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閉幕後

 控室へ戻った俺たちはぐったりと椅子に座り込んだ。


 疲れた……。

 肉体的には何でもないが、精神的に酷く疲れた。

 終わったという安堵(あんど)も手伝って、しばらくは口も開かずにいた。


 少しして、控室のドアがノックされた。

 入ってきたのは俺たちが宿泊している宿『木漏れ日亭』の支配人だ。

「皆さんお疲れ様でした。とても素晴らしい物を見せていただきました。心よりお礼申し上げます。」

「楽しんでいただけて良かったです。何とか代役が務まりましたかね。」

「代役どころか!予定していた芸人達でも、あんなに会場を()かせることはできなかったでしょう!」


 支配人の後ろから、さらに二人。町長とその奥さん、ルイだ。

「やあ、お疲れ様でした。あ、座ったままで結構ですよ。」

 町長はそう言って(ねぎら)ってくれる。

「いや、素晴らしい芸を見せてもらいました。聞けば、手品と言うのは魔法とは違うらしいですね。」

「そうですね。仕掛けがありまして……。」

 俺が答える。

「ふーむ。どんな仕掛けがあれば、人が何もない所から現れたり、胴体を切り離したりできるのか……。」

「それについては……ちょっと人に教えることはできません。申し訳ないですが。」

「いやいや。それはそうでしょう。知らない方が良い事もある。」

「サーベルの時、町長を変にいじってしまい、すみませんでした。不快な思いをさせてしまいましたか?」

 俺は心配していた事を聞く。

「あはは。まさか!あれは愉快(ゆかい)でしたね!観客も喜んでました。」

「演芸大会もちょっとマンネリ化してたのですけど、今日はホントに楽しかったわ。皆さんのおかげね。」

 ルイが言った。


 部屋の外からバタバタと走る音が聞こえてきた。

「支配人!大変です!」

 俺たちの世話係をしてくれていた、宿のカウンター係が駆け込んできた。

「何かね、騒々しい。」

「す、すみませんっ。あ、町長もお(そろ)いでしたか。ご報告したい事が。」

「どうしたんですか?」

「はい。私どもが呼んでいた芸人が到着しない理由がわかりました。大変なんです!橋が落ちていますっ!」

「えっ?」

 俺は思わず声が出た。

「大変です。」

 と、ツムギ。

「橋って、バクバクの街への街道にある橋ですか?」

 メグミが聞いた。

「あ、いえ。街の南の橋です。バクバクの方とは別の橋でして……。」

 俺たちはちょっとだけホッとした。自分たちが渡ってきた橋が落ちたなんて、いい気はしない。


「……うーん。またか……。」

 町長が腕組みをして言う。

「困りますね。あの橋は。」

 ルイも眉をしかめている。

「ええと。カヒトさんたちに説明するとですね。この街の南の渓谷にも、橋が架かっているのです。つり橋ですね。しかし、地盤の問題なのか、どうにも橋を構成する柱が(ゆる)み、傾いてしまう。」

 町長が説明する。

「数年は持つんですけどねえ。」

「皆さんが舞台に立っていただくことになった原因がソレだという話ですね。芸人は、橋の向こうの街から呼んでいましたので。」

 と、支配人が言った。


「大変ですね。」

「そのおかげで皆さんの手品を見られたと思えば、不幸中の幸いでしょうか。」

「いやいや。道が分断されたんですよね。そんなのんきな……。」

 と、俺が言う。割と一大事だと思うが、あまり気にしてないのだろうか。

「ハハハ。確かにそうですね。」

「あなた。皆さんお疲れでしょうから、話し込むのは又にしましょう。」

「おっと、そうだね。支配人、彼らは丁重におもてなししてあげてください。」

「もちろんですとも、町長。」


「皆様、本当にお疲れ様でした。宿でゆっくりお休みください。もちろんお代はいただきませんので。」

 支配人の言葉に従い、俺たちは『木漏れ日亭』に戻る。

 かなり遅い時間になってしまったが、温かい夕食を用意してくれていた。ありがたい。


「お疲れ様。みんな頑張ったな。」

 食事をしながら、俺は皆に声をかける。

「うん。スラ子ちゃんもツムギちゃんもお疲れ様。カヒト、無理言ってゴメンね。」

「まったくだ。でもまあ、楽しかったよ。」

「お客さんに喜んでもらえて、良かったね。」

 と、ツムギ。

「結果的には、メグミさんの判断は正解だったわけですね。」

 と、スラ子が言う。メグミが代役を買って出た事だ。

「結果的にはな。」

 俺は釘を刺す。またこんな事があったら大変だ。

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