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燃えろ!ツタンカーメン部  作者: 片桐青
それいけ、ツタンカーメン部
13/25

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セルゲイは本を読みながら廊下を歩いていた。


「何読んでんだよ、セルゲイ。」

「藤木くん!」


たまたま廊下で出くわした藤木くんとセルゲイ。部活以外で会うのは佐藤くらい。


「えっとー…これは、ツタンカーメンの伝記です。」

「…あ、なるほどね。なかなか勉強熱心なんだなぁ、セルゲイくんは。」


まさか部長の影響だろうか。藤木くんは一瞬嫌な予感がしたが、別に悪いことではない。「知る」という行為はとてもいいことである。


「祐樹くんが、いつも読んでるから。僕もちゃんと知らなきゃ。って思って。」

「セルゲイくんは部長のこと大好きなんだね。」


なんとも微笑ましい。一匹狼な部分がある佐藤のことをここまで気にかけてくれる人がいまだかつて居ただろうか。いや、居ない。


「そういえば祐樹くん、本当に御三家?に突撃したのかな…」

「あー、おそらくしたんじゃないかな。」


あの佐藤のことである。行かないはずがない。彼は一度言ったことは、とことんやる、有言実行タイプだ。適当に見えて実は、きっちりとしている部分がある。


「昨日、祐樹くんを追いかけたんですけど…」

「ちょっと待って。あの、どういう状況だったのかな?」


セルゲイは昨日の朝の話をした。教室を出て行った佐藤を追いかけたが、セルゲイは見失ってしまったのだ。それからは、ずっと教室に帰って来ず、用事があったセルゲイは、部活には顔を出さずにそのまま帰宅したのだ。


「そんなことがあったのか…」

「藤木くんは、昨日部活に行きましたか?」

「俺もさ、昨日はバイトが早くからあって顔出して無いんだよ。」


藤木くんも昨日は部活に行っていない様子。


「今日も朝から祐樹くん、教室に居ないし…」

「もしかしたら、部室に居るかもな。」


2人は顔を見合わせると、そのまま部室である倉庫へと向かった。




「お元気ですか、久しく祐樹とは話していないね。今度またSkypeでもしよう。」


佐藤は部室でポストカードとにらめっこしていた。差出人は、彼の父である。彼の父は仕事柄、日本にいることは少ない。


「…俺も早く行きたい、な。」


ポストカードから目を離し、ポツリと小さく呟いた。その時、部室のドアが開いた。


「祐樹くん!」


セルゲイと藤木くんが入ってくると、祐樹は慌ててポストカードをしまった。


「あっれー、おかしくない?時間早くない?つーかまだ来んなし。」

「部長、昨日は結局殴り込みに行ったんですか?」


佐藤の言葉を無視して、藤木は問いかける。佐藤は誇らしげに頷いてみせる。


「まずは野球部に行ってきたし。」

「ほんとに行っちゃったの?!」


セルゲイの声が裏返る。佐藤はスルメをくちゃくちゃ噛みながら、半目でセルゲイを見る。


「行った。それがどうしたし。」

「いや…その…大丈夫だったかな、って…」


昨日あれから教室に戻って来なかったから…。セルゲイが心配そうに言うが佐藤はどうでも良さそうにしている。


「俺なんかより、みんな自分の心配しろし。」


佐藤に言われた2人は首を傾げる。


「なんの心配?」

「僕たち、なにも心配することないよ。祐樹くん。」


あまりにも能天気な答えが返ってきて、佐藤は思わず噴き出した。


「俺は今日の放課後、陸上部に行ってくるし。」

「えっ、昨日まとめて行ったんじゃなかったの?!」


御三家とは、野球部 陸上部 サッカー部のことである。この三つの部活は強豪と言われているため、学校側からも熱烈プッシュされている。無名中の無名であるツタンカーメン部とは、天と地ほどの差だ。


「…なんなら部員全員で行ってもいいけど?」


佐藤の言葉に、セルゲイがすぐに反応した。


「一緒に行ってもいいの?」

「一人よりは二人、二人より三人だし。」


佐藤は立ち上がり奥のロッカーを開けた。そこには人数分であろう数のツタンカーメンのお面が入っていた。


「そんなこともあろうかと、発注しておいたし。」


…手作りではなく、発注していたのか。これ…。藤木くんは新品同様のツタンカーメンのお面をまじまじと見つめる。セルゲイに至っては割れものを扱うかのように大事そうに抱えている。


「今日授業終わったら、すぐにここに来いし。作戦会議は昼休みにするから。」


佐藤の声はとてもルンルンしていた。それにセルゲイもつられて嬉しそうにしている。藤木くんは一人どんよりとした。

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