真相-随分と暴れた様だな
小生意気な笑みを浮かべるナギを前に、鵠沼は溜息をついた。総帥に呼び出された理由は分かっているだろう。
そして自分がどう判断を下すかも。
「……随分と暴れた様だな」
「暴れただなんて!私はただ、密漁事件を解決しただけだよ」
あとは新鮮な魚介類を堪能しただけだ、と付け加えた。鵠沼は額を押さえる。
「ーーー分かっていると思うが、人材供給源が断たれた」
「あぁ、やっぱり」
「……」
「人材供給源ねぇ」と言うナギに「こいつ、どうしよう…」と困り顔をする鵠沼。ナギは底意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「それって私のせいか?上手くやらなかったアルカナ派の連中の責任だろう?」
「……」
アルカナ派は支部が流氷に移動する前から、烹鮮と繋がりがあった筈である。それを活かせなかった連中が悪い。
ナギの言葉に押し黙る鵠沼。ナギは知っているのだ。だからこそ、こんなふざけた態度を取っている。組織のトップとして、色々と言わなければならない事がある。鵠沼は咳払いをした。
「お前も幹部の一人なら、関係ないでは済まないと分かれ」
「ならこの際、徹底的にアルカナ派の排除ーー人工能力者の研究を廃止するか」
それは出来ない事を知っているだろうに、ナギは「それなら手を貸すけど?」と挑発的な眼差しを向けて来る。
鵠沼は眉間に皺を寄せた。
「なら、社員が殺された事は?」
「……口封じにか?」
鵠沼は頷いた。
「以前から、パンタシアは我々に人体実験の被験体を運んでいた」
そう、皆んな『密輸品の出荷』にばかり気が入ってるが、目を向けるべき事柄はもう一つある。それは密輸品を詰め込む前、パンタシアから氷雪に来た時の荷物だ。先程、人材供給源と言ったが、それは本当に「人」と言う「資材」として扱っていた。
ーーー密輸の為だけに、空のコンテナを運ぶだなんて非効率的な事をパンタシアがする筈がない。
「時間軸で考えるなら、こうだな」
そう言って、ナギは箇条書きに上げていく。
1.パンタシアが烹鮮に人体実験用の人間を運んでくる。
2.運んできた人間をアルカナに売る。
3.帰りの船に、密輸品を積み込む。
つまりパンタシアは、アルカナと烹鮮の役場、それぞれと売買契約を結んでいたと言う事だ。ちなみにパンタシアが連れてきた人間は、殆どが子供や幼児である。
ナギは吐き捨てる様に言った。
「アルカナの需要が幼児や子供って事もあるが、パンタシア側としても都合が良かったんだろうな」
パンタシアは自然災害で弱った国々を吸収して出来た国である。一番初めに行わなければならないのが、統治と復興。
復興作業に欲しいのは、手の掛かる子供ではなく、即戦力となる大人の人員だ。寧ろ子供の世話をしなくてはならないと、余計に人手が取られる。ーーそれなら寧ろ、いない方がいい。
「あとは牽制だな。レジスタンスの子供を奪って他国に売る。外貨は手に入るし、レジスタンスに"歯向かったら子供を売るぞ"と脅しになる」
出生率やら人口ピラミッドやらは、国が安定してからでいい。そんな政治を行っているのが、パンタシアである。




