過去編-寿命を削っていたことか?
ルカの能力「フェアリーリング」は、自身が一度でも行った所にしか繋げられない。
その為、行きでショートカット出来るのは精々近くの町くらいらしい。それでも、戻ってくるのが一瞬なのなら、かなりの時間短縮になる。
私は万が一の為、サルトゥスの側に付いていた。
「……凪か」
「目が覚めたか」
雨の音があまりにも酷すぎて、起きてしまったようだ。サルトゥスに「ルカは?」と問われ、事の次第を話す。
「いつ、ルカの能力を知った?」
「ここに来るまであったトラップ。それに引っ掛かった時に」
あのトラップ植物による捕縛と、別の場所へと飛ばす転移系の魔法が使われていた。
サルトゥスは植物の魔法使いである。転移系の魔法は使えない。なら、別の能力者がいる筈だ。消去法で、ルカの能力だと判断できる。
「…よくこんな生活を続けられたな」
「寿命を削っていたことか?」
サルトゥスは苦笑しながら言った。私は憐みの眼差しを向ける。
「家の隣にあった畑を見たよ。無理矢理魔法で育てたな」
人参やじゃがいもと言った根菜類から、小松菜や枝豆、トマトなどの緑黄色野菜たち。季節も土質も無視した強制的な自給自足。
「十何年も続けられたな事が、ある意味奇跡だよ」
魔法で育て、そして食べる。魔力の循環ともなっているが、そんなの見掛け倒しだ。どう考えても、食べて得られる魔力量より、育てる為に使用した魔力の方が多い。
「そんな生活を続ければ、当然体に限界が訪れる。ここに来るまでに散々ある花が咲いていたし、ルカ君が採ってきた山菜には、毒草が混じっていた」
夕食の準備のやり取りを思い出す。ヤマイモと思っていたグロリオサや、クワズイモ、イヌサフラン。
それらを今までも間違えて食していたとは思えない。少なくとも一度痛い目に遭えば、二度と山菜など採らなくなるだろうから。つまり、
「最近になって毒草が生えてきた」
いや、違う。
「貴方の力が弱まって、再び生えてきたんだ」
サルトゥスが住むのにこの土地を選んだ理由は、人が来ないから。そして、人がどうして来ないかと言うとーー麓付近には、彼岸花が咲き誇っていた。
「昔、毒草ばかり植えたんだろうな。土葬する場所として」
今はどの国も火葬が主流だが、かつて大地の国は土葬を行なっていた。そして疫病対策にーー埋めた死体を獣が掘り返して、食べたり、そのまま地上に死体が露出して腐敗すると疫病の原因となる場合があるーー為に、近くに毒草を植えたのだ。
「彼岸花やそこに飾られているスズランはその代表。根に毒性がある。山の麓や、此処に入る入り口付近にまで咲いていた」
サルトゥスが死ねば、ここの植生は昔の様になるのだろう。そうなったらーー




