★宣誓は、間違っていない。
ナギがカウントしようとした瞬間、場内放送が流れた。
「火の国の騎士団が場内に突撃!!各自、緊急避難を!繰り返す…」
その内容に、ナギの笑みはさらに深まり、逆に風見は悪態をついた。後ろにいる部下達も騒めき出す。そして
「5」
ナギがそう言うと、一番後ろにいた奴が後ろに駆け出した。それが引き金となり、次々に逃げ出す風見の部下たち。
「4、3、2、」
一人残った風見は、キッとナギを睨む。
「1」
と言って、ナギは腕を大きく振りかぶった。風見はまだ逃げない。そして
「0」
と手を広げた。ナギの手から何か塊が飛び出したのを、風見は目の端で捉える。が、ほぼ同時にナギが向かってきたので、ちゃんとは見れなかった。しかし
「焼きが回ったんじゃない?」
風見は逃げずに、銃を構えた。ナギは驚愕し、動きを止める。
本来なら場内は火気厳禁だ。しかしこの場は問題ない事を、風見は知っていた。
「ここはアルミニウムの原料であるボーキサイトと、水酸化ナトリウム溶液を反応させる場所。さっきの様な、大量のアルミ粉末がある様な場所じゃない」
ちなみに下にある貯水槽は、水酸化ナトリウムを溶かす前の純粋な水である。
「それに」
風見は強調するように、いったん言葉を切った。
その意図を、ナギは理解している。騙されてはくれなかったか、と舌打ちをした。
ポチャンッ
と、下の貯水槽から可愛らしい音がした。風見はニッコリと笑い、言葉を続ける。
「アルミニウムは水に触れると爆発する。けどあんたが投げたのは、丸めたただのアルミホイル。逃げる必要は無いわ」
そう、ナギはおにぎりを包んでいたアルミホイルを投げたのだ。アルミホイルもアルミニウムで出来ている。
「嘘つきね、ナギ」
「宣誓は、間違っていない」
詭弁よと鼻で笑う風見に、ナギは冷や汗をかきながらも口端を上げた。
解説回まで予約完了