スライムは通訳ができる
この世界で初めて出会った人間、メグミと再会し、俺たちは色々な話をした。
「もういっそ全部話してしまえ」と思い、俺が別の世界から転移してきた事も言ってしまった。
「メグミは、そういう人が他にいるか、知ってる?」
知らないそうだ。
しかしこの世界には電話もテレビもないようなので、メグミが知らないからと言って他の転移者や転生者がいないとは限らない。
メグミの話も色々と聞いた。家族が別の街にいる事。冒険者になるのを反対され、一人で飛び出してきた事。今いる街の事や、下宿している魔法薬のお店の事。
特にこの世界の事を聞いた。
この世界は間違いなく剣と魔法の世界だそうだ。モンスターが跋扈し、もちろんダンジョンもある。
モンスターはおおむね俺のイメージ通りの存在だ。積極的に人間を襲うとのこと。
しかし、すべての人間がモンスターの恐怖に怯えて暮らしているのかというと、そうでもない。
モンスターからは、高価だったり便利な素材が手に入ることが多いため、場合によってはむしろモンスターが人間の脅威に怯えているようだ。
冒険者は未開の地を開拓する者もいるが、殆どはモンスターを狩って素材集めをして生計を立てている。メグミもこのタイプの冒険者だという。
「冒険者はやっぱりパーティーを組んでいる方が有利なんだよね。その方が安定して活動できるの。」
「ふーん。メグミは、今はパーティー組んでないって事か?」
「うん。で、でもね。『ウチのパーティーに入らない?』って何度も誘われたんだよ。バカにしたもんじゃないでしょ!」
「別にバカにしないが。それはなんで駄目だったんだ?」
「うーん……なんかね……フィーリングかなぁ…… わたしが、『剣の腕は自信あるよ』って言っても、『戦わなくていい』とか言われるの。そんなのおかしいよね。じゃあ、わたし何すればいいの?って。」
「その、誘われたのって……男の冒険者に?」
「うん。男のひとばっかりのパーティーに『入らない?』って。あ、でも、一度女の子が一人いるパーティーに誘われたな。その時はその女の人が『絶対ダメ!』って言って、なしになったけど。」
つまりメグミをパーティーに誘った連中は、メグミを戦力として欲しかったわけではなく、可愛い女の子をそばに置いておきたかっただけなのだろう。
その気持ちは大いに分かる。
「まあ、パーティーは有利な事も多いけど窮屈なことも多いんだよね。行先とか、自分の自由にできないし。宿もパーティーメンバーと一緒なのが当たり前で、一人になれる事がないんだって。だから、別に無理してパーティーに入らなくてもいいかなって。」
「ふーん」
「一人だと野営できないのが困るよね。夜は、一人は見張りで起きてないといけないから。ずっと寝ないってわけにはいかないもん。」
「確かにそうだなぁ……。あ、でも、俺この二晩ぐっすり寝ちゃったな。やっぱりモンスターに襲われる危険があったよな……」
「マスターがお休みの時も、私が周囲を警戒しております。もしモンスターが襲って来れば、起きて頂かなければいけませんが。」
「そうか。スラ子が見張っててくれたのか……ありがとう。スラ子。」
「マスターのお役に立つことが私の喜びです。」
「わー。すごいね。私だと野営が無理だから、街の近くでしか冒険できないんだよね……。」
「俺とパーティー組むか?」と言いかけて、やめた。俺をパーティーに入れても、メグミにメリットは無いしな。
その代わりに俺は言った。
「まあ、焦らなくても、そのうちいいパーティーが見つかるさ。」
「うん。……そうだね!」
話込んでいるいるうちに随分と時間がたった。まだ明るかったが、冬の一日は短い。
「わっ。もうこんな時間。そろそろ戻らないと。」
「ああ、引き止めちゃって悪かった。キノコも大して集まらなかったか。」
「なに言ってるの。こんなに採れたのは初めてだよ!」
メグミは無邪気な笑顔で言った。
「じゃあ、ヒールマッシュルームも持って行ってくれ。もし売れたら、また会ったときに代金を貰えればいいし。」
俺は、布袋(になったスラ子)に入ったキノコをメグミに渡す。
「えっ?カヒトも一緒に街に行くんじゃないの?」
「うーん……このメガネが怪しまれるなら、行けないなぁ。それに金もないから、宿にも泊まれない。」
「キノコを売ればお金になるよ。もしダメでも、おばあちゃんのお店に泊めてもらえるようにお願いしてあげる。」
「ハハハ。ありがたいが、俺もここでやることがある。」
「えー残念……でも、分かった。ちゃーんと売って来るから、また会ったときにね。」
「ああ。頼むよ。」
「安心して。スラちゃんがいるから、持ち逃げなんて出来ないから。」
「最初からそんな心配してないって。気を付けてな。メグミ。」
「うん。カヒトもね。スラ子ちゃん、スライム団子、ご馳走様。ふたりとも、またね!」
メグミはそう言って街へ帰っていった。
メグミが行ってしまった後、スラ子に聞いた。
「ところでスラ子、なんで通訳なんて出来たんだ?つまり、この世界の言葉はいつ覚えたの?」
「メグミさんにくっついていた私が学習しました。昨日、街へ偵察に行った分裂体の私は言葉というものが分かっていましたので、合流して街の沢山の人が話すのを聞いたのです。偵察に行っていた私は、昨日の夕方には帰ってきていたんです。夜のうちに翻訳作業は済ませました。」
「そうだったのか。さすがスラ子だ。助かったよ。」
「はい。マスター」
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2021/12/26 改行と一部表現を修正
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