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過去編-だって生って怖いじゃん!

何故、俺はこいつといるのだろう。

目の前には活気溢れた港町。隣には


「流石は旬!こんな美味しい秋刀魚は初めて」


七輪で焼かれた秋刀魚を幸せそうに突いているナギ。俺は「相変わらず食欲旺盛だな」と溜息をついた。

ナギは行儀悪く、箸の先でこちらを指す。


「そんな事言うと、日向の分も食べるぞ!」


「早く事を片付けてくれるのなら、いくらでも」


そう言って、俺は箸を伸ばした。

何故なら、流石のナギでも今回ばかりは簡単に解決出来ると思わないからだ。それを自覚しているのか、ナギも憎々しげにこちらを見るだけで何も言わない。

俺はふっくらとしたその身を箸で裂き、ゆっくりと咀嚼した。ーーうむ、美味い。

ポン酢持参のナギ程ではないが、俺もなんだかんだ獲れたての魚が食える事を期待していた。


「戻り鰹は流石に食べれないよなぁ…」


とナギは呟いたが、聞かなかった事にした。

 何故、俺がこんな所でナギと一緒に行動しているかと言うと、今回の任務に何故かナギが手を上げたからだ。理由は『面白そうだから』である。ーー勿論、風見とルカが猛反対したのはいわずもがな。

しかし二人とも別任務が入っていたと言う事もあり、色々押し切ったのだった。


「日向は氷雪の支部出身だもんな」


「あぁ、支部は今、氷雪の首都・流氷に移設したけどな」


氷雪支部は、かつてこの港町・烹鮮(ほうせん)にあり、俺はそこで育てられていた。故に最初は俺と風見での調査の筈だったのだ。

そう言えば、昔もたまに港に来ては、獲れたての魚を食べさせてもらったっけ。


「いいよなぁ。私なんて風見と同じ火炎の国だよ」


しかも内陸部にいたから、生魚なんて全然食べなかった、と秋刀魚の骨を取るのに苦戦しながらナギは言う。「ピンセットでも持ってくれば良かった」と呟いた気がするが、聞かなかった事にしよう。その代わり、


「今食べてるのも、生じゃないけどな」


と言う俺の言葉に「だって生って怖いじゃん!」とナギは言い返した。


 事の発端は、烹鮮の金回りがおかしいと支部からの連絡である。


「まぁ、確かに良くなってるよな」


何か発明した訳でも、発見した訳でもなく、輸出量も例年通りである。

支部が移動してからかなり時間が経っているとは言え、目に見えて分かるくらいに活気が溢れているのだ。

腹を満たした後、俺はナギと共に街の中を巡回する。


「やっぱり、報告通りなのかもな」


そう呟くと、ナギは「問題は流通ルートだな」と、イカ焼きに齧り付きながら答える。


ーーお前はまだ食べるのかよ。


呆れつつも、双眼鏡で港を見回す。

現在は俺たちは街を一望しようと、展望台にいた。この街は海の玄関口である。火炎や疾風、大地の国以外のーー他大陸からの国はまず、氷雪の国から入国する決まりとなっているのだ。

幾つか見覚えのある国旗をはためかせて、船舶が停泊している。


「あれ?」


「どうかした?」


俺の声に反応したナギは、イカ焼きを完食すると俺が覗いていた双眼鏡を奪い取った。いや、正しくは俺に体当たりをして、俺を退けたのだけれど。

俺が何処を見ていたのか分かったのか、ナギも少し驚いた声を上げた。


「パンタシアだ。氷雪の国とパンタシアって交流があったのか」


黄色い地に赤で二頭のドラゴンが描かれた国旗。

パンタシアは他大陸で現在、勢い良く国土を広げている国である。およそ20年くらい前は小国ーーそれこそ、人口はアルカナより少なかったーーだったのだが、ある年に大災害が起き、大打撃を受けた隣国・ファータを好機とばかりに攻め滅ぼた。それから勢い付き、今では大国となっている。


「あの国は今、内戦が激化してるって聞いたな」


俺はニュースで見た内容を思い出そうとしたが、何となくしか思い出せなかった。その事が伝わったのか、ナギは軽く呆れた表情を浮かべる。


「元は小国の集まりだ。食文化や生活習慣は似ていても、価値観や宗教観と言ったものは異なる。短期間であそこまで大きくなったんだ。国内で反発が生じてもおかしくはない」


ナギは俺への呆れと言うより、悲しそうな表情を浮かべた。しかし俺は特に気にせず「パンタシアとは関わりたくねーなぁ」と呑気に呟いたのだった。


ーーこれがナギの過去に関係するとは、全く気付かずに。

今回は日向目線からのスタートです。

解説は29日に公開予定

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