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過去編-まだまだ知識不足だな

ワイナリーから帰ってきた私は、師匠に「土臭い」と言われ、早々に風呂に入れられる。

問答無用でドライヤーを奪われ、私は大人しく髪を乾かされていた。


「さて、地主名義のワイン工房で一番大きな所に行ったご感想は?」


「……」


私は無言で応えたーーー見てきた物、聞いてきた事を思い出す。

師匠はサイコメトラーであり、思考や残留思念を読み取る。そして頭に近い位置に触れるほど、表面意識にあるものほど、鮮明に読む事ができるのだ。

師匠はニッと笑う。


「なるほどね」


そしていつの間にか、私の髪は編み込まれていたのだった。



 私と師匠は地主の屋敷に再度訪れていた。

今回も追い払われるのでは?と心配するが、師匠は「昨日、私が遊んでいたとでも?」と得意げに言う。そして


「ワイナリーの立入検査だ。正式な書類もある」


と、紙を突きつけた。狼狽る使用人達の後ろから、流石に当主が出て来る。


巫山戯(ふざけ)るな!誰が許すかっ!」


「馬鹿は黙ってろーーー酸化防止剤無添加なんてうたってる癖に、それ以上にろくでもないモンが入ってるだろうがっ!!」


師匠はそう怒鳴ると、ビシッと当主に指をさした。正確にはその頭部を。


「ついでに毛髪も提出して貰うからなっ!」


何故に髪の毛?と私は首を傾げた。師匠は「決定的な証拠だよ」と、意味不明な事を言う。


「まだまだ知識不足だな」


師匠の言葉に私はムッとする。その瞬間ーーー


「貴様ら、何様のつもりだあぁぁ!!」


と、逆ギレた当主が剣を振り上げた。そして私目掛けて切り掛かってくる。あまりにも咄嗟のことで反応が遅れた。

斬られるーーーそう目を瞑った時、襟首を掴まれ後ろに引っ張られた。そのままの勢いで地面に尻餅をつく。


何が起こったのか分からなかった私は、目を開けると、師匠が拳を振り下げている姿が目に入った。そして当主が呻き声を上げながら地面に倒れている。

おそらく師匠が私を後ろに下がらせ、当主の手ーーー剣を握る拳を殴ったのだろう。


ちなみに当主は剣を放していない。あの拳を喰らっても尚、武器を放さないとは見上げた根性である。私は少しだけ賛辞を送る。


師匠は当主に近付くと「危ないから」と言って、勢いをつけて剣を握る手を踏み付けた。手から離れた剣を蹴り飛ばし、遠くに屠る。


「さて、後は報告を待つだけだな」


そう師匠は宣ったのだった。

次回、解説回です。

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