

「マスター、申し訳ありません。彼らを助けようと思ったのですが、間に合いませんでした。」

「私も、モンスターの姿が見えた時には、もうやられてて……。」

 スラ子とメグミが言う。

「スラ子たちのせいじゃないし、むしろあれくらいで済んだのは、みんなのおかげだ。」

「あの人、助かるよね?」

 と、ツムギ。

「ああ、あれだけ馬が速ければ大丈夫。」

 ツムギの頭を()でながら言う。


 俺はメグミが倒したというモンスターのそばへ行く。

 血だまりに横たわっているのは茶色の羽根に包まれた大きなニワトリだ。もしかしてコカトリスというやつだろうか。

「この子は、オオニワトリっていうの。」

 と、メグミが言った。そのまんまだったか。

(にら)まれたら石化するとか……そういう事は無いのか?」

「そういう事はないね。でも、まあまあ手ごわいモンスターだよ。」

 コカトリスはしっぽが蛇になってるんだったか。良く見ればこのモンスターのしっぽは普通の尾羽(おばね)だ。

「売れそうな素材は有るのかな。」

「羽根が売れるよ。矢羽に使ったり、羽根ペンにしたり。」

「そうか。じゃあ、(むし)っておくか。」

「私とメグミさんでやるよ。カヒトさんは、あっちを……。」

 ツムギはそう言って、馬車を指さした。どうにかしろという事だ。


 俺は車体だけが残された馬車の所へ行く。

 馬車から馬が失われた。車に例えればエンジンを持ってかれたようなものか。

 普通なら、もう動かしようがない。

 馬に乗った親切な人が通りがかるのを待つか、馬車をあきらめるか。

 どっちも無理な相談だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓↓↓クリックしていただくと外部のランキングサイトにて投票されます↓↓↓
ただし、外部サイトへジャンプしてしまうのでご注意ください

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ