過去編-私が病人相手に遅れを取ると?
「父の様子を見てくる。待ってろ」
そう言い残すと、ルカは家に入っていった。私と風見は外でしばらく待機する。
「ナギ、勝手に動き回らないの」
「大丈夫、大丈夫。ちょっと見てくるだけだから」
そう言って、私は裏手を覗いた。奥行きからして、二人暮らしなら十分な大きさのログハウスだ。自給自足しているのか、隣には小さな畑がある。
種類はトマト、ほうれん草、枝豆などなど。あと花も植えられている。
「やっぱりか……」
予想通りの状態なんだろう。ルカは先程、サルトゥスの様子を見てくると言った。
つまり、何かを患っているのだ。そしてそれはもう手遅れの状態。
「おい、何してる」
いつの間にか、ルカが横に立っていた。無遠慮に奥を覗く私に、怪訝な表情を浮かべる。
「…家庭菜園に興味があって」
どう考えても嘘だとバレるが、私はそう答えといた。
会うのは私一人だけ、と言う事に異議を唱えたのは風見だった。
「私はあんたの護衛として来たのよ!何かあったらどうするのよ!!」
「私が病人相手に遅れを取ると?」
言い合いをしている私達に、ルカは更なる爆弾を投下した。
「俺は同席する」
「「それはない!!」」
今度はルカに風見は詰め寄る。
「2対1の状態なんて、論外だわ!」
「ならお前も入ればいい」
「病室に全員はちょっと…」
私は溜息をついた。
「部屋には私だけ入る。風見と君は此処で待っていてくれ。
私はたたサルトゥスと話がしたいだけで、危害を加える事はしない。」
ハッとする二人。そう、私には宣言があるのだ。私は構わず、言葉を続けた。
「それにさっきも言ったが、病人相手に遅れを取りはしない。だから二人はお互いを見張りあってくれ。そうすれば、問題はないだろう?」
「「……」」
押し黙る風見とルカ。
それを肯定とみなした私は、サルトゥスの部屋の扉をノックした。




