スライムは虫歯を治療できる
メグミが虫歯になった。この世界では普通抜いてしまうようだが、見よう見まねで治療する。
と言っても、実際の治療はスラ子にやってもらうのだが。
「ツムギ、魔法薬の麻酔を取ってくれ。メグミはここに寝て。」
スラ子にリクライニングのついた椅子になってもらい、メグミを寝かせる。
メグミに口を開けさせるのは、ちょっとドキドキする。
歯並びはキレイだ。しかし、奥歯の歯の間が黒くなっている。
「痛いのはココだな?」
棒の先端で黒くなった部分をそっと触る。メグミがビクッと体を震わせ、涙目で頷いた。
「ツムギ、麻酔を。」
スラ子にわた状になってもらい、麻酔薬を含ませ、それを優しく虫歯の周辺に塗った。
メグミはぎゅっと目をつむり痛みに耐えている。
麻酔はすぐに効いてきたようだ。
「あ、痛くない……。カ、カヒト、もう大丈夫だから……削らなくていいよね?」
「ダメ。麻酔が切れたらもっと痛くなるだけだぞ。」
メグミは泣きそうになりながら大人しく椅子に寝る。
「スラ子、この黒い部分を削ってくれるか。小さな刃物になって削り取って欲しい。」
「はい、マスター。」
メグミの口の中に、本当に小さなナイフが現れ、虫歯をコリコリと削っている。
恐らく、以前のスラ子のナイフでは、硬さが足りずに歯を削れなかっただろう。鍛冶屋での体験が確実に効果をあげているようだ。
「メグミ、痛くないか。」
「ひょっほ……。へも、はいひょうふ。(ちょっと……。でも、大丈夫。)」
すぐに黒い部分は削り取られた。
「スラ子、それくらいで良いだろう。」
「カヒトさん。もう少し周りまで削ったほうが良いと思うよ。」
と、覗いていたツムギが言う。
「え?でも、虫歯の部分は削れたぞ?」
「黒くはないけど、その周りは色が悪くなってる。そこも虫歯だと思う。」
色が悪くなってる?全然違いが分からない……。
「マスター。私もそう思います。あと0.2ミリほどでしょうか。脆くなっている部分があります。削ってしまいましょう。」
脆くなっている。と言うのは俺には分かりようがない。しかし、二人が同じように提案するなら正しいのだろう。
「じゃあ、スラ子。頼めるか。」
「お任せください。」
追加の削る作業もすぐに終わる。ツムギが見ても合格だそうだ。
「では次に、この削ってできた穴にスラ子の石スライムで埋めてほしい。歯に似た性質の石スライムがいると良いんだが。」
「大丈夫です、マスター。」
「気を付けてほしいのは、穴の中に菌を残さない事だ。ヘタすると、歯の中から虫歯になってしまう。」
「それも問題ありません。私には菌が分かりますので、残さずに殺菌できます。」
「そうなのか?すごいな。」
「万一残ったとしても食べてしまいます。詰め物が私ですから。」
確かに。虫歯菌に食べられるどころか、むしろ虫歯菌を食べる歯だ。最強だな。
そうしている間にも、削ってできた穴はみるみる塞がっていく。
すぐに周りと見分けがつかないほどつるっとした表面の歯になった。
「よし、メグミ。終わったぞ。麻酔はまだ効いてる?」
「うん。治してもらった所だけ感覚が無い……。」
「舌とか、ほっぺたの内側噛まないように気を付けてな。」
「うん。ありがとう、カヒト。」
「どういたしまして。」
「ありがとう。スラ子ちゃん、ツムギちゃん。」
「治ってよかったです。」
と、ツムギ。
「そもそも、虫歯になってしまったのは私がメグミさんの口の中の清掃を怠ったからでしょう……。すみませんでした。」
と、スラ子が言った。
「まさか!スラ子ちゃんのせいな訳ないよ。私が始終お菓子を食べてたのが悪いんだし。」
「何かを食べている間は流石に清掃ができません。その間に虫歯になってしまったようです。」
「メグミ、これからは気を付けてな。」
「うん。ゴメンね。」
「虫歯治療」のスキルを獲得しました!




