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スライムは橋になれるし、石材加工もできる

 朝食を食べたら出発する。

 渓谷は近いだろうと思っていたが、実際すぐに川に突き当たった。

 俺たちが歩いている道は真っすぐ谷へ向かい、そこには確かに、ほぼ落ちているつり橋があった。

 元は何本ものロープを向こう岸に渡していたのだろう。今はギリギリ一本のロープだけが、向こうの柱と繋がっている。かろうじて、数枚の踏板がそのロープにぶら下がっている。

 岸に打ち込まれて、しっかり立っているべき柱はすべて傾き、何本かは完全に地面から抜け、倒れていた。


 バクバクのつり橋付近は垂直の崖だったが、こちらはやや傾斜が(ゆる)い。Vの字に切り込んでいる感じだ。


「スラ子。向こうへ渡れるかな。」

「はい。昨日マスターがおっしゃっていたように、ロープを掛けようかと思っていましたが、私が即席(そくせき)の橋になりましょう。」

 スラ子はそう言うと、俺たちの足元から幅2メートルほどの足場が向こう岸に向かってズズズッと伸びていった。

「スラ子。それは流石に難しくないか?」、

「いえ、踏ん張れば、いけます。」

「それなら、下の崖から、足場を支えるための柱を伸ばしてみたらどうかな。」

「はい、マスター。」

 足場の下あたりの崖から、まるで木が生えてくるかのように柱が斜めに生えてきた。それが足場の底面まで延び、支える。

 危なげなく、足場は20メートル先の向こう岸まで届いた。

「流石だ、スラ子。立派な橋が架かったな。」

「お()め頂き光栄です。」

「すごい!」

「スラ子さん、すごいです。」

 メグミとツムギも絶賛だ。


 スラ子の橋に乗ってみる。小揺(こゆ)るぎもせず、俺たちを支える。全く不安なく渡れる橋だ。

「ホントにすごいね!スラ子ちゃん。これなら、橋を架ける職人さん、呼ばなくてもいいんじゃないの?」

「まあ、スラ子にここでずっと橋になっててもらう訳にはいかないからな。」

「はい。私にはマスターにお仕えするという使命がありますから。……ですが、私達で橋を架けることが出来れば、手間は省けますね。」

「材料を集めてという事か?それは……。」

 俺たちで出来るのなら手間が省けるのは事実だ。

 スラ子がやりたいと言う事はやらせてあげたい。それに、俺もちょっとそう思っていた。


「よし。橋を架けよう。」

「はい。やりましょう。」

「でも、どうするの?」

「街に戻って、ロープを買ってくる?」

「いや、つり橋では結局何年かしか()たないだろう。別の種類の橋にしよう。」

「別の種類ですか?」

「ああ、『アーチ橋』にしたら良いんじゃないかと思うんだ。」

「アーチ橋?」

「つり橋は、両岸に柱を立て、ロープをかけて、いわば両岸を引っ張る形だ。アーチ橋は、両岸を突っ張る形になるから、崩れやすい崖でも長持ちすると思う。」

「よくわかんないけど……。私は何をしたらいいかな。」

「建材は石を使いたいから、ある程度硬い岩を探してほしい。見つけてくれるだけでいいから。」

「じゃあ、ツムギちゃんと私は、岩を探すね。」

「ああ、頼む。」


 俺はタブレットに絵を描いて、スラ子にどんな橋を架けたいのかを教える。

 アーチ橋とは、文字通り円弧(えんこ)になっている橋の事だ。橋に掛かる荷重や橋自体の重さをアーチを通して両岸に伝える構造。

 そして、人の通る通路をアーチの上に乗っければ、太鼓(たいこ)橋のように「上って降りて」をしなくて済む。


 実際の所、今スラ子が掛けてくれた橋は、ほとんど目的のアーチ橋と言っていい。

 崖からはたくさんの柱が生え、それがきれいなアーチを描いている。

「では、今の私を、石に置き換えればいいのですか。」

「そうだ。そういう事は出来るか?」

「……私が周囲にある石を取り込んで、橋の形に再構成するというのは……申し訳ありませんが不可能です。石を取り込めば、それは私の一部になるだけですし、時間もすごく掛かってしまいます。」

「うん、まあそうだよな。普通に石材を用意し、組んでアーチを造ろう。スラ子なら石を加工する事も出来るはずだ。」

「私から言い出したことですが、出来るでしょうか……。」

「出来る!スラ子はすごい!」

「マスターがそう信じてくれるのなら、私も自分のすごさを信じましょう。頑張ります。」


 メグミとツムギが見つけた岩を四角く切り出す。

 スラ子には鉄スライムで円盤を作ってもらい、それに硬い石スライムの粒をまとわせる。石材切断用のカッターだ。

 石材を切っていると、摩擦(まさつ)熱で鉄スライムが溶けるほどの高熱になってしまう。それを防ぐため大量の水を掛けながら切断した。川が近いので、水ならいくらでも使える。

 必要な石材は多いが、スラ子はいくつものカッターを作って同時に作業する。スラ子にも休憩が必要とは言え、思いのほか(はかど)った。

 俺たち人間とサイクロプスはスラ子のサポートをしたり、切り出された石材を運んだりして働く。

 運搬用の台車も、スラ子に作ってもらった。


 その日は日が暮れるまで働き、石材の調達、加工を終えた。驚異的な早さだ。


「疲れたー。みんな、お疲れ様。」

 俺はぐったりと寝そべって言った。

「お疲れ様でした、マスター。マスターとメグミさん、ツムギさんの頑張りのおかげで、ずいぶん作業が進みました。」

「一番頑張ったのはスラ子ちゃんだよ。あんなにドンドン石が切れちゃうなんて。」

 と、メグミ。

「うん。びっくりしました。流石スラ子さん。今度ゴーレムに遭遇しても、これで倒せるね。」

 ツムギも言った。ブロートコーブを守るゴーレムを倒すのはまずい。

「食事の用意も致しました。疲労回復に効果のあるクロレラも、少し使いました。」

「あう……。ぬま……。」

 ツムギが早くもげんなりしている。

「クロレラを、スライム団子に練りこんでみました。苦みが抑えられていると良いのですが。」

「そうか。助かるよ。ありがとう、スラ子。」


挿絵(By みてみん)

「橋」の変形スキルを獲得しました!

挿絵(By みてみん)

「石材切断用カッター」のスキルを獲得しました!

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