スラ子一座のマジックショー その2
会場から拍手。
その拍手にこたえつつ、メグミは俺が入った箱の横へ。にっこりと笑いながらサーベルを箱の側面に当てる。
俺はおびえ、ブンブンを首を振る。「やめてくれ」と言うように。
しかしメグミはそんな俺にお構いなしに力いっぱいサーベルを突き立てた。
ザクッ!
キャーッと悲鳴で沸く客席。
俺も痛そうに大きく口を開く。
サーベルは箱を貫通し、反対側から切っ先が突き出ている。
つまり、俺を貫通しているという事だ。
しかし、サーベルの切っ先には血はついておらず、俺の首はバタバタと動いて元気そうだ。
手品を知らない観客にも、俺が痛がっているのは演技で、本当はサーベルは刺さっていないと分かるだろう。
そうしている間にも、ツムギは次のサーベルを取り出しメグミに渡す。
メグミは2本目のサーベルをどこに刺そうか思案するように、俺の周りをまわる。
が、急に俺が可哀そうになったのか、サーベルを構えるのをやめて俺に背を向けた。
俺はほっと一安心。
の、直後。メグミはくるっと向き直り、容赦なくザックリとサーベルを箱に差し込んだ。
俺はまた痛がるしぐさ。
その2本目を合図に、メグミとツムギはどんどんサーベルを取り出し、それを俺が入った箱に突き立てるという動作をリズミカルに繰り返す。
まさに矢継ぎ早と言うにふさわしい速度で、箱はハリネズミのようにサーベルだらけだ。
そして最後、メグミとツムギは1本ずつサーベルを持ち俺の両側へ。
いかにも芝居掛かったポーズをとった後、俺の脇腹の背中側。その左右にサーベルを突き当てる。
じらすように間を置いた後、二人は同時に俺の体を貫いた。
2本のサーベルの先端が俺の胸に突き出る。
『それじゃあ、サーベル同士がぶつかるだろう』などと言う野暮なツッコミは言いっこなしだ。
2人がサーベルを刺した勢いで、箱のふたがバタンッと開き、俺は外へ放り出された。
俺の体には最後に突き立てられた2本のサーベルが刺さったままだ。
箱の外に出た俺は、そのままヨロヨロと客席の方へ歩き、舞台の端から転げ落ちてしまった。
前の方に座っている客には逃げるように立ち上がろうとする者もいる。かなり驚いているようだ。
俺はすぐに立ち上がり、最前列の客にペコペコと頭を下げる。
そして、すぐ近くに、昨日冒険者ギルドで会ったエルフのルイを見つけた。
ルイは凄腕の魔法使いであり、町長の奥さんだ。その隣には男性がひとり。彼が町長だ。
町長と言うから、少なくとも中年以上を想像していたのだが、彼は多分俺よりも若い。20代くらいに見える爽やかな青年だ。
俺は町長とルイを見て、満面の笑みで近づき、両手を差し出して握手を求める。
町長は戸惑いながらも握手を返してくれる。
胸から突き出たサーベルが大変邪魔だ。
俺が頭を下げるたびにサーベルが町長に当たりそうになる。
下手をすると不敬罪になりそうだが、あくまでジョークだという事が伝わっているようだ。会場は笑いに包まれている。
何度目か、町長が切っ先を避けるようなしぐさをしていることに気が付き、俺はやっと自分の胸にサーベルが刺さっていることを思い出した。
俺は背中を向け、サーベルの柄を指さす。『抜いてくれ』というジェスチャーだ。
サーベルは2本。
町長とルイはそれぞれ柄を握り、ぐっと引いてくれる。
しかし抜けない。
俺も足を踏ん張り、体を前に突き出すが抜ける気配がない。
ハアハアと息を荒くし、俺は二人にストップをかける。
おもむろに胸から突き出たサーベルの切っ先を両手で持ち、それを左右に動かした。
サーベルはするっと、抜ける、と言うより体から外れた。
俺はそのサーベルを後ろの客席にも見えるように頭の上に持ち上げる。
柄側と切っ先側がUの字型の金具で繋がった、変なサーベルだ。
Uの字型の金具部分で脇腹を挟み、貫通していたように見せていたというネタばらし。
会場は笑いに包まれる。
俺はその変なサーベルを町長に差し出す。「差し上げます」と言うように。
町長はこれを拒否。
またも爆笑に包まれる会場。
俺はバツが悪そうに舞台に戻っていく。
舞台ではメグミとツムギが俺を「許してね」というような仕草で迎えた。
何十本ものサーベルを突き刺されたら誰だって怒る。可愛いしぐさでうやむやにはならない。
俺は腰に手を当てて二人を睨む。
ズンッ、ズンッと2人に近づく俺。2人は後ずさる。
パッと手を出して俺はメグミの腕をつかんだ。ツムギは一足先に逃げ、舞台袖に入る。
俺はいやがるメグミを引きずり、さっきまで俺が入っていた縦長の箱に押し込み、ふたを閉めてしまった。
箱にたくさん刺さっていたはずのサーベルはいつの間にか消え失せ、刺さっていた穴もない。
俺は手に持ったサーベルを掲げる。
サーベルはいつの間にか真っ直ぐな、普通のものに変わっている。それを素早く横に走らせ、メグミが入った箱を横なぎに2回、切った。
箱の、メグミの胸から上と太ももの中間あたりに切れ目が入り、その上下の箱の板がばらばらと外れて落ちた。
結果、箱はメグミの腰の上下、50センチくらいが残るのみだ。
冷静に考えれば、その状態で何故箱が落ちてしまわないのか不思議だが、それには目をつむってもらおう。
俺は再度サーベルを構える。メグミは「やめてー!」と言うようなジェスチャーをするが、構わず腰のあたりをズバッと横なぎに切り払った。




