06
非常階段にうずくまるように三角座りをしている西田くんは、小さくすすり泣いていた。彼は元々野球部で、そこそこ活躍していた。中学時代はエースになり、ホームラン王として名を馳せていたものだ。しかし、ずっと西田くんに嫉妬していた部員たちが、彼に怪我を負わせたのだ。それが致命傷になってしまい、野球人生が経たれてしまった。
「なんでいっつもこんな役回りなん…!」
西田くんは退部してから、縋り付くようにツタンカーメン部に入部した。部長がふてぶてしいおかげで、なぜかあらゆる部活動から西田くんが標的になってしまっている。元野球部と言うものも原因なのかもしれない。彼の才能に嫉妬してた人がここで頭角を露わにしている。
「西田くん!」
「…藤木先輩。」
西田くんを探してた藤木くんが息を切らしながら、階段をおりてくる。
「あんな言われ方されたら、嫌にもなるよな。」
「アイツ、ほんま何なんですかね。俺もうさすがに我慢の限界や。」
半分涙声で言う西田くんの背中を優しく撫でる藤木くんは、小さく言う。
「確かに、部長は理不尽なとこある。でもさ、行き場を失った俺たちに居場所を作ってくれてるじゃん?」
「…こんな居場所なら、要りません。」
いつもなら素直で優しい西田くんがここまで言うなんて。きっと相当溜め込んで居たんだろうな。藤木くんは続ける。
「俺だって、最年長のはずなのに部長に顎で使われてるし。イラっとする時はあるけど。」
藤木くんの言葉をただ静かに西田くんは耳を傾ける。
「それでも、俺はみんなと一緒に居てえしさ。何だかんだ、ここが楽しいんだよ。…西田くんだって本気でここに居るのが嫌なワケじゃないだろ?」
「でも、もう僕無理です…嫌がらせ受けるん、もうたくさんです…!」
ツタンカーメン部にいるがために、嫌がらせを受けている西田くんからすれば、楽になりたいのが本音だろう。
「じゃあさ、俺たちも仕返ししてやろうぜ。」
「…仕返し?」
「そうだよ。ナメられてばかりじゃ、俺も嫌だし。きっと部長だって良く思ってねえよ。」
部長がどう思ってるかは、正直よくわからないところである。だが彼も人間だ。嫌悪感ぐらいあるだろう。
「それにさ、なにより部員が苦しんでんだぜ。心を傷めないわけがない。」
「…僕、部長にナメられてるのに?」
「ナメてるんじゃないんだよ。部長は、西田くんを信じてるんだよ。」
だからあんなにワガママいい放題なんだ。藤木くんの言葉に、止まっていた涙がまたブワッと溢れ出した。
「ツタンカーメン部が出来て、西田くんが最初のメンバーだったんだろ?」
ツタンカーメン部は、最初2人しか居なかった。西田くんと佐藤のみだった。それから藤木くんが入り、中野が入り。昨日また新入部員のマリウスがやって来た。地味に部員が増えてきつつある。
「戻って、どうやって立ち向かっていくか考えよ。西田くんだけの問題じゃない。これは部の問題だからな。」
「…はい!」
2人はすぐに立ち上がると、部室と言う名の倉庫に走って行った。