解説:アルカナの総帥から伝言だ。
「さて、これで土の国も開戦撤廃するだろ」
そう言うと、風見は「馬鹿じゃないの?」と嘲笑った。この場を押さえる程度で、戦争が収まる筈がない。それにーー
「ナギ、あんたが私に勝てるとでも思ってるの?」
組み敷かれていた風見は、魔法を使った。風が下から吹き上がり、私を吹き飛ばす。
「ナギ!!」
ルカは叫んで、私を横抱きでキャッチした。
さも形勢逆転とばかりに、嫌な笑みを浮かべる風見。
やはり実力行使だと風見に軍配が上がるか。私はほぞを噛んだ。
「以前と同様、アルミ粉末で魔法に制限をしようとしたみたいだけど、少量過ぎて無意味だわ」
自分に降りかかったアルミ粉末を、風見は器用に風で取り除いていく。
「風見にリヒトシュタールとか、鬼に金棒でしょ…」
「そうね、あんたが持ってても無意味だしね」
風見はニッコリと作り笑いを浮かべる。
「ルカの魔法を強化した所で、尻尾を巻いて逃げるしか出来ないわよ」
「俺のは、もっと汎用性が高い」
「ルカ……同じ土俵に立つな」
俗に言うお姫様抱っこをされつつ、呆れた表情をルカに向ける。風見はわざとらしく「あらっ」と声を上げた。
「ルカがいるから、まだ強気でいられるのかしら。けど、それは単なる虎の威を借りているだけよ」
その虎も、私にとってはトラ猫だけどね、と高笑いする。
カチンッとくる言葉だが、事実なのだから仕方が無いとルカは堪えた。それにーー
「狐を演じるのなら、ちゃんとした虎を用意するさ」
ナギの宣誓に、風見は固まった。ーー嫌な予感がする。
その予感は的中した。
「流石に土の国を嗾けるのはやり過ぎだと思うぞ。
鵠沼ーーアルカナの総帥から伝言だ。撤退しろってな」
一体どうして、ナギは総帥と繋がっているのか。
きっとそれは自分だけが知らないのだろうーー頭の中で、日向のにやけ顔が浮かぶ。
風見は唇を噛み締めた。
以前とは、水の国での事です。
ナギが同盟任務の為に来て、早々にあった事件です。




