真相:雨降って地固まる、だな
風見に「アルカナが土の国に嗾けた」と言った事情、つまり真相はこうだ。
土の国はアルカナの顧客だった。しかし国政が上手くいかず、常に自転車操業状態。
そこにアルカナは目をつけ、リヒトシュタールの事を教えたのだ。
ーーー風の国はまだ気が付いていない。風の国を属国と出来なくても、あの鉱山さえ手に入れれば。
風の国も国土を侵された事に憤怒はするが、取られたのが既に価値のない鉱山なら諦める筈。
「土の国は借金を返済出来るし、アルカナは簡単にリヒトシュタールが手に入る」
コソコソ密輸などせずに、正当に、そしてタダ同然にレアメタルが手に入るのだ。
さらに採掘場付近に加工工場でも作れば、より生産性は上がし、わざわざ偽装の為に買い取っていた硫黄も必要ない。それだけでも十分なコストカットになる。
「実行に移したのは土の国だ。アルカナに責任はない」
「ただし過激派を抑えられず、我々に連絡をとってきた自覚はあるんだろう?」
フルメンが鵠沼に突っ込む。そうだ!そうだ!と私は抗議を続けた。
鵠沼は現アルカナのトップである。コイツは過激派が行った事を放置ーー黙認していたのだ。
だが、このままだと不都合が生じると判断し、私に丸投げしたのである。しかも当の本人である私には何も相談せずに。
ここは是非とも、恩を着せるチャンスである。しかし
「これでそちらも風の国と同盟を結べたじゃないか」
鵠沼の言葉にうっ、と詰まる。
風の国はアルカナと繋がっていた。故に同盟は締結出来なかっただろう。もし結べたとしても、それは表向き。
おそらく情報漏洩は免れなかったはずだ。
今回の事で風の国はアルカナと完全に縁が切れた。故に同盟に至ったのだ。
「雨降って地固まる、だな」
日向が口笛を吹きそうな顔で、のたまったのだった。
後日、私はアルカナ本部にいた。総帥室の椅子には鵠沼が座っている。
私は部屋に置かれたソファに、脚を組んで座っていた。出された紅茶には手を出さない。
「で、どうだったのだ?」
先に口火を切ったのは、鵠沼だった。私はどうもこうも、と首を竦める。
「やっぱり、土の国との同盟は諦めるよ。過激派の影響が予想以上だ」
ここ数日、私は土の国とのやり取りを行いっていた。その感想を率直に述べる。
特に、一部の連中が「アルカナを潰して借金をチャラに…」と言う不届きな事を考えていた。土の国の奴等に、いいように使われるつもりはない。
「それと、風見はやっぱり覚えてないみたい」
「……そうか」
あれから三年が経つ。思い出すかもしれないと、ちょっかいを出していたが、もう無駄だろう。
「魔道具の事も忘れてるんだろうな…」
そう言って、私は愛剣を撫でた。
実はこの剣には、魔法が付与されている。付属効果は、風の魔法。
剣を中心に渦が巻き、威力調整を行えば攻撃・防御のどちらも対応出来る。戦闘向きではない私の為に、ルカと風見がくれた物だ。
まぁ、風の強さとか調節が下手過ぎて、あまり使っていないのだが。
「……取り敢えず、私は帰るよ」
半年ぶりの我が家へ。
第一部、これにて完結です。
ようやくナギが元の世界へ戻ります。
しかし残念ながら、次は過去編となります…。
そしてその前に、小噺です。
今後もお付き合いいただけたら嬉しいです!
更新頑張ります。




