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過去編-あれは君だったのか

 事件は夕食後に起きた。

ルカがサルトゥスの様子を見に行った時だ。


「父さんっ!!」


外が嵐にも関わらず、離れた居間にまで聞こえるくらいの大声でルカが叫んだ。私と風見は顔を見合わせ、パッと駆け出す。

部屋に飛び込む様に入ると、サルトゥスが苦しそうに悶えていた。


「すぐに病院へ!」


「無理だ、嵐の中にこんな状態で連れ出せない」


風見の言葉に、私は苦々しく返した。ルカとは反対側にベッドに回り、サルトゥスの呼吸や顔色を窺う。

額には大粒の脂汗が大量にかいていた。


「医療は専門外なんだが」


そう言って、私はある粉薬を取り出した。無理矢理口を開かせ、水と共に流し込む。

咽せて出そうとするのを、無理矢理抑えた。一種の拷問に近いかもしれないが、事は急を要する。

大きく息を吸い、何度か繰り返している内に呼吸が正常になっていった。


「風見、今のうちに医者を呼んできて」


「……間に合うの?」


風見の問いに私は無言になる。十中八九、間に合わない。

風見の脚でも、戻って来れるのは少なくとも朝方になるだろう。更にこの天候である。他に問題が起きないとは限らない。


「……俺が行く」


その時、今まで無言だったルカが呟いた。意を決した眼差しを私に向ける。


「俺の能力なら、距離を短縮出来る」


あぁ、やっぱり。


「あれは君だったのか」


あれと言うのは、他ならない昼間の罠の事だ。

私の言葉に、ルカは怪訝そうな表情を浮かべた。しかし今は、ルカの疑問に答えてやる時間が惜しい。私は無視して風見に向き直った。


「風見、ルカ君と大地の国にあるアルカナ支部へ行って。あそこが此処からだと一番近いし、アルカナお抱えの医者なら、私の名を出せばすぐに対応してくれる」


「分かったわ」


そう言うと、私はサルトゥスに目を向けた。


ーーーお前はこうなると、分かっていたのか?

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