差し入れと町長の相談
宿に帰ってみると、メグミとツムギは部屋にいた。
またおいしいものを食べ歩いているのかと思っていたが。
そして、部屋にはすごい数の箱や包みが山と積まれている。
「ただいま……。何だ、この状況は?」
「あ、カヒトさん、スラ子さんお帰りなさい。」
「カヒト、お帰り。モグモグ……。」
「メグミはまたなんか食べてる……。どうしたんだ?この荷物。」
「うん。昨日の手品を見た人たちが、差し入れをくれたらしいの。」
ツムギが答えた。
「差し入れか。……って言うか、これ、全部お菓子か?」
そばの包みをいくつか開けてみると、甘い香りが漂ってくる。
「支配人さんが、『話題の手品師たちが宿泊する宿』って言って宣伝したんだって。それで、みんな色々持ってきてくれたの。」
「それはありがたいな。……しかし、多すぎる。」
「うん……。メグミさんは喜んでるけど。」
「メグミ、こんなにあってもしょうがない。宿の人に言って、近所におすそ分けしたらどうだ。」
「う、うーん……。そ、そうだね。あると食べちゃうし……。」
「メグミさん、ずっと食べてる……。太っちゃうよ?」
「うう……。」
俺たちが宿のロビーに行ってみると、そこには町長がいた。宿の支配人と何かを話している。
「やあ、こんにちは。」
お互い挨拶をする。
「皆さんもちょっと話に加わってもらえませんか?」
と、町長に言われた。
そう言われて断ることもできない。大人しくテーブルについた。
「昨日話題に上がった、橋の件なんですけどね。」
「ああ、街の南のつり橋が落ちたと。」
「はい。放っておくわけにはいきません。早急に架け直さないと困るのですが……。」
「ルイさんの魔法で、何とかならないんですか?丸太を持って行って、峡谷に架けるとか」
と、俺が言う。
「……ルイは……。細かい作業が苦手なんですよねぇ。」
「ははあ……。」
「丸太を運ぶなんて、全然細かい作業じゃないとお思いかもしれませんけど、物を作ったりするのは致命的にヘタで。」
「ゴーレムは、ルイさんが造られたんですよね。」
「ええ、でも、あれはゴーレムを造る魔法ですから。……ゴーレムにやらせるっていうのも無理らしいです。ややこしい命令を与えることは出来ないとか何とか……。」
「なるほど。」
「この街には橋を架ける技術を持った者はいません。職人に来てもらうしかないんですが……。」
「その職人は港町に居るはずです。そして、間の悪いことに、港町と言うのは南の橋を渡った先でして……。」
支配人が引き継いで言った。
橋を架けるための人を呼ぶのに、橋が必要というわけだ。
「峡谷の幅は、どのくらいなんですか?」
俺は聞いてみた。
「20メートル程度ですね。皆さんはバクバクのつり橋を渡って来たんですよね。その倍と思っていただければ。」
町長が答える。
20メートルか……。
「スラ子。20メートルのロープになってもらって、俺を渡す事はできないかな?」
俺はスラ子にだけ聞こえるように言った。
「おそらく可能です、マスター。現場を見てみないと定かではありませんが。」
「町長、私がその職人を呼んできましょうか。私は峡谷を渡れます。」
俺は言った。
「そう言えば、カヒトさんも魔法使いだそうですね……。行ってもらえるならありがたいですけど。」
「任せてください。それで、成功した暁には報酬の方を……。」
「ああ、もちろんですよ。ではお願いしましょうかね。クエストとして。」
そういう事になった。
「メグミとツムギはここに残るか?どうせ職人を呼んで、戻ってくるんだし。」
「カヒトが街の外に行くなら、私も行くよ。(スラ子ちゃんがいるとはいえ、)一人じゃ危ないよ。」
と、メグミが言う。
「もちろん私も行きます。何日もこの街に居たら、メグミさんがまん丸になっちゃう。」
ツムギが言う。
「さ、さすがにそんな事は……ないよ……?」
既に丸い支配人はバツが悪そうだ。
「もしかして、もう出発されるんですか?」
と、町長が言う。
「ええ、早い方が良いと思いまして。」
「職人の居る港町は『ハーフェン』といいまして、そこまでは数日かかります。どのみちキャンプは必要ですから、朝早く出発する意味は無いかもしれませんね。」
「では、これから行きます。支配人さん、差し入れしていただいたお菓子なんかは、近所の方におすそ分けしてもらえますか。」
「左様ですか。確かに全ては持っていけませんね。……日持ちする物についてはお戻りまで取っておきますので。」
「分かりました。お願いします。メグミ、ツムギ。準備を整えたら出発しよう。」
「「うん。」」




