裏-私なのだけれど
随分長い、と言うか説明文ばかりになってしまい申し訳ございませんm(_ _)m
ファータが滅ぼされる以前、氷雪の国はファータと友好的な関係にあった。
氷雪の国は選民意識が高いーーー逆に言うと、特別な存在には敬意を払う。故に『上位存在に守られた一族』としてファータ王家には友好的であった。
が、そのファータを滅ぼしたパンタシアは、別に特別な存在ではない。ただ人数と暴力で運良くファータを滅ぼした、凡人が集まっただけの国だと軽視している節もある。
そこでパンタシアの上層部は、ファータ王家を殺さずに取り込む事にしたのだ。
そしてその政策により、パンタシアは数年前に見事、氷雪の国との貿易が許可された。ーーーのに、今回の密輸によって、振り出しに戻ってしまったのだった。
「元々、上手く行くはずがなかったのだもの」
パンタシアが烹鮮で貿易を始めた途端、氷雪の国でパンタシアのやり方に批判的な貴族達によって首都を烹鮮から流氷の移した。この時点で、パンタシアは秘密裏に繋がっていたアルカナと縁を切るべきだったのだ。しかし人身売買と言う旨味を知った後に、それを手放す事は難しい。
「それに……氷雪の貴族達がパンタシアを受け入れるまで、密輸などに手を出すべきではなかったのに」
関係を構築する前に不誠実な事を行えば、当然、世界会議への参加は遠のく。
烹鮮が首都・流氷より発言力を持たない様にする為、表向き『乱獲防止、生物環境の保全』と言って、氷雪の国は烹鮮に『年間の捕獲量』を厳しくした。そして財政が低下した烹鮮に、パンタシアは近づいたのである。
「まぁ、密輸を助言したのは私なのだけれど」
私はほくそ笑んだ。
幼い頃から知力が頭一つ分出ていた私は、現在パンタシアの統治者の愛妾である。既に妻がいる現統治者は手元に置く姫を選ぶ際、自国愛が薄い者、また血筋だけでなく国益になる者と言う条件を出した。そして選ばれたのが私である。
そして密輸の件を、私は閨で提案したのだ。
余談だが、私が初めて閨を行った時には、既に氷雪の首都は流氷に移っている。
「思ったより、すぐにバレたわね……」
氷雪の国に優秀な調査員でもいたのかもしれない。アルカナとの人身売買はまだ発覚していない様だから、私よりは劣るみたいだけれど。
「自分の価値を高めないと、ですって」
先程のアレン副長の言葉を、私は鼻で笑った。確かに愛国心はないかもしれない。けれど、私の中にだって良心はあるのだ。
「パンタシアの思い通りになんて、させないわ」
これは己に課した義務なのだから。
時系列を簡単に説明すると
大災害発生→ ファータをパンタシアが滅ぼす→ パンタシアとアルカナ間で秘密裏に人身売買の契約が締結&パンタシア上層部がファータ王家を取り込む→ 数年後→ 氷雪の国が"一応"パンタシアの入港を許可、同時に反対派の貴族により首都を流氷に移動→ 首都でなくなり、烹鮮の財政が悪化→ "私"が愛妾となる→ 烹鮮でナマコの密漁&パンタシアへ密輸開始→ 烹鮮の財政が良くなった事に疑問を感じたアルカナ職員(ミネルバ派)がナギ達に連絡
補足説明
「アルカナとの人身売買はまだ発覚していない様だから、私よりは劣るみたいだけれど。」
→ ナギ達ミネルバ派は寧ろバレてしまうのが困るので、氷雪の国に言っていないだけです。




