もう一つの出会い
巽と別れ新生活をなんとか軌道に乗せ、2年程たった頃「ご飯のお供サークル」のOB会があった。
皆が社会人になって、世の中に出て知った取って置きのご飯のお供を持ち寄って自慢しようと言う趣旨の会だった。
「俺は行くつもり。サキも予定が合えばおいでえよ。」
そう巽に言われ二人きりで会うわけではないし、いい機会なのかもしれないと参加することにした。
会場に着くと懐かしい面々が待っていた。
皆少しだけ大人になったように見える。
でも話し出すとあっという間に昔の顔に戻った。
「久しぶり、元気やった?」
仕事帰りなのかスーツ姿の巽から声を掛けられた。巽のスーツ姿なんて見慣れないはずなのにとても馴染んで似合っていて驚いた。そして二人の間に2年と言う月日がたっているのを感じた。
「うん、元気だよ。本当に久しぶりだね。」
そんな会話の途中で巽のもとに1人の男性がやって来た。
「いやーこの会本当に面白いな。みんな純粋に渾身のご飯のお供を披露しててさ。あれとかうまそー!」
目をキラキラさせて会場を見渡し、楽しそうに笑った口許の八重歯が印象的な男性だった。
「山本、俺の会社の同期の下野。下野、この人が山本。今日は知り合いを同伴できるって聞いて連れてきてん。」
巽の簡単な紹介にお互い会釈した。
「初めまして、下野ヒロです。巽とは新人研修中に仲良くなりました。
丁度巽とあなたが別れるかどうかの辺りで、あからさまに会社で落ち込んでた巽の相談にもよく乗ってました。」
「そうなんですか。それはとんだご迷惑を。」
知らないところで話の種になっていたと思ってなんとも言えない気持ちになる。
「その頃から気になっていたことがあるんです。あの…山本さんの好きな味噌汁は普通の味噌って聞いてるんですが、何麹ですか?」
「麹ですか?」突然の質問に困惑した。
「そうです!巽は白味噌以外は赤味噌と普通の味噌の区別がやっとつくくらいで麹までは知らんし、分からんよ~何て言うんですよ!」
「あんまりうるさいからほんなら直接聞いたらええやろと思って今日声掛けてん」
「うるさいって言うな~
山本さん、俺は米麹味噌、鰹出汁、小松菜とお揚げの味噌汁が好きなんです。」
下野の興奮気味の発言に少し驚いた。
「うわー私とほとんど同じなんですね!ただ私は麦麹味噌が好きなんですよ。」
「そうかー麦麹かー」何故か残念そうに項垂れる下野が面白かった。
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