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奴隷編⑥


 ロージュは剣を正中線に構える。

 すると先頭の兵士が雄叫びをあげて突撃するとロージュ目がけて一目散に剣を振り下ろした。


「ふっ!」


 ロージュは一息ついて剣で受ける。

 ガァンッと金属同士の衝突音が鳴り響き、お互いに剣をぶつけ合いながら、力の押し合いが始まる。


「ウォォォォォォォォォッ!」


 兵士は力一杯込めて、剣を押し出す。

 筋力の差は太白。徐々にロージュが後ろに押され始める。ロージュは踵に力を込めるが、それでも少しづつロージュが後退しはじめた。

 兵士は勝ったとばかりに笑みを浮かべて、より力を込める。


 その瞬間、ロージュの剣が赤い光芒をまとい始めた。

 兵士はギョッと大きく目を開き一瞬気が緩まった。

 その瞬間。


「力だけでは勝てないからこそ、私は魔法で剣を強化できるように努力したのだ。ーー炎の強化エンチャント!」


 そうロージュが叫んだ直後、剣が赤く発光をし始めた。

 そして、剣の周囲からは蒸気が吹き出し始めた。

 紅く熱を持った剣が周囲の水分を蒸気へと変える。

 

「なっ……!?  あ、熱っ!?」


 兵士が驚愕の表情を浮かべ、剣を思わず手放してしまう。

 ロージュの剣の高熱が交差していた相手の剣まで伝わったのだ。

 兵士のグリップがまでも熱を持ち、グリップを握っていた兵士の手のひらまでもが赤くなる。


「あ"っ……」


 ヒリヒリと痛む手を抑えて蹲る兵士。

 それに恐れをなし、後ろにいた兵士たちは無意識に後ずさりを始める。

 ロージュは剣先を後ろの兵士二人に向けると。


「さぁ、次はあなた達の番だ。かかってきたければ、来い。相手をしてやる」


 剣先の熱により再び空気中の水分は水蒸気へと変貌を遂げる。

 周りに高熱の煙を身に纏いながら、爛々と光る赤い剣を構えるロージュ。


 兵士の心を折るには十分だった。


「やってられるか! こんな負け戦! 付属魔法なんて習ってねぇよ! 国の上級騎士に俺ら一般兵が勝てるわけねぇだろ!」


 兵士二人は、涙目になって自分の手のひらに息を吹きかける先頭の兵士を掴むとロージュに背を向けて走り始めた。


「あんた達! なに逃げようとしてんのさ!」


 カミューラは声を荒げるが戦意喪失した兵士達は聞く耳持たず。

 カミューラを一瞥することなく、横を通り過ぎると勢いままにバタバタと物音を立てて階段を駆け降りて姿を消した。


 一人廊下に取り残されたカミューラは目を白黒させる。


「終わりだ。カミューラ殿」


「はっ、この半純血(まがいもん)が。ガルフォード家は正式に奴隷契約して、契約に乗っ取って使ってただけよ。何も非難される筋合いはないわ」


「ヒロトが血だらけだ。これは昨日今日ついた血痕ではない。奴隷であろうと、傷をつけてはならぬことはご存じだろう? ヒロトはシース家が保護する」


「ふん。馬鹿みたいな戯言。そんなルールを守っているやつなんていないわよ。やっぱり紛い物の言うことなんて理解できないわ」


「……紛い物じゃない! お母様の血は私の誇りだ!」


「汚らしい。こんな汚い小娘が同じ貴族を名乗るだけで虫唾が走るわ。あんたも母親と同じように殺してやろうかしら」


 カミューラは心底気味悪く笑う。

 カミューラの発言にロージュは動きが固まる。


「お母様を殺す……? 何を言ってるのだ。お母様は黒狼に殺されたのだ。そうお父様に聞いた」


「はっ! どこまでもおめでたい娘ね! 違うわ、私たちが駆逐したあげたのよ、害虫をね!」


「な、なにを……言って]


 ロージュは動揺から言葉に詰まる。


「あははは! どうとでも工作出来るのよ、貴族の力があればね」


「う、嘘だ。そんなわけない。殺されたのではない、事故だって」


 ロージュの顔が青白くなっていく。

 現実を受け入れられないのかふらふらと後ずさりをする。


「いい顔ね! 事故と思うならそう思えばいいわ! どうせ、証拠なんてないしね」


「……仮に。仮にだ。仮にそうだとして、なぜお母さんを殺すのだ」


「害虫駆除に理由があるとしたら、目障り以外にあるかしら?」


「……」


 ロージュは声も出ずに、立ち尽くす。

 その光景に再びカミューラの頬骨が吊り上がる。


「馬鹿みたいな顔! 脳みそが足りていない証拠ね! はははは!!」


 高らかに笑うカミューラ。

 その甲高い声は一人の男が遮った。


「カミューラ殿。妻と娘への暴言、流石に看過できませんよ」


 ロージュの父、アクシスが現れたのだ。

 驚くカミューラ。

 アクシスはロージュの震える肩に手を置き、口を開いた。


「すまないね、ロージュ。来るのが遅れた。ガルフォード家の騒動が耳に届いてね。それで、カミューラ殿。妻を殺したと言うのは本当ですかね?」


 突然現れたアクシスに一瞬カミューラは驚いたが、すぐに得意げな表情を浮かべる。


「ふん、本当かも……ね。けれど証拠なんてないわ。結局あなた達は私に振り回されるしかないの」


 勝ち誇った笑みを浮かべ続けるカミューラ。

 アクシスは一考した上で口を開いた。


「とにかく、奴隷たちはこちらで保護します。奴隷保護法に反している可能性が高い。国の審議にかけられることもあるでしょう」


「ばっかみたい。奴隷保護法なんて、ただの建前のためのルール。そこを逆手に取ったところで立場が悪くなるのはあなた達自身よ? 逆にあんた達は不法侵入と私の息子を傷つけた罪で投獄したあげるわ。ふふふ、あなた達に反撃の機会なんてあるわけーー」


「あっ」


 ヒロトはふと懐にある紙の存在を思い出して、取り出した。


「アクシス、さん。これを……」


 そう言ってヒロトはアクシスに暗殺依頼書を渡した。

 アクシスがその紙に目を通した瞬間、アクシスの眉はひそめる。


「その紙は何……?」


 カミューラは怪訝な顔をする。

 アクシスは一通り目を倒すと、大きく目を丸くした。

 そして、紙を持つ手が震えながら少し息を吐いて早る鼓動を整える。

 そして、カミューラに向けて言った。


「カミューラ殿。……ダビデ殿はいつ頃戻られるのかな? 少し話がしたい。ロージュ、ヒロト君。悪いが少し待っててくれないか。すぐに終わらせる」


 アクシスはどこか激情を抑えられない表情で言った。

 ロージュは頷く。


「……ヒロト、一旦屋敷を出ないか?」


 ヒロトは何とも言えない表情を浮かべながらも、1番のことを口にした。


「ロージュ。もう1人奴隷がいるんだ。そいつも助けたい」


「分かった。どこにいるのだ?」


「この部屋にいる」


 ギリギリと奥歯を噛み締めるカミューラと、澄ました顔で立つアクシス。

 その2人を横目にヒロトとロージュはグリニートの部屋の中に入った。


大体3000字は変えたいのだけど、無理やりすると変になる&テンポが悪くなるのでここでクギルー

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