次の目的地は港町ハーフェン
「じゃあ、私たちは報酬を受け取り次第、次の街に出発する?」
と、メグミが言った。
「ん?それでもいいけど……。もう少しこの街に居ても構わないぞ?」
「あれ?あ、そうか……。なんか、もう出発するような気になってた。」
「本来は、今頃港町に向かってるところだもんね。」
と、ツムギ。
「ハーフェンに行くのかい?」
と、マリーが言った。
港町ハーフェンは橋を架ける職人がいるという街だ。
「まだ、決めたわけじゃないですけどね。」
「この街から行ける場所っていうと、西に行くと中央都市があるよ。」
「中央都市、ですか。」
「うん。この辺りで一番でっかい街だよ。冒険者ギルドのクエストなんか、色々あるらしいね。そこを拠点にしてる冒険者も多いって噂を聞くよ。」
「俺は、港町が良いな。海に行きたい。」
「あ、私も。海は見た事ない。」
と、メグミ。
「私は見た事があったとしても、覚えてないけど。」
ツムギが言った。
「そうか。気を付けていくんだよ。それと、行く先のギルドで持て余してるクエストがあったら受けてやってよ。『なんでもできるスライム』さん。」
マリーはそう言ってウィンクする。
まだ呼ばれ慣れないな。
「ザンギエフも気を付けて。油断するなよ。」
「ああ、任せろ。見事にダンジョン攻略してやるさ。」
俺たちはギルドを後にした。
ルイがエンブレムや馬車を用意するのにどのくらいかかるのか分からないが、出発の準備はしておく。
買い物をしておこう。
俺たちの残金はあまりないが、町長かルイが街全体に通達してくれていたらしい。どの店に入っても代金は領主である町長に請求する事、購入した品はいったん町長宅へ届け、馬車に積み込んでおいてくれると言う。
そういう事なら、という事で、重すぎて断念していた買い物をする。
携帯食料を種類豊富に、日持ちする小麦粉や砂糖や香辛料、調味料をたくさん。あまり日持ちしないだろうけど、牛乳やバター、卵も少し買うことにした。
必要なものはそれくらいだ。武器防具類はツムギの分をそろえたし、魔法薬はバクバクの街で買ったものを、まだほとんど使っていないので、買い足す必要はない。
結局、消費してしまうもの以外はスラ子が変形してくれる。ありがたい事だ。
宿に戻り、夕食をいただく。
「この街は居心地よかったけど、また旅に出ると思うとワクワクするね。」
と、ツムギが言う。
「あ、私も。」
メグミが言った。
「俺もそう思う。なんとなく、旅路の方が気楽だ。」
「ね。楽しみ。」
「まあ、明日かどうかはまだ分からないが……。報酬を受け取り次第出発しようか。」
「うん。」
―20日目―
翌朝。
宿のカウンター係が、朝食を部屋へ届けてくれる。
「皆さま。町長からの伝言でございます。「報酬の件、準備できましたので宿へお持ちします」との事です。」
「そうなんですか。早いですね。」
「それだけ、重要案件という事でしょう。頃合いを見て、ロビーへ来ていただければ幸いです。」
「分かりました。」
朝食をとり、荷造りを終えてロビーに行くと町長とルイが待っていた。
「おはようございます。お待たせしまして、すみません。」
と、俺は挨拶をする。
「いえ、私共も今来たところですから。……さて、何度も申し上げていますが、改めて、立派な橋を架けていただきありがとうございます。心ばかりの報酬を用意いたしましたので、お納めください。」
「ありがとうございます。」
「まず、こちらが我がブロートコーブ領のエンブレムです。」
町長がそう言って俺に渡してきたのはワッペンだ。
10センチくらいの布に丁寧な刺繍で模様が描いてある。中央には杉のようなシルエットの樹木と、クワと槍が組み合わさったマークが配置され、それを縁取るように複雑な模様があしらわれている。簡単に偽造できないようにだろう。
おそらくこれがブロートコーブのマークなんだろう。木とクワは分かる。農業が盛んな街だから。ただ、槍だけがちょっと違和感だ。
マークの下には、金糸で何か文字が刺繍されている。
スラ子によると、俺たちのパーティーネームが書いてあるのだそうだ。
「すごいきれいだね。」
「ステキです。」
横からのぞき込むメグミとツムギが言う。
「既にルイから説明があったかと思いますが、領内、つまりこの街のお店なら大幅割り引きで物を買っていただけます。それにウチの農作物は近隣の都市では有名ですから、ブロートコーブの後ろ盾があるとなれば、皆さんをぞんざいに扱う事は出来ないはずです。ただ、ウチの事を良く思っていない輩もゼロではありません。扱いには注意してください。」
「了解です。」




