表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/320

鍛冶屋見学

 スラ子の希望で、街の鍛冶屋に見学に行く。


「カヒト、出かけるの?私も行こうかな。」

「私も。」

 メグミとツムギがそう言うが、ぞろぞろ連れ立って行くような用事でもない。俺とスラ子だけで行くことにした。


 鍛冶屋の場所は既にスラ子が調べてある。

 目抜き通りを離れ、枝道に入ってしばらく行くと、トンカントンカンと騒々しい通りに出た。

 木工所らしい建物が集まっているようだ。

 家具を作る工房もあれば、建物の柱らしきものを削っている所もある。


 その一角に煤で汚れた、石造りのこじんまりとした工房があった。それが鍛冶屋らしい。

 思ったより小さい。

 バクバクの街で見た一番小さい鍛冶工房もこれよりは大きかった。とりあえず、訪ねてみる事にしよう。


「ごめんください!」

 工房の中は薄暗かった。小さな明り取りの窓からわずかに差し込む光があるだけだ。

 中の様子はあまり分からないが、誰かが出てくる気配がした。

「ん?なんだ、あんたは。」

 出てきたのは、ずんぐりとした背の低い男。ドワーフだ。やっぱり鍛冶仕事はドワーフなんだろう。


「おはようございます。不躾(ぶしつけ)ですいませんが、ちょっと、お仕事を見学させていただけないでしょうか。」

「見学だと?ずいぶんいきなりだが。……ん?あんた、見覚えがあるな。そうだ、昨日の演芸大会で、手品だったか、やってた人じゃないか。」

「あ、ご覧になってましたか。お恥ずかしい……。」

「恥ずかしいもんか!あれは楽しかった。良いもんを見せてもらったよ!」

「そう言ってもらえると嬉しいです。」

「で、見学だったか。鍛冶屋の仕事が手品の役に立つのかね。」

「いや、私の本業は冒険者でして……。」

「ほう……。まあ、ウチでよければ見ていくと良い。」

「ありがとうございます。お邪魔ではなかったですか?」

「元々忙しい方じゃないからな。農具や工具の修理が大半で、それもとっくに終わっちまったし。」

「そうなんですか。……武器防具なんかを作られることは……。」

「無いな。たまに修理依頼は来るがね。作ろうと思えばできるが、バクバクの街の仕事を取っちまうわけにはいかんからな。」

 バクバクの街は、鉄製品をこの街で売れなかったら食料を調達できなくなる。それを避けるために、この街では修理程度にとどめているのだろう。


「さて、見学と言っても、何を見せてやりゃ良いかね。」

「一通り作業工程を見せていただけたらと思うんですが……。できれば、この鉄を使ってナイフを一振り、作っていただけませんか?」

 俺はそう言って鉄の塊をドワーフに渡した。

 その鉄の塊と言うのはスラ子だ。スラ子の鉄スライムの部分が()べ棒になっている。

 自分で体験したいという、スラ子たっての願いだ。


「ずいぶん用意が良いな。まあ、構わん。だが、半日近くかかるぞ?」

「お願いします。」


 ドワーフは炉に火を入れ、ふいごを吹いて火力を上げる。そして鉄を熱し、叩いたり延ばして折りたたんだりと、休みなく作業をして見せてくれた。

 その合間に、俺に対して作業の説明をしてくれる。しかし、あまり理解できなかった。

 スラ子も聞いているから任せれば良いのだが、俺も何か助けになればと思い聞いていた。が、良く分からない。


 何度か、スラ子がドワーフに聞きたいことを俺が代弁することがあった。まあ、スラ子が俺の声で質問したという事だが。

 何を聴いたのか、俺にも日本語で教えてくれているのだが、その話も分からない。

 二人で熱心に議論を交わす場面もあり、スラ子の嬉しそうな様子が伝わってくる。


 それは良いのだが、ドワーフは、俺が鍛冶屋の仕事に造詣(ぞうけい)が深いと思ったようだ。一目置かれてしまった。

 造詣が深いのはスラ子であり俺ではない。だましているようで心苦しい。


 それはともかく叩かれ、熱せられているスラ子が心配で、俺は気が気ではなかった。

 スラ子は別に痛くも熱くも感じないので大丈夫と言ってくれるが、ずっとハラハラしていた。

 正直分からない話ばかりで飽きていたが、スラ子に任せてその場を離れる気にはなれなかった。


 途中昼休みを挟み、その後は刃先を研ぎ上げて、鍛冶仕事は終わりらしい。

「後は、()の加工と(さや)を作るわけだ。それは皮革(ひかく)加工と木工の領分(りょうぶん)だな。紹介してやろうか?」

「いえ、ここまでしていただいただけで充分です。ありがとうございます。」

「なに、こっちこそ、オレの仕事に興味をもってもらえて嬉しいよ。」

「それで、お礼の方は……。」

「いらんいらん。材料は持ち込みだし、どうせやる事も無かった。昼飯をおごってもらったしな。それでチャラだ。」

 昼飯は近くの食堂でドワーフと一緒に食べた。ちょっと塩辛くて量が多かったが、これまた旨かった。それを俺がおごったのだ。


「ありがとうございます。今日はとても勉強になりました。」

「おう。何かあったら、また来るといい。」


 鍛冶屋を後にし、俺は改めてドワーフが打ったナイフを見る。触った感じはスラ子が以前作ったナイフと違いは無い。

「スラ子。大丈夫だったか?」

「ご心配には及びません。叩かれてダメージを受けるという事はありませんので。」

「実際に鍛冶仕事をその身で体験してみて、どうだった?」

「はい、とても勉強になりました。」

「それなら良かったよ。」

「私は、『鉄は硬く、それが集まっていればいい』と考えていました。しかし、今ナイフになっている部分の私は、そんな単純なものではないのです。」

「ふーん。」

「鉄スライムの細胞の並び方が違うと言いますか、説明は難しいのですが……。」

「確か、炭素の含有量が大切なんじゃなかったかな。」

「はい。わずかに炭の成分が存在していまして、それが鉄スライム同士の結びつきを強くしているようなのです。こういった事は私には考え付きませんでした。」

「鍛冶屋とスラ子ではやり方が全然違うだろうからな……。炭素の他にも、別な種類の金属を混ぜたりもするらしいぞ。『合金』と呼ぶんだ。」

「『合金』ですか。」

「金属や鉱物を様々な割合で混ぜ合わせると、より硬くなったり、粘り強くなったり、色んな特性が生まれるらしい。」

「興味深いです。」

「俺はその辺りは全然知らないから、アドバイスできそうにないけどな。」

「はい。いろいろと試してみます。……やっぱり、私はまだまだです。金属の事を全く分かっていませんでした。」

「それは気にする必要ないだろう。今からやればいい。それに、スラ子は自分自身が金属なんだから、どんな組み合わせも簡単に試せる。すべての鍛冶屋がうらやむぞ。」

「はい!頑張ります!」


挿絵(By みてみん)

「鋼鉄」のスキルを獲得しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

↓↓↓クリックしていただくと外部のランキングサイトにて投票されます↓↓↓
ただし、外部サイトへジャンプしてしまうのでご注意ください

小説家になろう 勝手にランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ