マッサージと報酬額
おいしい食事を食べ(流石に半分以上残した)、ベッドに入る。
特に疲れてはいないし、まだ体が痛いのでなかなか寝付けない。
「カヒトさん、眠れないの?」
と、ツムギが声をかけてきた。
「ああ、ちょっとな。」
「私がマッサージしてあげようか?」
「いいのか?じゃあ、頼もうかな。」
「うん。任せて。」
俺はベッドにうつぶせになる。ツムギは俺の背中にまたがり、小さな手でマッサージしてくれる。
確かに気持ちいい。が、どうもツムギは俺が痛がるのを喜んでいる感じだ。
痛いポイントを押され、俺がのけぞると背中から妙に楽し気な声が聞こえてくる。
「あ、ゴメンなさい。ここ?ここが痛いんですか?ねえ、カヒトさん。痛い?」
「いたたた……。ツ、ツムギ……。もう少し優しく……。」
「もー……。カヒトさん、あんまりおっきい声出すとぉ、メグミさんが起きちゃいますよー?」
耳元でそんなことをささやくツムギ。
「そんなこと言っても……。痛っ……っっっ!」
「クスクス……。ほーら。がまんがまん。おとこのこでしょー……。」
「み、耳元でいうの……やめて……。」
ここぞとばかりにSっ気を発揮するツムギ。
ツムギがザンギエフをイジッているときは面白がって見ていたが、いざ自分がされると、ちょっと倒錯した快感を感じてしまう。
その後も俺はツムギのマッサージを受け、痛がり疲れて、いつの間にか眠ってしまった。
「もう、おねむなのー?クスクス……おやすみなさい、カヒトさん。」
夢うつつの中で、そんな声を聴いたような気がする。そして、ほっぺたにキスをされたような気がする。
—19日目—
翌朝。
体が軽い。筋肉痛がこれ以上長引かなくてよかった。
「昨日マスターがお眠りになった後も、ツムギさんがマッサージを続けてくれたおかげでしょうか。」
「ちょっ、スラ子さん!それは秘密だって言ったのに……。」
「そうなのか、ツムギ。」
「べ、別に……。いつも色々お世話になってるから……。」
「ありがとうな。」
「……。」
真っ赤になっているツムギの頭をポンポンとなでる。
「……。仲が良くって、ほほえましいねー。」
扉の所で、俺たちのやり取りを見ていたメグミが、ほっぺたを膨らませて言った。
「メグミ。えっと……おはよう。」
「フンッだ。……おはよ。支配人さんが、「朝食は下の食堂でどうですか」だって。」
「町長とルイさんもおられるようですね。」
と、スラ子が言う。
「分かった。すぐに行くよ。」
「おはようございます。良く眠れましたか?」
食堂に行くと、町長がそう言って迎えてくれた。
宿の支配人と、スラ子の言う通りルイもいる。
「おはようございます。おかげでぐっすり眠れました。」
「それは良かった。朝食のご用意をいたしました。すいませんが、ご一緒させてください。」
と、支配人が言った。
「もちろん。」
「改めて、立派な橋を架けていただき、お礼申し上げます。この街の抱える問題の一つが解消されました。」
町長が言う。
「報酬の件ですが、私とルイでちょっと話した限りでは、金額にして5000万ゴールドほどが妥当かと……。」
「!!!」
ご、ごせんまん???
「私は、1億ゴールド以上の価値が有ると思うんですよ。でも……。」
ルイが、こともなげに言った。
いちお……。
「流石に、そんな大金は用意できません。まあ、大店から借りるという手もありますが。」
「ちょ、ちょっと待ってくださいっ。私たちはそんなつもりでは……。」
と、俺が慌てて言った。
「そうです!いくら何でも、多すぎますっ。」
と、ツムギ。
メグミはあまりの事に呆けている。
「ははは。まあ、落ち着いてください。皆さんにとっては、それほどの事でもないかもしれません。しかし、実際ルイの言う通り1億以上の価値が有る事をしていただきました。」
と、町長が言う。
「今までのつり橋は、いつ落ちてしまうか不安という事もありましたけど、幅が、小さな馬車がギリギリ通れる程度でしたわ。皆さんの架けられた橋は、普通の馬車がゆうゆうすれ違える大きさで、しかも石造りの橋。」
と、ルイ。
「あのつり橋がネックで、これまで港町とはあまり交易が盛んではなかったのです。ですが、これからは違います。港町の海産物をこの街へ。この街の農作物を港町へ、更に遠くの街に……。得られる収入は計り知れません。」
「そういう訳ですから、遠慮なさらないでくださいな。」
「……ありがとうございます。ちなみに、5000万ゴールドって、量にするとどれくらいに……。」
「そうですねえ。そこにある酒樽に金貨を詰めて、1000万ゴールド。それが5つ分といったところですね。」
町長はロビーの隅に積まれている1メートルくらいの、やや小ぶりなお酒の樽を指して言った。




