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小噺②-過去編ver

 それは四人でパフェを食べに行った時の事である。三人のーーと言うより、ナギの昔の話が聞きたくて、ルカは率直に聞いた。


「アルカナでの幼少期ってどんな事してたんだ?」


ルカの問いに、ナギが「普通に勉強したり、遊んでいたかな」と答えた。


「そう言えば、教育カリキュラムの中に同年代が集まって、みんなで課題に取り組むって言うのがあったな」


各支部にいる同世代達が、年に数回本部に集まる。そして座学とは別に、グループワークみたいな事をやらされたのだ。ちなみに、この教育を受けるのは一部であり、全員受けている訳ではない。


「その時に風見、日向とつるむ様になったんだよね」


当時、ナギと風見は同じ本部内にいたが、普段は全く交流がなかった。風見は「そうね」と頷く。


「だいたい半年に一回くらいの頻度で会っていたかしら」


半年に一回となると、お盆と正月に帰省する一人暮らしと同じだな。と、ルカはひっそり思った。

日向は最後の一つの白玉を食べながら、かつての事を思い出す。


「チームで競わせられたよなぁ。クジでその時に組むメンバーが決まるんだけど、ナギと風見が同じチームにいると必ず勝てたし、楽だった」


「ちなみに、どんな事やらされたんだ?」


ルカの問いに、三人とも思い出そうとする。そして日向が「たしか……」と話し出した。


「俺達三人でやった時は……三人1組にされて、白か黒の帽子を被せられたな。この時、自分の帽子の色は見えないが、他の二人の帽子は見れるから、自分の帽子の色を当てろって」


日向の言葉に、風見が頷く。


「もう少し詳しく言うと、

1.パスする

2.自分は白い帽子を被っている

3.自分は黒い帽子を被っている

の中から回答しろって言われたわね。あと、全員がパスと言う事は出来なかったはず」


つまり、少なくとも1人は必ず色を宣言すること。また、宣言した者全員が正解じゃなきゃいけないって事か。

俺は頭を捻った。よくある「四人の囚人問題」とは違う様だ。

風見は飾りのチョコレートを食べた。ポキポキっと板を割る様な音がする。


「これをチーム戦でやったから、たしか…九回やって、『回答ミスがなかった回の、回数』が多いチームが勝ちって事だった筈よ」


つまり正解者の人数ではなく、各回で不正解者がいない場合で一カウント。最高正解数が9って事か。

俺は中層の梨のシャーベットまで辿り着きながら、計算する。


「もし全員てきとうに回答したら、勝率としては1/8だよな」


「そうそう、だから殆どのチームは宣言する担当を決めてたな」


そうすると「白または黒」の2択になる為、勝率は1/2になり1/8より高くなる。だが、それだとその課題をやる意味がない気がする。ーー勝率が五分五分と言う運任せのような事を、アルカナの教育部がやらせるだろうか?

俺は「うーん…」と考えていると、二人ーー風見と日向が意地の悪そうな笑みを浮かべていた。その様子から、やはり別の方法があるのだと確信する。


俺はチラッと、発言していない人物を見た。

ナギはパフェを堪能しているのか、此方を見ない。ーーが、視線に気付いたのか、横目で俺と目が合った。


その目が「分かるでしょう?」と言っている様だった。少なくとも風見達とは違い、「分からないだろう?お前も引っかかるよな?」と底意地の悪い様な事は言っていない。


「分からないの?」と「分からないだろ?」と言われるの、どちらが腹立たしいか。

言ってくる相手による所が大きいと思うが、取り敢えず今は、優越感に浸っている風見と日向(ふたり)にギャフンと言わせたいと思った。

ので、


「そうだな、俺なら3/4にまで勝率をあげられるけど」


と言ってやった。その言葉に、風見達は浮かべていた笑みを凍り付かせ、ナギはニヤリと笑ったのだった。



 パフェを完食後、店内がそう混んでいないと言う事もあり、少しだけまったりとした時間を過ごす。

ナギは「よく分かったな」と笑った。


俺は褒められて嬉しいと思う反面、答えられて当然とばかりに言ってきたのはお前だろ、と少しだけ恨めしく思う。


「"他の二人の帽子の色が同じだった場合のみ、それと逆の色を回答する"。それが一番確率が高い筈だ」


俺の解説にナギは小さく拍手し、風見達はバツの悪そうな顔をした。ナギは解説と言わんばかりに、具体的な組み合わせを話す。


「帽子の組み合わせは白白白、白白黒、白黒黒、白黒白、黒黒黒、黒黒白、黒白白、黒白黒の8通り。

"他の二人の帽子の色が同じだった場合のみ、それと逆の色を回答する"としたら、白白白と黒黒黒以外の場合は必ず正解出来る」


例えば白白黒の場合、白い帽子を被っている風見と日向をナギが見たら、"他の二人の帽子の色が同じだった場合のみ、それと逆の色を回答する"為


ナギ(わたし)は黒い帽子を被っている」


と回答出来る。そして風見と日向(残りの二人)


「日向とナギは別々の色を被っている為」

「風見とナギは別々の色を被っている為」

パスをする。


ルールで決まっているのは、必ず一人は回答する事、そしてその回答が正解である事。この二つをちゃんとクリアしている。


ただし全員同じ色の帽子だった場合、つまり白白白または黒黒黒だと不正解となる為、勝率は6/8=3/4となるのだ。


「まぁ、勝率3/4を九回もやれば1/2に賭けた(ほかの)チームに強運な奴がいなければ、大抵は勝てるよ」


と言うか、勝ったし。そうナギは付け加えたのだった。

次は本編に戻ります。

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