過去編-私はいいんだよ。
2日後、父さんの遺体が発見された。
俺は遺灰の入った壺を持って、家があった場所に来ていた。
現在、この山林は立ち入り禁止になっている。まだ土砂崩れが起こる可能性があるからだ。しかしそんな事気に止めずに、俺はいた。
「本当に、一人になったんだな…」
涙は未だに流れない。
「俺って、薄情だったんだなぁ」
「そんな事はない」
呟くと、不意に後ろから聞き覚えのある声がした。俺は振り向きもせずに言う。
「何故此処にいる?立ち入り禁止の筈だけど」
「私はいいんだよ。だって封鎖命令を出しているのは私なんだから」
確かに、この2日間でこいつが只者じゃない事は分かった。
住むところを失った俺は現在、大地の国にあるアルカナ支部で寝泊りしている。
そこでの周囲のナギへの態度は、畏怖と尊敬が混ざっていた。おそらく、アルカナ内での地位は高い方なのだろう。
「遺灰を此処に埋めるのか」
「……」
感傷に浸る前に、埋めれば良かった。汚れるにも関わらず、膝を地面につけていたのが気になったのだろう。
俺に近づいて来たナギの手には、花束が抱えられていた。
「此処はお前の私有地じゃない。共同墓地に入れろ、とでも?」
「いや…ただ此処も共同墓地と変わらないんじゃないかと思っただけだ」
どう言う意味だ?と問うと、この山林の毒草や、父さんのやっていた事を話し始めた。
俺は何も知らなかった事に絶句する。
「つまり…父さんは俺が殺したのか?」
「それは断じて違う」
「けどーー!!」
俺の言葉を塞ぐ様に、ナギにギュッと抱き締められた。いい香りがするのは、きっと持っている花の物だ。
「何も悪くないーーよく一人で頑張った」
そう言って、背中を軽く叩かれる。その温もりとリズムに心地良さを感じてーー俺は泣き出した。
「悲しい中、不安の中、弱さを一切出さずによく頑張った」
そう言うナギの声は、とても優しかった。
あと一回で、ルカ編は終わります。




