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パーティー結成


「……って理由で僕は冒険者になることにしたんだ」


「なるほど」


 ヒロトは予想外の長い立ち話に少し困惑しながら答えた。

 確かになんで冒険者になったのかを聞いたけど、こんなに15分に渡る長話を聞くことになるとは思わなかった。


 くんくんと自分の服を匂うと、長時間路地裏に滞在していたため当然のように排気ガスの匂いが鼻腔を通り過ぎた。

 これは……メイさんに小言を言われるな。


 するとライミはあっと口を手で覆い、


「ごめん。長話しちゃった」


 と謝罪を口にした。

 ヒロトは少し小さく息を吐き、頭をポリポリと掻いた。


「まぁこうなったら最後まで聞くわ。その後は冒険者登録をしてレグルスのパーティーに入ることになった……って感じか?」


「うん。レグルス君が僕を誘ってくれたんだ。是非パーティーに入ってくれってさ。でも、彼は僕のことを女の子だって思ってたみたいで」


 ライミはスカートをぎゅっと握ると俯きながら続けた。


「なんかあるクエストで……こいつを倒したら俺と付き合ってくれって言われて。僕は断ろうとしたんだけど、僕の返答を待たずにレグルスさんが雄たけびを叫びながら魔物に向かって立ち向かっていって……」


 なんだかそのあとの展開は読めた気がした。

 どうせレグルスがその魔物を倒し、そのあとに付き合いを申し込み、ライミが男だと知ったのだろう。そして俺を騙したなと激高した……そんなところだろう。


「それで、レグルスさんは魔物に負けて……。そのあとに僕は男だってことを言ったら、俺が負けたのはお前のせいだって……。それで嫌われちゃったみたい」


「あ、負けたのかよ」


 まさかの負けてるパターンだった。

 そしてカッコつけて約束を守れず、男として矜持がボロボロとなり、しかもライミが男だと知って八つ当たりでライミに当たっていたのか。

 ダサいな、あいつ。


 ライミはおずおずと俯いて言った。


「でも、僕が悪いって分かってるんだけど。僕は普通に生きれてないはみ出し者だから」


「どう考えてもレグルスが悪いと思うけどな」


 するとライミは首を横に振る。


「ううん。変な僕が悪いんだ」


「変でも良いだろ。誰に迷惑かけている訳でもねぇし」


「ううん、迷惑をかけてるんだよ。だから、みんなに申し訳ないんだ。でも、もう脱がないとダメそうだね……。あんな噂が広まったら、誰も僕とパーティ組んでくれる人いないし……」


 罪悪感で押しつぶされそうなのか、か細い声でライミが言う。


「じゃあさ、俺と組んでくれないか? パーティ」


「……え?」


 キョトンとした顔でライミは言う。

 なんで、と驚いた表情を浮かべるライミ。

 その瞬間にヒロトは「あっ」と声を上げた。そうだ、俺は悪名高き偽勇者だった。俺とパーティを組みたいという人がいる訳ないじゃないか。

 すぐさま訂正しようとした時、


「いいの!?」


 ライミは立ち上がり、ぎゅっとヒロトの手を握る。

 予想以上の顔の近さにヒロトは目を開く。


「ほ、ホントに、パーティ組んでくれるの!?」


「え、いや、逆に俺で良いのか? 偽勇者だぞ?」


「そんなの関係ないよ! 僕の愚痴を聞いてくれたヒロト君が悪人でないことなんて分かるもん!」


 そう言ってライミは軽やかな笑みを浮かべる。

 ますます男に見えない。


「そ、そういうものか?」


「うん! 確かに目つきは悪いけど、わるいひとじゃないことは分かるよ! やったぁ、これでスカートを履き続けられる……」


 ライミは相当嬉しいのか、クルクルとその場で回り始めた。

 

「あ、あと俺は……」


 と、ここまで言って俺は口をつぐんだ。

 俺は人型の虚物だと言おうと思ったのだが、アクシスさんから隠すようにと言われているのだった。

 ライミがん?と首を傾げる。


「あ、いや……その、俺はEランク冒険者なんだけど大丈夫か?」


「もちろん! ランクは関係ないよ!」


 そう言って軽やかな笑みを浮かべた。

 なんだか騙しているみたいで少し気が引けたが、自分の正体を馬鹿正直に言える訳もない。


「じゃ、じゃあ……とりあえず、ここから抜けようか。折角の服に匂いがつくぞ」


「あっ……、ホントだ。最悪、あとで洗わないと」


 指摘されてようやく気付いたのか、ライミは自分の腕を匂うと顔を大きくしかめた。

 ヒロトとライミは隘路を抜けて、大通りへと向かう。


「そういえば、ちなみに何ランクの冒険者なんだ?」


「ふぎゅっ」


 そう言ってヒロトが立ち止まると突如止まったヒロトに対応できずにライミが激突する。

 ライミは涙目になりながら自分の鼻を抑えながら答えた。


「僕は……Cランクだよ」


「Cランク!?」


 思わずヒロトは甲高い声で叫んで振り返った。

 今の俺がEランク。それよりも2階級もライミは上らしい。

 正直、この華奢な体ではCランクだとは想像できなかった。


「どうやって!?」


「ステータス検査の時にCになったんだ。水魔法は昔から得意だったから魔力値が人より高くて。あ、でもパーティーでは僕魔物にビビちゃって……。全然活躍できなかったんだけどね。あはは」

 

 弱弱しい声でライミは笑って誤魔化した。


「まじかよ……。なんか負けた気分だ」


 ガックリと肩を落とすヒロト。

 ライミは慌てる。


「お、落ち込まないで。魔法は8割才能らしいからしょうがないって!」


「お、おおお……全然慰めになってねぇよ」


「ご、ごめん。えーと、でも大丈夫だよ! 世の中にはね、全く魔力がないのにSS級冒険者になってる人もいるんだから! ヒロト君ならその人になれるよ!」


「SS級……か。そうだ。勇者轟はSSS級なんだっけ?」


「え、うん。けどSSS級なんて勇者轟しかいないけどね。いわゆる、勇者のためだけの階級なんだ」


「そうか……よし、決めたぞライミ」


 そう言ってヒロトは立ち上がった。

 丁度、目標が欲しいと思ってたんだ。

 

「俺はSS級冒険者になる! いや、SSS級になる!」


 ヒロトは路地裏で宣言をする。

 そして、散々偽勇者だと見下してきたやつらに吠え面をかかせてやるよ、とヒロトはほくそ笑んだ。

 ポカン、と口を開けるライミ。

 大通りにも声が響き渡っていたのか、何人かが訝し気にこちらを見ていた。。

 僕は思わず、疑問を口にした。


「ヒロト君。なんで堂々と出来るの? 周りの視線が怖くないの?」


「え?」


「怖いじゃん、普通。相手にどう見られているかって。どうして怖くないの?」


「えっ……う~ん……」


 ヒロトは腕を組んで悩み始めた。

 悩むヒロトを見つめるライミの双眼には、疑念が渦巻いていた。


「なんで、なんでか……。別にどうでも良いからかな。正直、考えたこともない。俺は俺のために生きているんだ。あいつらのために生きているわけじゃないから、別にあいつらなんてどうでもいい」


「どうでも……いい?」


 ライミは首を傾げる。

 曇り空のライミに向かって、ヒロトは言った。


「まぁ、簡単だよライミ。お前が周りの意見を無視すればいいんだけだ。それだけのことだ」


「そんなこと出来るかなぁ。皆僕のことを可愛いじゃなくて、かわいそうだって言ってくるんだ」


 ポツリと不安を口にする。

 そうして自信なさげに俯くライミにヒロトは明るい口調で言った。


「出来るさ。無視しても無視しても、かわいそうって言ってくるやつがいたら舌を出してアッカンベーをしながらこう言ってやれ。ーー知るかバーカって!」


 そう言ってヒロトは舌をペロリと出して人差し指で下瞼を引っ張り珍妙な表情をした。

 思わずヒロトの変顔を見てライミは吹き出した。


「ぷっ……あははは! ちょっと待ってよ……。何その顔! すっごい変だね!」


「ほら、アレだよ。アッカンベーってやつだ」


「あははは! アッカンベーって……何!?」


 するとヒロトはキョトンとした表情を浮かべる。


「え……この世界にはアッカンベーって無いのか」


 ショックを受けて立ち尽くすヒロト。

 よほどツボに入ったのか、先ほどまでの暗い表情はどこへやら。


「あはははは! もう、やめてよヒロト君! これ以上笑わせないでぇぇ……ひぃー」


 狭く暗い路地裏で甲高い笑い後が響いた。


 *******************************


「ふふふ……」


 ヒロトとパーティーを結成することになったライミは陽気な足取りで家路を歩いていた。

 これで大好きなスカートを履き続けられるのだ。

 足がスキップを奏でてしまうのも致し方ない。

 

「あら、ライミさん。気分がよさそうですね」


 ライミに声を掛けてきたのはヨリファーさんだ。ギルドでは受付嬢をされていて、受付嬢人気ランキング(非公式)ではNo1に輝いている方だ。

 

「は、はい」


「いえ、少し気にしていたんです。ライミさん、レグルスさんたちに酷いことをされていましたから……大丈夫ですか?」


「あ、はい……ええと、なんとか」


 するとヨリファーさんはほっと胸をなでおろした。


「それは良かった……。ライミさんはかわいらしい男性ですから、こういうことが起きるのではと不安に思っていたのです。どうもレグルスさんは外見で人を判断してしまう節があるようです」


「ははは……ま、まぁ、そうかもしれませんね」


 ヨリファーさんは外見だけでなく、内面もお淑やかな方だ。

 人気No1というのも当然なのかもしれない。


「外見で人を判断していはいけないというのは常識だと思うのですけどね……私は、内見で判断すべきだと思うんです。内見であれば、性格の良しあしなどにより目を向けられますしね」


「内見……?」


 一瞬聞きなれないワードにライミは首を傾げた。

 内見……いや、内面のことだろうか?

 ライミは話を合わせてうなずいた。


「はい、そうですね」


「まぁ……ライミさんも同じ考えでしたか! 安心しました!」


「へ……ええと、はい」


「ありがとうございます! それでは、またギルドで!」


 そう言ってヨリファーさんは手を振って立ち去って行った。

 

「……ええと」


 何か話がかみ合っていたような、かみ合っていなかったような……。

 少しモヤモヤしながらライミは家へ帰った。


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