表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
燃えろ!ツタンカーメン部  作者: 片桐青
ツタンカーメン部って何だ?!
9/25

09

1年A組の学級委員長、尾谷悟(おたにさとる)は朝礼を取り仕切るイケイケ男子生徒だ。軽音部に所属し、担当はドラム。それでいて成績は優秀。申し分がない。


「今日は先生が不在だから、俺が代わりに出席取ってくから。みんな返事よろしく!」


学級委員長の言葉にみんなは元気良く返事をする。セルゲイは外を見ていた。今日のいつだかは知らないが、佐藤が御三家に殴り込みに行く。学級委員長の出席確認など、どうでもよかった。


「セルゲイくん。濱野セルゲイくん!」

「っ!は、はい!」


ぼーっとしていたので、返事が遅れた。だが、周りの女の子たちはなぜかみんなキャーキャー言っている。尾谷は舌打ちをした。


「…また佐藤のやつ欠席かよ。」

「あいつ、元々うちのクラスにいなくねー?」


クラスのチャラついたやつが言うと、一気に笑いが起きる。これにはセルゲイは黙っていられなかった。


「祐樹くんは僕たちのクラスメイトだよ!」

「呼んだー?」


セルゲイはすぐに声がする方に振り向いた。クラスのみんなも、尾谷も声がする方を見る。そこには寝癖だらけの佐藤がいた。遅刻である。


「つーか、俺ここのクラスじゃなかった感じ?それじゃあ帰るし。セルゲイ、またねー。アデュー。」

「えっ?えっ!ちょっと、祐樹くん!」


まさかの佐藤の行動にセルゲイは驚くことしか出来なかった。これには尾谷も呆れた。というか、佐藤はもうはや転入してきて間もないセルゲイと仲が良いのか。


「すみません、学級委員長さん。」

「どうしたのかな?セルゲイくん。」

「僕、ちょっと祐樹くんのところへ行ってきます。」


尾谷は返答に困った。そして困っているうちに、セルゲイはもう教室を出て行ってしまった。



「中野、お前軽音部来いって。」


毎日一回は部活の勧誘をされる。中野は興味無さそうに返事をした。


「俺パス。」

「なんでだよ!お前なら絶対ボーカルに向いてるから!」


だいたい歌はあまり好きではない。カラオケはよく行くが、大勢の前で披露出来るかと言われるとまた違う。


「そろそろ勉強しねーとマズいんだよなー、俺。」


これを言うと大体は切り抜けられる。別に勉強はしなくても全然平気なラインには立っている。可も無く不可も無く。


「あーそっか。悪いな。」

「誘ってくれて嬉しかったよ。ありがとな。」


中野は普段、人気者である。男女関係無く人気がある。彼女とはあまり上手く行ってないようではあるが。しかし、中野はそんな毎日に飽き飽きしている。それから解放される唯一の時間が、放課後のツタンカーメンタイムである。しかし、島崎に正体がバレてしまった以上、あまり暴れることは出来ない。変な噂を流されてしまっては困る。人気者の中野秀人が崩壊してしまう。


「…何で入っちゃったんだ、俺。」


彼はツタンカーメン部に入部したことを、非常に後悔している。完全に気の迷いである。ほんの気休めだ。だが、ツタンカーメン部は、学校公認の部活動ではない。学校のパンフレットに載ってなければ、全校生徒の9割は部活動と認識していないだろう。中野秀人もその一人だった。


中野は教室の移動中に、ふと窓の外を見た。そこには見覚えのある生徒が、校舎から出ようとしていた。


「…佐藤?」


部長だ。部長はカバンを背負ったまま校舎から出ようとしている。サボりだろうか。全く何をやってるんだ。あいつは。中野はため息をついて、さっきのは見なかったことにした。もし、佐藤と仲が良いなんて思われてしまったら。中野まで白い目で見られてしまう。


「それだけは絶対勘弁だな。」

「何が勘弁なん?」

「うわっ、おまっ…いつから居た?!」


いつ間に居た、豊島大貴(としまだいき)。ニコニコしながら豊島は中野の背中を叩く。


「最近ほんまに元気無いやん。どうしたん?」

「…別に何でも無えよ。」


彼は演劇部に所属している。そして、中野の昔からの幼馴染。そんな豊島にでさえ、中野は自分がツタンカーメン部に入っていることは伝えていない。伝えたくないのだ。


「あんま悩み過ぎてもあかんで、秀人。」

「…おう。ありがと。」


慰められたと思うと、豊島はニコニコしながらすぐに去って行った。


「早よせーよー。授業始まってまうでー!」


豊島の去り際の言葉を聞いて、中野は慌てて腕時計を見た。


「やっべ!もう始まる!!」


中野はもやもやをシャットアウトするように、次の教室へと走った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ