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スラ子一座のマジックショー その1

「さて、最後の演目となりました。急遽(きゅうきょ)代役として出演をお願いした冒険者パーティーの方々です。今回は『手品』なるものを見せてくれるとの事で。期待しましょう。それでは、どうぞ!」


 劇場に拍手が巻き起こる。そこに重なるように、どこからともなく音楽が鳴り響いた。

 手品と言えば欠かせないあの曲。『オリーブの首飾り』だ。

 音楽を再生しているのはスラ子。俺が事前に鼻歌で教えていたのだ。

 メロディライン、ベース、ドラムなどを別々に教え、それを重ねて再生してくれている。楽器で演奏したかのように少し音色を変えて。

 俺の音楽センスや知識は全然ないので、改めて聞いてみると変だ。しかし原曲を知らない異世界人なら気にならないだろう。


 その演奏の中、まず登場したのは俺。

 スラッとしたタキシードにシルクハット、ブリーフケース程度の大きさの四角いカバンをもって舞台(そで)から出てくる。

 メグミもツムギもバニースーツを見たことが無いと言っていたが、タキシードも無いそうだ。

 しかし、舞台なのだから目立つのはかえって都合がいい。


 俺は舞台中央へ来るとカバンを脇に置き、シルクハットを取ってわざとらしいお辞儀(じぎ)をする。

 沸き起こる拍手。客席はみんなにこやかでありがたい。

 ただでさえ緊張するのに、しかめっ面があったら始末に負えない。


 拍手が収まるのを待ち、シルクハットをくるっと回す。中には何もないというアピールだ。

 そして、左手で逆さに持ったシルクハットに、右手を差し込む。

 グッとつかみ、出てきたのは真っ黒なウサギ。両耳を掴み持ち上げる。

 ウサギは明らかにシルクハットより大きい。出てくるはずのない場所から出てくるはずのないウサギの登場に、客席はいくらかざわめく。


 ウサギはバタバタと暴れ、俺の手から逃れる。

 ぴょんぴょんと舞台の上を跳ねまわるウサギ。俺はそれを慌てて追いかけた。

 なるべくコミカルに見えるよう、ドタバタと大げさなしぐさで走り回る。


 ウサギは、俺が置いたカバンの後ろに隠れ、客席からは見えなくなった。

 俺はその後ろに回り込み、逃げ道を(ふさ)ぐように両手を広げる。

 と、カバンの上にぴょこっぴょこっとウサギの耳が現れた。先ほどのウサギではなく、バニースーツの耳だ。

 さらにおかっぱ頭が、白く細い背中が、しっぽの生えたお尻が(あらわ)れる。

 客席に背中を向けて、バニー姿のツムギがそこに立っていた。


 まるで先ほどの黒ウサギがツムギに変身したかのようだ。

 ツムギは小柄ではあるが、ブリーフケースに入れるほどではない。またしてもありえない登場。


 俺はツムギの手を取る。ツムギはくるっと振り向き、客席に向かってお辞儀。


 ワッと湧き上がる拍手と歓声。

 少し不安だったのは、ツムギの一つ目が受け入れられるか、という事だった。しかし心配なさそうだ。

 まあ、昼間街を歩いている時でも、ツムギがじろじろ見られるという事は無かった。


 ツムギも俺もここまで一言も発していない。少し迷ったのだが、今回はサイレントで行こうと決めたのだ。

 手品では身振り手振りで状況を伝えるという演出は良く見られるから、自然にそうなった。

 しゃべったほうが分かりやすいのは事実だが、話術が(たく)みなわけではない。ぼろが出る可能性の方が高い。


 にっこりと笑いポーズをとるツムギ。

 俺はそんなツムギをしげしげと眺め、腕組みをして考え込んでしまう。

 そして、「いい事を思いついたっ」と言うように手を打ち、ツムギの手を取ってまたカバンの後ろへ。

 俺はツムギの肩をグイグイと押し下げる。ツムギは助けを求めるように手を挙げるがそのままどんどん沈んで行ってしまう。


 ツムギの姿が完全に隠れ、俺はふうっと一息ついて額の汗をぬぐう仕草。

 そして、もみ手をして再度カバンの後ろに手を差し伸べる。

 またも、カバンの上にぴょこっぴょこっとウサギの耳が現れ、今度はメグミが立ち上がってきた。

 俺はメグミの手を取り、ツムギの時と同じく客席に紹介するようにポーズをとる。


 拍手と歓声。

 しかしツムギの時とはけた違いだ。

 やはり「大きいは正義」という事か。


 俺はメグミをしげしげと眺め(特に胸の辺りを)、今度は満足そうにうんうんと(うなず)く。

 客席からは笑い声。

 小さいツムギを大きいメグミに取り換えた形だ。

 女性客は不満顔だろうか?俺にはそこまで見る余裕がない。


 そうしていると、ツムギが俺の背後の舞台(そで)から登場。縦長の大きな箱を抱えている。

 メグミにデレデレしている俺の背中を、その大きな箱でどついた。

 今度は女性客の笑い声。


 俺は腰に手を当てて大げさに痛がる。その間にツムギは、縦長の箱を、舞台の中央に置く。

 箱はいかにも人が入りそうな大きさだ。ふたは扉のように広い面が開く。

 棺桶(かんおけ)を縦にして、ふたに蝶番(ちょうつがい)を付けた感じだろうか。

 ツムギは箱のふたを開け、その中を客席に見せている。「種も仕掛けもありません」のアピールだ。


 俺が振り返りその箱を見る。そしてメグミの手を取り、箱に入れようとする。

 だが、ツムギは俺をドンッと押し、箱に入ったのはメグミではなく、俺。

 そのままふたをバタンと閉め、俺は閉じ込められた。

 と言っても首は外に出ている。箱の上面には元から穴が開いていて、そこに首を通しているのだ。


 ツムギは箱の後ろから1本のサーベルを取り出し、メグミに渡した。

 芝居がかったしぐさでサーベルを構えるメグミ。そのメグミに、ツムギはやはり箱の後ろから取り出した太い木の枝を(ほう)った。

 ダッと踏み込むメグミ。

 すると、木の枝は空中で10以上の破片に分かれ、ばらばらになる。

 いくらメグミが剣の達人とはいえ、こんな事はできない。

 木の枝はスラ子が変形したものだ。それが自分でバラバラになっただけ。

 サーベルの切れ味を示す演出だが、中々はったりが効いている。


挿絵(By みてみん)

「録音・再生」のスキルを獲得しました!


 連載100回を記念しまして、現在のスラ子のスキルツリー全体を掲載します!

挿絵(By みてみん)

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