過去編-お世界柄ってなんだよ!?
ルカは目を向けないよう、二人の訪問者ーーナギとカザミを窺った。
二人は緊張感の欠片もなく…いや、カザミはそれとなく警戒している。
まったく、全然、気にしていないのが、自分に撃たれかけたナギの方だ。物珍しそうに辺りを見回している。警戒とは違う。寧ろ探索したそうな雰囲気を出していた。
「今度は勝手に離れないでね」
「大丈夫」
お前らは恋人同士かっ!と言う突っ込みを内心で入れる。我慢出来なくて、俺はつい背後を見やってしまった。
ナギと目が合う。
「……お前らは姉妹なのか?」
「違ーー」
「違うわ。そしてあんたが知る必要もない」
口を開きかけたナギよりも先に、カザミが答えた。ナギをどんな相手からも守る。そう言わんばかりの態度に「別に何もしねーよ」と俺は再び視線を前方に戻した。
ナギは困った表示を浮かべる。
「風見……まだ怒っているのか?」
「当然でしょ」
「あんなに謝ったのに?」
「誠意が感じられないの」
「スイーツでも奢るから、機嫌を治しておくれ」
ん?なんだ今の会話。カザミが怒っていたのは、俺に対してじゃないのか?情報処理のキャパシティをオーバーしたのか、立ちくらみを起こす。
大丈夫か?と言う声で、ナギが倒れかけた俺を支えたのが分かった。カザミはおそらく口を尖らしているだろうと、今までのやり取りだけで容易に想像がつく。
「お前らって、どう言う関係なんだ…?名前もへーーー珍しいし」
ナギもカザミも愛称でもないし。俺の発言に二人は顔を見合わせた。ナギはどう説明するか悩む。
「私達は姉妹どころか血の繋がりもないよ。そして名前については、お国柄と言うかお世界柄とでも言うべきか…」
「お世界柄ってなんだよ!?」
突っ込み俺に、カザミは「それよりさっき、変て言ったでしょ」と睨んできた。
「お世界柄……そうね、私の郷里だと『ルカ』なんて女の子の名前だし」
「あー、らしいな。『ルナ』ならこっちでも女の子の名前に使われるけど」
ルカは本名じゃない!本名を簡単に名乗らないのは常識だろ!とつい叫ぼうとする。しかしどうにか思い止まった。
「…着いたぞ」
そうこうしている間に、目的地である家に着いたのだった。




